君への手紙
今日も、競馬が始まります。
初めて君と会ったのは、今から十数年前の春の晴れた空の中山競馬場でしたね。
その頃私は、競馬ゲームから現実の競馬に興味を移行しつつある時でした。
そして、前の年の年末の大レースをTVで見て「必ず競馬場に馬を見に行きたい」との思いができてしまい。
半年もたたずに、この競馬場に見に来れました。
その思いが叶った日に、偶然君に出会える事ができたのは本当に運の良かった事です。
君は競馬新聞などの前評判が高く、この後の大レースでも大本命・・・そんな馬でしたね。
しかし、競馬初心者の私に解るはずがなく・・・初めて見た本物の競馬新聞の印と共に、「へえ、凄いんだ」という感想しかありませんでした。
レースが始まっても、そんな印象のままでした。
初心者なので、競馬新聞の予想通りに四苦八苦しながら初めての馬券を買えた事。
それと「的中するかなあ?」という思いしかなかった気がします。
が、4コーナーを回り直線に入り暫くすると・・・馬群から君が抜け出してきた・・・
―鼻っ面に白い何かを付けた黒っぽい馬が、先頭でゴールに迫ってくる―
この文章で君に伝わるかどうか解りませんが、そんな感じに圧倒されました。
今思い返すと、君のレースに興奮してたのはよく覚えています。
レースと言っても、最後の直線からゴール前までの事だけですが。
興奮から我に帰った後、真っ先に思った事は馬券が中ったか如何かでした。
今のレースを忘れたわけではない・・・
と思いたいのですが、その時は目の前の欲のせいで忘れてしまいました。
今思うと、本当に申し訳ないです。
弟と君の後に来た馬がどっちだったかと、議論していた覚えが真っ先に思い浮かぶのだから。
まあ運良く私はビギナーズラックで、君を見たレースを的中させる事ができました。
この君のレースから、私の競馬人生は未だに続いています。
買う馬券が、悉く的中しない競馬人生ですが。
その次に君を見たのは、TVの競馬番組ででした。
毎週日曜の午後3時に、放送している競馬番組です。
その頃大学生で名古屋で生活していた私は、場外勝馬投票券発売所の存在を知らずにいたんです。
次は何時競馬場に行けるかなあ?、という思いでいました。
この時の番組を見た後から、名古屋市の隣の豊明市に中京競馬場があるのを知った次第です。
それと同時に、名古屋市にウインズがあるのを知ったのですが。
可也、お間抜けな話です。
君は、その大レースでも当たり前のように先頭でゴール前を駆けて。
その次の大レースも、余裕で先頭でゴール前を駆け抜けていきました。
この大レースは、なんとか無事にウインズで見れましたよ?
馬券も君から買い的中できました。
このレース後、君は北の避暑地に秋の大レースに備えて移動。
君を待つ間の、初めての夏競馬は散々な結果でした。
まあ、自業自得なのですが。
そして季節が夏から秋になり・・・君が、競馬場に戻ってくる日が来ました。
秋の緒戦・・・大レース前のレースでしたが、君は先頭ではなく二番手のままゴール版を駆け抜けました。
君にとっては、経験のある敗戦・・・が、次の大レースを勝てば良いので問題ないはず。
けど、君の周りにいる人達と更に外の人達は大騒ぎでしたよ。
次も危ないんじゃあないかと。
大レースの前の敗戦。
しかも、次の大レースを制すれば10年ぶりの快挙。
期待・不安・疑問etc...
様々な人の感情が、競馬場などの内外で多数あったのは間違いないと思います。
しかし君はその次の大レースで、その人の感情などを吹き飛ばしてくれました。
殆どの人は、歓喜か驚愕のどちらかの感情を抱いたはずです。
まあ穴狙いの人達もいるはずだから、殆どなのですが。
大レースで春の二戦より大きな余裕を持って、先頭でゴール前を駆け抜けていきました。
10年ぶりの大記録。
私はその瞬間、TVの前で大喜びしたのを覚えています。
初めて行った競馬場で見た馬が勝った!!
しかも大記録!!
こんな感じだったと思います。
まあ大記録を達成する前の普通のレースで、君に会った事を自慢したい部分もある。
こんな思いもありましたがね。
多分出るであろう年末の大レースで、必ず君を見に行くと興奮してました。
私の願いが通じたのか、年末の大レースでまた君と会う事ができました。
君はその大レースでも押しも押される大本命。
最初の出会いの時と全く同じ状態。
そんなはずはないと思うのですが、その時の君はあの時と同じ様に見えました。
そしてやはり君は、この大レースも余裕を持って先頭でゴール前を駆け抜けていきました。
。
―君が、先頭でゴールに迫ってくる・・・しかも、後続を可也突き放して。―
馬券は的中しましたが、君のレースに身震いをして感嘆の声しか出なかった覚えがあります。
そして年が変わり、君が賞を受けたのは当たり前の話でしょう。
そして、その年の初めて君と会った季節に君が怪我をして・・・
この後の君の成績は、様々な賛否両論な意見がありました。
やはり、有名なのは君が怪我した次の年の春のレースでしょう。
あのレースは、見に行ったあの年末のレースより覚えています。
今考えると、その死闘の反動がその後の成績にと邪推したりもしました。
しかし、無事に引退できてほっとしたことは確かです。
君を競馬場で初めて見た時から、早十数年。
引退して約二年ぐらいで君は、大レースを駆け抜けた様にこの世界から居なくなってしまいました。
この先君の子供達を、競馬場で見る楽しみも半減してしまったと思ったのを覚えています。
そして君が残した子供達も、既に競馬場から姿を消してしまいました。
追い討ちをかける様に、君が生まれたところもなくなってしまったようです。
君がいなくなった後、君が制した大レースを様々な馬が制していきました。
君と同じ様に、いや君以上かもしれませんが大記録を打ち立てた馬も出ました。
ほんのたまにで申し訳ないのですが、初めて競馬場で君を見た年のレースを思い出すことがあります。
君が駆け抜けた姿を思い出すのが、懐かしくなるのは当たり前ですが
・・・少し悲しい気もします。
しかし、君の駆け抜けた姿を思い出すたびにつくづく思います。
君と出会ったからこそ、今の私の競馬人生があるのだと。
様々な人間達の感情などを乗せて・・・
今日も君と同じ様に馬達が走り、競馬が始まります。
そう君、『ナリタブライアン』が駆け抜けた様に。
そして今更ですが、ありがとうの感謝の気持ちを込めて。
―君と出会えて、本当に良かった。―
write by 蒼來
あとがき
・・・・シリアスは苦手なのでサブイボ大量発生中・・・・
駄文だし・・・感想は要りませんので、あしからず。