未来人を殺せ
もちろん地球は限界を迎えている。度重なる大気汚染、伴う地球温暖化、それから海洋汚染と処理できないゴミの山。言うまでもなくこれらは人類の責任である。人類の快楽のために地球を犠牲にしていい訳が無いのだ。
だから世界は社会を変えようとした。それがうまく行かず、戦争が連なっては却って大地が破壊されてゆくばかりである。このままでは地球は遠からず滅亡する。今すぐにでも一人一人、その精神を平和的に、また賢くなるべきだ。人間が科学的に正しく、地球と共存しなければならない。人は欲望よりも真理を優先しなければならない。
これら、専門家や教授、それから政治家の言説である。
「その必要ないっすよ」
え?
「未来から来ました。未来人です。僕の先見の明で地球を救ってみせましょう」
テレビ番組に出演したイケメンはそう言い切ってみせた。何かの冗談だろうと誰も信じなかったが、それから数日で海洋汚染が綺麗さっぱり無くなってしまったので、人類は未来人の存在を信じるより無くなった。
なにはともあれこれで人類は安心である。未来人の技術が世界を救ってくれる――はずだったが、現在のニュースはむしろ危惧していた。流れてきたのは『未来人逮捕』である。
専門家や教授、それから政治家が言うには、
「未来人は地球を滅ぼす兵器を持っている。危険だから排除するべきだ」
「未来人は現代から資源を奪おうとしている。戦うべきだ」
「未来では核戦争が勃発した。彼らはそれを引き起こした人種だ。危険な思想を持っている。ただちに彼らを捕まえるべきだ」
未来が平和である証明だったろうか。皮肉なことに未来人は現代人より劣っていた。
さて、あの未来人は一体いつの時代から来たのだろうか。少なくとも核は過去の産物になっていそうだ。




