↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

人間万事塞翁が馬

掲載日:2026/10/08

短編です

 新幹線が目的地に着くまで、私だけが無言だった。隣に座るはずの彼の姿は無い。他の指定席はすべて埋まっていて、行楽シーズンの混んだ新幹線を私だけ、隣のスペースに荷物を置いて余裕をもって過ごすことが出来た。

 そう、だからもういいのだ。浮気して、悪びれもしない彼なんて、こっちから願い下げだ。

 新幹線の中で今更ながら、払い戻しについてを調べる。手数料がかかるけど、返金されるのなら、隣の席の分、払い戻してもらえばよかった。でもまぁ、おかげで隣に荷物を置いてのんびりできるんだ。まぁいいだろう。通り過ぎる人の視線が痛いから、帰りは払い戻そうかな・・・。

 広島に向かう新幹線の中は、私以外賑やかだった。ちょうど秋の紅葉のシーズンだ、みんな目的地は同じなんだろう。

 案の定、ほとんどの人が京都駅で降りた。かく言う私も、みんなと一緒に新幹線を降りた。

 どこへ行っても人、人、人・・・。最近は海外の人も増えていて、シーズン関係なく混んでいると聞いたけど、やはり行楽シーズンの混み方は格が違う。

 人目を気にすることなく、大荷物を持って歩き出したけど、目に付くのは二人組のカップルばかり。くそう・・・私だって、本当は・・・アイツと一緒に来るはずだったんだ。このカップルの中に混ざり合って、仲良く手を繋いで京都の街並みを楽しむつもりだったんだ。でも隣を見ても誰もいない。ただの虚空が沈黙してそこにいるだけ。

 一人でカップルだらけの京都に来るのって、ちょっと・・・いや、結構寂しい。ソレもこれもアイツが私を除いて3人もの女性と関係を持っていたのがいけないんだ。気づかなかった私もアホだったけど・・・。浮気が発覚して、怒って突発的に別れを切り出したら、あっさりと「わかった」なんて言って、家を追い出された。お気に入りのクッションはまだ、あいつの家にある。でももうそんなもの、どうでも良い!今は京都旅行を楽しむのみだ!

 泊まる予定のホテルに荷物を預け、寺や神社をめぐる。途中でリサーチしていた店を見つけたけど、案の定の込み具合。空腹を携えて歩き回ったけど、夕方近くなってようやく昼食にありつけた。

 くそう、くそう、くそう!全部アイツが悪いんだ!

 ホテルの食事は事情を話したから、一人分にしてくれたし、料金もご厚意で一人分にしてもらったけど、部屋は他も満室で、変えられなかった。広い露天風呂付きの部屋で、一人黙々と食べる、豪華な食事・・・。美味しいなぁ!美味しい!景色も良いし!部屋の露天風呂で誰に気兼ねする必要もない!最高!・・・ほんと!サイコー!!


 部屋に備え付けられていた飲み慣れないビールを二人分、一気飲みして、フカフカのベッドでひと眠りしたけど、目を覚まして隣にいるはずの人がいない状況に、涙が出そうになる。しかも二日酔い。慣れない酒は飲むもんじゃない。

 えぇい!感傷に浸ってる場合じゃない!帰りの新幹線の時間まで京都旅行を楽しむんだー!

 旅行雑誌のメモを元に、回れるだけ回って、足はパンパン。旅行に来る前より疲れてる気がする。なんだかなぁ・・・。リフレッシュのつもりだったのに・・・。

いや、楽しかったよ!楽しかった!うん!最高の旅だった!

 何とかポジティブに思考を向けるけど、虚しさが襲う。払い戻しもしなきゃだし、チケット売り場が込んでいるかもしれないから、早めに京都駅に戻ろう。明日からまた仕事だ!!頑張るぞ!!

 新幹線のチケット売り場で並んでいると、私の目の前の男性が、スタッフさんに絡んでいた。

「あの、本当に急いでいて、すぐの電車で帰りたいんです」

「いやぁ、この時期はちょっと・・・」

「そこを何とかなりませんか!?夕方じゃ間に合わないんです!」

 聞き耳を立てていると、どうやら仕事ですぐに東京に戻らねばならないらしい。しかしこの時期は行きも帰りも新幹線はほとんど満席だと駅員さんは困り顔。

「あのぉ・・・私これから東京に戻るんですけど、チケット一枚お譲りしましょうか?」

 声をかけると、驚いたような顔をした後、今にも泣きだしてしまいそうな顔で感謝してくる彼・・・。実はちょっと、好みだったりした。



——き、切符が無駄にならなくて良かった~!——

帰りは、いつもより声色が高くなっていたのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。