第1話
高校の入学式が終わったあとの自己紹介タイム
「アル・サクナ・オベールです、フランスからきました、アルと呼んでください」
天使のように美しい美貌を持つ美少女は、まるで妖精がこの地に舞い降りてきたよう
綺麗なサラサラの銀髪が光り輝く
その見た目に、男たちは魅了され、女たちは羨望の眼差しを向ける
自己紹介タイムが終わると、サクナはすぐにクラスの人に囲まれた
日本の好きなとこ
フランスはどんなところか
そんな、よくある質問に、留学生はすこし日本語に苦戦しながら答えていく
少し舌足らずだけど、そんな姿も可愛いと男たちはひそひそ話をしているが
そして、最後の質問をサクナは受けた
なんで留学しようと思ったのか、なんで日本なのか
サクナは、こちらに向かって素敵な笑みを向けながら、そしておれ、五十鈴響夜にウインクをした
「そこの、ひとりでいる、きんぱつのこ、きょーや、フランスでクラスメイトでした」
おれに視線が集まるのがわかる
サクナ以外のここにいる全員が、おれが中学校のときに1年フランス留学してたことは誰ひとりとして知らない
「きょーやといっしょにいて、おはなししたりするうちに、いきたくなりました、りゆーは、それ、です」
留学生はクスクスと笑いながら、寝たフリをしてるおれのほっぺをつんつんと突く
「わたし、りょーせー?じゃないので、ホームステイしてます、きょーやのいえ……」
コイツ……言わなくていいことまで……!
「わたしと、きょーや、どうせいちゅー、です!」
サクナは、胸を張って同棲という言葉を強調して言い放つ
おれの高校生活の、終わりを告げた音がした
「どういうことだよ!お前!」
「同棲って恋人同士!?」
「アルちゃんが追っかけするほど惚れ込んだの」
「馴れ初め何!?聞きたいっ!」
「国際超遠距離恋愛してたの……!?」
初対面のはずなのに、おれは囲まれてしまった
顔と名前の知らない相手にこうも囲まれるのはやっぱまだ慣れないな……
しかも、こんな至近距離だと……
「やめて、きょーや、は、わたしの」
サクナはおれの腕をむぎゅっとつかんできた
これはフランスでのときもよくしてきた
やめろサクナ、今はこんなことをするとおれが死ぬ
でも、抱きつかれた腕から柔らかい感触と、サクナの女の子特有のいい匂いがして……
1年前から、サクナ、さらに可愛く、大人っぽくなって……
留学中は、サクナからのこういうスキンシップ、結構あって慣れたはずなのに
幸い、おれは表情が顔に出ないタイプなので、他の連中にはサクナに照れてるのは隠せたのだが
『きょーや、照れてる?』
1年もいっしょにいたサクナを騙すことはできず
『きょーや、私に照れてる、可愛い』
腕を掴まれながら、男たちの罵声と女たちの黄色い声を受けながら、サクナに数分間からかわれ続けた