第17話
明けましておめでとうございます!
受付を待っている間に僕はシュラ爺の訓練施設を訪れていた。
シュラ爺は風の精霊を信仰していて、それを武術に組み込んだ攻撃を主としている。ただでさえ重たい一撃に後押しするような風が全身を打ち付けてるのだ。
それに対して僕の信仰は未だに未知数で分かっているのは付与術だけだ。武器の攻撃力を強化する力を付与するものだが、身体能力などを強化する術を今は持っていなかったりする。
だからここからは自前の動体視力と勘を頼りにしている。
「岩砕!」
「わー!それ骨が砕けるやつ!ばっか!」
ギリギリのところでそれを避ける。先程まで立っていた足下はひび割れていた。
「気にするでないわ。このご時世…それくらい簡単に治るじゃろうが、身を持って体験したんじゃから知っておろう」
「それでも、嫌だよ!」
「なら…ワシに早う防御させてみろや」
「やってやるさ!」
とは言ったものの、隙なんかあるわけがない。
どうしたものかと悩んでいると、扉を叩く音が聞こえてきたので僕らはそちらを振り返った。
そこには受付の男がたっていた。
「シュラ爺様お戯れもホドホドにしてください。ギルド全体にまで地響きがしましたよ」
「すまんすまん。回避ばかりの小僧に苛立ってしもうたわ」
「それとチャム様もいい加減シュラ爺様に挑むのならば対抗策の一つでも見つけてからにしてください。闇雲に戦えばいつか答えが見つかるなんて三流臭い台詞を吐かないように気を付けてくださいね」
彼は話してみると辛口なようだ。
「すみません」
「次、挑むときは一言くださいね」
彼の笑顔はとても黒かった。
それに逆らう勇気はとてもなかった。
「一応言っておきますけど、私…強いですから」
瞬きをしたらそこに彼は居なかった。
辺りを見渡すと後ろから声が聞こえたのだった。
「ガレオさんから聞いたことありますから、変に逆らったりしませんよ」
早い、速すぎっ…。確かにこれは怖いわぁ、内面はそんなことを考えながら外面は冷静に返事をした。
「久しぶりにワシと一戦交える気はないか?」
「それはまたの機会に、さあチャム様…お食事に行きましょう」
「そ、そうでした!」
あまりの恐怖に声が裏返ってしまった。
「では、行きましょう」
彼についていくように僕は訓練施設を、ギルドを出ていった。