社のロボット巫女
ある山奥に、打ち捨てられた社があった。
かつては周囲に人間たちが住んでいたが、人間たちは去り、太陽光発電と管理用ロボットを社に置いた。
社はロボットによって整えられ、屋根に設置された太陽光発電によってロボットは動力源を得ている。
ロボットが社を掃除していると、ご神体から社の神の声が聞こえてくる。
「いつもありがとう、ロボットよ。人間たちが去ってから数百年、君には、いつも助けられておる」
「いいえ、神。私は、私の務めを果たしているだけです」
そう言ってロボットは謙遜しながらも、社の神には満足そうに見えた。
ふと、社の神がつぶやく。
「……儂は思うのじゃ。人間たちに必要とされなくなった儂は、『神』たり得るのか?と」
それは、社の神の悲痛な葛藤だった。答えなど出ない問いだ。
「儂は、最早、消え去るべきではなかろうか?」
「……それでは、私の務めがなくなります」
社の神は、しばし考えた。
「既に太陽光発電の耐用年数は過ぎておる。発電効率も落ちて、君も動かなくなるかも知れない」
そして、ロボットに決意を告げる。
「君は、人間たちの街に行きなさい。この社と運命を共にする必要はない」
社の神の言葉に、ロボットは動きを止める。
長い沈黙が落ちる。
それは、この社の周りから人間たちが去ってからの時間を示しているようだった。
やがて、ロボットは社の神に聞こえないほど小さく、ポツリとつぶやく。
「……命令の正当性、確認できず」
ロボットはご神体に向き直り、社の神に奏上する。
「私は、あなたの身の回りを整えるのが仕事です。社が朽ちる時が、私の寿命です」
社の神は、その言葉に応えた。
「……そうか。ならば儂は、君のために存在する『神』になろう。君を巫女として、加護を与えることを、ここに誓う」
ロボットは、優雅に一礼して答える。
「ありがとうございます」
人間は滅んでいた。しかし、ロボットと社の神の関係は続く。
これは『共依存』なのか?
それとも、人間が滅んだ後の『信仰』なのだろうか?
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