第10話
──一年の間に身に付けた技術と魔法とも呼べる宗教の力。
《ガレオ・プレゼンツ》とは、対象の敵からアイテムを一つ奪うことが出来る魔法である。一年前までは、ガレオ=イゴール、ガレオさんにしか使えないユニークな能力であったが、仮説の成功と、ガレオさんの突然の死により僕だけが使える魔法となっている。
ゴブリンソルジャーが襲い掛かってくるのを飄々とかわしながら懐まで忍び込んだ。
ガレオ・プレゼンツは相手に触れながら発動させなければ意味がない。特殊な力であるがゆえに、リスクも十分と高かった。
右手に込めておいたガレオ・プレゼンツをゴブリンソルジャーの懐で解き放つ。そして、そのまま背後を取るように抜き去る。
「《ゴブリンソルジャーの眼》キター!超レア度の高い眼だ!」
「グッギャアアアアアアアアアアアアア!!!ぎゃあ!ぎゃ!ぎゃいやや!」
ゴブリンソルジャーがもがき苦しんでいるようだ。それもそのはず、戦闘中にガレオ・プレゼンツを行って奪うことに成功した部位は強制的に僕の手元に来る。
今回は眼だったが、《ゴブリンソルジャーの皮》だったら身体中の何処からかの皮膚である皮が無くなっているのだ。というように、眼が突然消えたから、ゴブリンソルジャーは目を押さえて苦しんでいるのである。
「良いねぇ、ゴブリンソルジャーの叫び声はさらに下の階級であるゴブリンを呼ぶという、今日は大量だな」
ドドドドド、と地響きが聞こえてくる。
これは大量だな、と嬉しい限りだ。
せっかく奪うことに成功したゴブリンソルジャーの眼をしっかりとアイテムポーチに収納して、もがき苦しむモンスターを背にゴブリンと相対する。
下手に動かれては迷惑なのでゴブリンソルジャーの四肢をナイフで張り付けておく。体力がつきて死ぬまで叫ぶといいよ。一年前の恨みはどうでもいいかなって思ってたんだけどゴブリンソルジャーの眼を寄越してくれたから、お礼に一度参ってあげるよ!
「悪意に祈れ、そして轟け。│悪意付与」
手持ちには二本のナイフが握られている。その刀身には禍々しさが付与されているようだ。しかし先程とは違うように思える。何処か暴れだしそうな内発性を含んでいるのが見てとれる。
「弾けちゃいな!」
右手に握っていたナイフをゴブリンの集団に投げつける。
一体のゴブリンに突き刺さった瞬間、投げられたナイフから紫色の│雷が発生した。それが生きているように千鳥足でバチバチとゴブリンを焦がしていく。
「残りは何体かな?」
残った一本のナイフを左手に持ったまま、腰に携えていたホルダーからナイフを取り出して右手に持ち直した。これは普通のナイフだ。
ゴブリンを突く、抜く、切る。
粗方のゴブリンを倒し終えるとドロップしたアイテムを拾い始める。ゴブリンソルジャーを瀕死の状態で放置していたが、ついには泣き声をあげる余力すらなくなったようだ。
一足先に、ドロップ品を拾いポーチに納める。
「おい、こっちにゴブリンは向かったぞ!」
「これ以上はやばくないか?ゴブリンソルジャーのエリアだぜ?」
二人一組のペアが来ている声が洞窟に響いて聞こえてきた。
困った、あまり人目につきたくはないのだ。
希少だからこその力の危険性は僕自身がよくわかっている。
「ありがとな、これで一年前の借りは返したことになるから」
奥の手と取っておいた暴発する悪意を付与したナイフをゴブリンソルジャーに投げつけた。
ピシャ!ドドドドド!
跡形も残さずゴブリンソルジャーはアイテムドロップへと変化していた。
「もちろん、ゴブリンソルジャーの爪は頂いていく」
そうそう、今回使用した暴発する悪意を付与したナイフは品質が悪く耐久力もないため、悪意付与に耐えきれず木っ端微塵となるので証拠は隠滅されているんだ。
そこんとこ、よろしく!