第14話
全く、たった一年で 宗教の町は随分様変わりをしていたようだな。
モンスタートレインをわざと行うなんて、自分達も危険にさらされるというのにそればかり行うということはかなりの自信家か、既に行為自体に悦びを得ているのか。
アホらしい。
僕の恨みはゴブリンソルジャーで完結できなかったようだな。
モンスタートレイン。
これほど忌々しい言葉を、久しぶりに潜ったダンジョンで聞くことになるとは運命を感じてしまうよ。それも、ヴァルハラで行われているなんて、皮肉も良いところだ。僕が瀕死に陥って行方不明になっている間に誰も対策を建てなかったということだろう。
それどころか、ますます過激になっている。
もしも、僕の時と同じパーティーなら・・・。この手で借りを一つ返さなければならないな。
っと、私怨に囚われている場合じゃなかった。走り出した先でようやくリザードマンの最後尾に遭遇することが出来た。
「悪意に祈れ。そして轟け 悪意付与」
ナイフの耐久力がこの業に対して弱すぎるから、なるべく距離を詰めて使わなければならない。
粗暴に投げつけては空気抵抗だけで暴発する恐れがある。だからこそ、投げるときは繊細に。空気を裂くように投擲する。
ボンっと最後尾で爆発を起こすと三体ほどを巻き込んで荒々しい風は終息した。この一撃でリザードマンの注意が僕に向き始めている。これで、モンスタートレインの被害者が少しは落ち着いてくれると良いんだがなぁ。
「悪意に祈れ、そして氏ね 悪意付与」
腰に差している小刀を抜き放った。
小刀に軽い悪意が付与された。
「・・・小刀でリザードマンを倒すだけでもオーバーキルなんだけど、念を入れとこうかな」
そんなことを考えながら、リザードマンの首を一つはねるのだった。
ー???ー
ボン!
「!?」
な、なんなんだ?!
後ろから凄まじい爆音と爆風が突き抜けてきて、思わず私は転びかけてしまった。それはリザードマンも同じらしかった。今の一瞬の隙を狙われていたら私は死んでいた。
リザードマンの注意が私ではなく少しずつ後ろに行っている気配がする。まさか、誰かがリザードマンを後ろから攻撃しているのだろうか。
次第にリザードマンは来た道を戻っていき、私のもとには三匹と減っていた。
落ち着いてきた今の状態なら、これを撒いてダンジョンを脱出できる自信がある。
でも、トレインしてたモンスターを全て相手にするのはかなり辛いはず。大丈夫だろうか。
私は気になって、スキルを発動させた。
「気配察知!」
【スキル】は生まれながらに持っている才能や特殊能力をそういう風に最近呼称するようになったのだ。
「・・・どんどん、リザードマンの反応が消えていってる?」
それが、どんどん近く、というか既に私の後ろにいる!
なんで気付かなかったんだろう。
「おいそこの女!止まれ!リザードマンは全て倒した!」
「・・・は、はい!」
全身を布で隠しているようだが背丈は私より少し高いくらいだろうか。年も近そうだ。あっ、それよりも早く言うべきことがあったんだった。
「助けてくださってありがとうございます!」
まずは、しっかりお礼をしなきゃね。
「それはいい。ところで」
「あの、なんとお礼を言えばいいのか!」
焦って話しているところを遮って私が話をし出してしまった。
どうしようかとオロオロとしていると、男は布のマスク越しに笑ったように見えた。
どうしよう、颯爽と助けてくれたからかな、格好良く見えるよ。
「助けてやったのだからモンスタートレインを行うパーティーについての情報を提供してもらおうか」
不敵な笑みからの上から目線なのに、ああっ、格好良い!
「はい。それは、もちろん知っている限りの話をさせてもらいます!」
はぅ、何かに目覚めそうです。
カラダがゾクッとしちゃいました。
ヒロインの属性を決めました。