第2話
入学式の1ヶ月とすこし前
珍しく帰ってきていたおれの母親が突然こう言い出した
「響夜、大切なことがあるの、そう、すごい大切な……」
「どうしたの?不治の病にでもかかった?」
おれは片親で、その片親の母親も滅多なことがない限り帰ってこない
仕事で全国を飛び回っており、帰って来る機会がないのだ
本当に仕事しているのか?と疑問に思ったことはあるが、預金口座にしっかりとお金はかなり入っているので、大丈夫
帰ってきたということは、かなりの出来ごとのはず
「響夜、実は、今度留学生がホームステイするの、その子とふたりで暮らせって言ったら、どう?」
おれは、たくさんの言語を話せる
しかも1年前留学してたし
ホームステイ先の候補になってもおかしくない
「ん、どんな人かによる、クソ野郎だったら追い出す」
ホームステイなので、同じ屋根の下で暮らすのだ
期間はわからないけど、性格が悪いクソ野郎だったらおれは嫌だ
「安心して、それは大丈夫!」
なぜか母親は少し笑いながら、話す
「響夜がよ〜く知ってる人!その人がホームステイに来るのよ!2人暮らしでもきっと大丈夫!」
よく知ってる人
おれが留学先で出会った人たちか、それとも……
おれは少し考えた
まず、エレーナという女の子
茶髪茶眼の少女
おれが留学先の学校で、最初に仲良くしてくれた女の子
日本にかなり興味がありそうだったので、普通に来てもおかしくない
アニメ、漫画、ラノベ、エレーナはそういう系が大好きで、いつか聖地巡礼をしたいと言っていた
「女の子と2人……よくある……」
「あら、響夜にしては珍しく勘がいいじゃない、これから同居、いや、同棲する子なんだから、仲良くね」
まさか、おれの恋人かなんかだと勘違いしてる?
エレーナとは、あくまでお友達
エレーナ以外とも恋人は作ってなかったし……
「ちゃんと仲良くするのよ?あ、私、そろそろ行かなきゃ、新幹線の時間」
そう言って、おれの母親は家を出ていった
空港にホームステイの子のお迎えの時間の紙を残して
エレーナだったらいっしょに秋葉原とかに行きたいな、そう考えていた
でも、その時のおれの頭には、なぜかエレーナが来ると思い込んでしまっていた
他の人が来るという思考をなぜか放棄してしまっていた
お迎えの当日、空港に姿を現したのは、まさかの銀髪の可憐な美少女、サクナだった
お別れのときに、かなり気まずくなっちゃったのに、よくおれのとこに来たな、同棲しようもしたな、おれはそう思った