【第11話】藤島綾香編・4
(藤島綾香編・4)
夜空を鮮やかな閃光が彩ると、爆音が空気を振るわせる。
綾香とゆかりは、女二人で花火大会へ出かけた。
「歩きにくいね」
ゆかりが言った。
それは、人混みの話ではなく、二人共浴衣を着ているせいで、思いの他歩幅が開かないのだ。
「ねぇねぇ、二人きり?一緒に花火観ない?」
「おっ、いい女発見。俺らと遊ぼうよ」
女二人で歩いていると、あちこちから声が掛かる。
勿論、ただの、ナンパと言うやつだ。
「あの男、鏡見た事あんのかね」
ゆかりの言葉に、綾香も思わず吹き出す。
「アヤ、金魚すくいやろ」
ゆかりが金魚すくいの生簀に小走りで駆け寄る。
綾香もゆかりに並んで、生簀の横に屈む。
「ゆかり、すくえるの?」
綾香が訊いた。
「大丈夫じゃない?」
と、言いながら、お金を払って始めてしまった。
「ゆかり、そんな大きいの絶対無理だよ」
「大丈夫、大丈夫」
ゆかりはやたら大きな獲物を捕まえようとしていた。
「絶対ムリ。少しは考えなさいよ」
「大丈夫だってば。ほら!」
そう言って、金魚をすくった瞬間、モナカで出来たひしゃくは柄の部分からボロッと折れて水の上に落ちた。
「あはははっ」
綾香は、思わず大声で笑ってしまった。
小さな子ならともかく、こんなにあからさまに終わりを告げた金魚すくいを見たのは初めてだ。
ゆかりは少し口を尖らせて
「じゃぁ、アヤやってごらんよ」
「しょうがない、お手本見せてやるか」
そう言って浴衣の袖をたくし上げる。
実は、綾香は金魚すくいをやるのが初めてだ。
小さい頃から見るのが専門で、自分ですくった事は無い。
「アヤ、あれ、出目金狙おう」
「やだ、赤いのがいい」・・・赤い出目金もいるが・・・・
スッと、水面近くに浮いてきた金魚を素早くすくって、左手のお椀に入れた。
「やったーっ!!」
「すごい!!アヤ」
こんな事で大はしゃぎの二人だった。
テキ屋のおじさんも思わず喜ぶ。
その後、綾香は二匹目もゲットした。
1匹もすくえなかったゆかりには、テキ屋のおじさんが、サービスで1匹、水の入った袋に入れてくれた。
二人は、金魚と綿菓子を手に、グランドフィナーレに近づく花火を一望する為に、河川敷の人込みの中へと下駄を鳴らして歩いて行った。




