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第4話 依頼を受けよう


掲示板の前に来ました。たくさんの冒険者の方が居たので少し待ちました。


「この掲示板は駆け出し用だ。中級者用のは二階にあるぜ。冒険者足るものダンジョンの攻略だけじゃ成り立たねえ。いいか?町で困っている人の生活を助けるのも冒険者の仕事だ」


水を指すようだが、これをジグルスが考えたとは思い難い。となるとこれはギルドの受け売りと考えるべきか。どうでもいいけどジグルスって覚えが早いよね。


「俺は力っぷしに自信があるからな。ダンジョンで討伐をメインにしつつ力仕事があればその依頼を受ける、こんな感じでリズムを作ると良いぜ」


「僕なりのリズムかあ」


これまで農家の息子って感じで育ってきたし、主に(クワ)を土に向かって振るってたな。たまに麦を織ったりして座蒲団みたいなのを作ってたなあ。そう考えると力よりも指先、小手先の作業に向いてるんだろう。


「ちょっとゴブリンを狩りに行かないか?」


「え?」


ジグルスは突然1枚の紙を剥ぎ取り僕に見せてきた。依頼内容を見ると物を納品してほしいという物らしかった。『ゴブリンの牙×5とゴブリンの皮×5』を納品する仕事だ。


「この量のアイテムを手に入れるなら二階に上がる必要があるよね。報酬も半分になるけど良いの?」


「何を気にしてんだよ。俺達はパーティーだろうが。それに駆け出しへの依頼にしては報酬が高いからな、これを受けなかったら明日の宿代がねえぜ」


「なら受けないとね!詳しく依頼書を見せて!」


ジグルスが見たのは報酬と納品する部分だ。他にも見逃せないところがあるかもしれない。見逃した部分のせいで危険が伴うかもしれない。準備は万全にしなければ。


「ゴブリンの牙・皮×5の納品。報酬が1500マルス。時期は・・・残り一日か。ああなるほどもとの報酬欄に重ねて紙が張ってあるのは期限が近づいても誰も受けないから・・・え?一日?」


報酬額を上乗せしたせいだろう新しい紙が上から貼られていた。


「ジグルス、今何時かな?」


「十四時だな」


これは時間があんまり無いんじゃないかな。

僕は受付の姉ちゃんにギルドの営業時間を聞きに行った。


「営業時間かぁ、抜け目がないわねえ~。二十一時まで開けてるわよ。なるほど、その依頼は依頼人がこの町の嫌われ者でねえ。偏屈ババアで書いてある報酬よりも低く強引に払うってので有名なのよ」


受付の姉ちゃんはこの依頼が中々受注されない理由をしれっと教えてくれた。なるほど、依頼人を見る目を養う必要もあるのか。だが一気にこれだけ稼げる依頼もこれくらいだった。


「これを受けます」


「ローレンスさんの依頼を受けるとは……。おっと失礼しました。こちらのご依頼は納品を目的としてございます。期限は今日のギルドルーム閉館までと厳しい条件ですが本当にお受けしますか?」


「時間がないし、すぐにいきます」

「飯も食ったばかりでやる気が満ちてるぜ」


「分かりました。くれぐれも無茶だけはなさらぬようにしてください。駆け出しのあなた方には依頼失敗《1》というのはこれからの依頼を受ける上で支障が出てしまいます。頑張って下さいね」


「お、おう」


「ういうい、姉ちゃんの笑顔で顔真っ赤だぜ?」


ジグルスの横腹を笑いながら肘で小突いてやる。


「ニコッ」


もう一度受付の姉ちゃんの笑顔を見たジグルスが赤面してギルドを出ていったので、惚れちゃったかな?






「うおおおおおお!」


ダンジョンにたどり着いたのが十五時くらいかな。そこからダンジョンの二階を目指して激走している。そこで一匹のゴブリンを見つけたんだけどジグルスの大剣で軽く葬られた。出番もあっという間なゴブリンに合掌しモンスタードロップで落ちてきた《ゴブリンの牙》を一つ拾った。


農業で培った体力をなめてもらっちゃ困るぜ。なんて思っていたがジグルスの方が体力はあるのは昨日の時点で分かってるから徐々に差が開いてしまう。


「ジグルス!止まれよ!おい!」


「うおおおおおお!邪魔だあああ!」


ゴブリンを続けざまに切り刻む。どうも一階にいるゴブリンは牙をよく落とすらしいこれで三つ目だ。


ダンジョン二階への階段を見つけたところでジグルスは止まった。


「はあ、ようやく止まった」


ジグルスの行く手を阻むように前に立つと軽く睨み付けた。


「すまん。ちょっと気が動転してた」


「もう気は晴れたのか?」


「晴れた・・・のだろう。体の火照りが何なのか分からなくなる位には汗をかいたからな」


「ジグルスって思ったよりも女の人に耐性ないみたいだよね。これまではどうしていたの?」


「なるべく受付は男のところでしていた。そもそも村を追い出されるまで女性なんぞ見たことない」


「それなら仕方ないかも。新人類がまだまだ受け入れられない所だってあるだろうし、ジグルスって訳ありだったんだ」


嫌な意味で言うつもりじゃなかったけど言い方が悪かった。


「ははっ、いまさら後悔でもしたか?」


自嘲気味に笑って言われてしまった。


「ごめんなさい、ちょっと変な言い方になってしまった。ジグルスに出会えて今は良かったと思う。ジグルスもこんな鬱陶しい僕で後悔してるか?」


「・・・いや、今のはストレートに来たぜ」


「はい?」


どういうことだろう。返事になってないような気がするんだけど。


「早く行こうぜー!時間もないんだろ?」


「うん、あとゴブリンの牙が二つ。皮が五つだ。ダンジョン二階に上がると一階よりも少し強くなるから気を引き締めてね」


ジグルスとの間柄が遠くなったような変わってないような。機嫌がよくなっているからこれ以上の追求はやめた。僕もジグルスも気を引き締めて次への階段を上がった。




「ジグルスは二階は初めて?」


「三度目だ。奥まで進んだら《ゴブリンソルジャー》がいる。ソイツと戦うために二回ほどダンジョンに潜ってるな」


武装した緑色の豚鬼(ゴブリンソルジャー)は常に武器を装備しているゴブリンのことで主に剣を使うことで有名だ。常に普通のゴブリン二匹が取り巻きとしている。そうか、二階から現れるのか。


「そっか、じゃあ少しは情報があるね。僕に知ってる限りの情報を教えて。ゴブリンの動きとか、攻撃手段とか」


「おう、まずゴブリンは単調な動きをしてくる。例えるならひたすら真っ直ぐ突っ込んでくるとかな。ゴブリンが動き出そうとせずに留まっていたら遠距離攻撃の可能性がある。胃酸を吐いてくるんだが、それが臭いから全力回避、もしくは全力でさっさと仕留めろ」


「ふむふむ、なるほど」


鞄から取り出したメモ帳にゴブリンの特徴を書き込んでいく。そこからもし戦闘になったときのことを考えてみる。突っ込んできたゴブリンを避けてナイフで切りつける。これを繰り返す。繰り返す。


「なにしてるんだ?」


「ゴブリンと戦うときのイメージトレーニングだよ」


「チャムに戦う出番があればいいな。時間も少ないから片っ端から見つけ次第俺が仕留めるぞ」


「僕は漏らしたのを仕留めるからよろしくね」


よし、探索を開始しよう。






《戦利品》

ゴブリンの牙×3


依頼失敗まで残り四時間


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