第5話
『きょーや、好きなの頼んでいい?』
おれたちがやってきたのは、とある大学の構内
大学のレストランのところに行った
おれは、少しばかりサクナにお灸を据えてやろうと思って、この場所を選んだ
『いいよ、サクナ、好きなの選んで』
サクナは、ラーメンとチキンカツ定食を選んだ
……比較的安いの選びやがって……
おれは、その中でもシークレットとされているものを、店員にこっそりと伝えた
『きょーやのそれ、メニュー表にはなかったような……?まぁ、いいです、いただきます!』
サクナはバグバグとものすごい勢いで食べ始める
きっと、すごいお腹が減っていたのだろう
おれが頼んだのは、メニュー表には載ってない、一部のほんのごくわずか一部の人だけが存在を裏メニューなんだから
おれは、初霜のローストビーフ……裏メニューのひとつのステーキを食べる
うん、熟成されたお肉にしっかりと旨味が閉じ込められている……柔らかくて、溶けちゃいそうなほど美味しい……
次に、季節の真鯛の料理を食べる
うん、真鯛に旨味がしっかりとのっている
この時期の真鯛は旬だから……貝類の炊き込みご飯のスープもちゃんと美味しい
なんか、サクナがおれのことを睨んでるな
そっちのほうが量はかなり多いぞ
『きょーや、あーん、食べあいっこ!しよ』
サクナはフォークでチキンカツを刺して、おれの口元に運んできた
おれは、サクナが鯛とローストビーフを少し食べたいのだろうな、と察して
別皿にほんの少し分けてあげた
『むぅっ……べ、べつにいいです……そっちがその気なら……別の方法で……』
サクナはなぜかそう言いながら鯛とローストビーフを受け取る
ぷいっとおれのことを一度そっぽを向いて、ほっぺを膨らませて、そしてからローストビーフを口にした
『お、おぃしぃ……な、なんでこんな……ここ、ホテルの料理……?』
サクナはそう言って、目をぱちぱちさせた
『チキンカツも、ラーメンもそうだけど、普通のレストランのと違う……ましてやこのレベルが学食なんて……』
『まぁ、ホテルの料理人が作ってるようなものだからね……』
『そうなの……?で、でも、ここ、大学の学食じゃ……』
くるりと首を回して当たりを見回すサクナ
学生だけでなく、一般の人も多数いる
なんなら、一般の人の方が多いくらいだ
どんどん席は埋まっていく
『はやめにこれてよかったね、サクナ』
おれは、久々のここの料理をしっかりと味わって食べる
サクナがさっきからちらちらとこっちを見てくるな
おれは、まだ足りないのかと思いつつ、フォークで鯛の身をほぐしてサクナの口の前に差し出す
『うぅ……きょーやのばか……』
サクナはそう言いながら、なぜか鯛を食べずにぷいっともう一度そっぽを向いた
『おいしかったね』
サクナはおれにそう言って甘えてくる
「ラーメン、チキンカツ定食、そしてそのお2つに……と、いうことで、お会計は、9500円になります」
サクナの顔から笑顔が消えた
明日は18時投稿です