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謎めいた子供の一言

不思議な女の子がいたらということから話を始めました

 大学生活は、思っていたよりもずっと平坦だった。

 授業には出る。遅刻もサボりもしない。ただ、面白いかと訊かれると、答えに詰まる。


 春の終わりごろから、ひとりの学生が気になっていた。

 金髪の髪を肩口で揺らしながら、いつも教室の一番前、右端の席に座っている。後ろ姿しか見えないが、       

 授業中も背筋を伸ばしてノートを取っている様子がちらりと見える。

 派手だが、うるさくはない。

 金髪だが日本人だ。

 いつも静かにそこにいる、という印象だった。


 ある日、昼食をとるために学生食堂に入ると、偶然その子と隣のテーブルになった。

 こちらは友人とふたり。向こうもふたりだった。

 だが、連れは妙に小さい女の子だった。

 小学生くらいだろうか。妹にしては、年の差がありすぎる。

 けれど、そのふたりは自然に並んで食事をしていた。

 まるでずっと前から、こうしているのが当たり前のように。


 目が合った気がして、軽く会釈をすると、金髪の彼女はふわりと笑った。

 その瞬間、友人が話していた内容は完全に頭から抜け落ちていた。


 食事を終え、彼女たちは先に席を立った。

 去っていく背中を、ぼんやりと見送っていた。


 何日か経ち

 交差点で信号待ちをしていた


 上着の裾をが引っ張られたので、振り返ると

 こないだの女の子がいた

 「こっち、こっち」

 促されるままに、何歩か歩いた

 その時、さっきまでいたところにトラックが突っ込んできた


 ガラガラがしゃーん

 ものすごい音がして突っ切ってお店のショーウインドウを粉々にした


 あー あぶなかった

 ? でもこの子のおかげでは

 気が付くと、あの妹の子はもういなかった


 次の週、あの子が来る授業に出たら

 いつもの右の前の席にいた

 お礼を言いたかったので

 斜め後ろの席に座ったがすぐ授業が始まってしまった


 「・・・という経緯だったのだが、この時の主人公の心情は?

 一番前の君」

 彼女があてられた

 なぜかもじもじして答えられない様子で時間が過ぎていく

 答えをメモにして彼女の机の上に滑らせた

 「○▽◇」

 「聞いていればすぐわかったと思うが一応正解なのでまあいいでしょう」

 授業はそのまま進んでいった


 授業後、彼女から

 「ありがとう、ちょっと考え事をしていて・・・」

 「いいんだよ、こちらこそお礼が言いたくて」

 「?」

 「こないだ、君と一緒にいた女の子に助けられたんです」

 「・・・・・ その話はちょっとあとでしましょう」

 なんだかわからなかったが

 教室から出て、歩きながら話し始めた

 「あの子が助けたんですよね」

 「そうなんです」


 彼女はちょっと残念そうな顔になって

 「不思議だとは思いますが

  そのまま心の中にしまっておいてほしいんです」


 「はえ?・・」


 「あまり詳しく話したくはないのですが


 ああいうのが原因でいろんな問題が起こるものですから」

 彼女の目は悲しそうな色を浮かべた


 一緒に歩いているのも気まずい感じもあり

 二人のどちらに対しても気になって仕方がないので 

 思い切って聞いてみた


 「立ち入るのは申し訳ないですが

 ちょっとでいいので教えてもらえませんか?

 そういえば名前も聞いてないです

 僕はミマスと言います。あなたは?」


 「青葉です。青葉コサチ。小さい幸せと書きます。

 大きい幸せにしてくれてかまわなかったのにね」

 ここで青葉は少し笑った。


 「あの女の子は?」

 「だから内緒だよ。親戚の子なんだけどね」


 ちょっと聞きにくい感じだったので

 この日はこれで終わりにした。

 


 大学生活も特にないまま過ぎ去り

 毎日おなじようなことを繰り返しているうちに

 日々が過ぎていった


 青葉とも時々話す程度で

 例の女の子の話は聞けなかった


 

 そんなある日、たまたま青葉と話しながら帰るときに

 例の女の子が来た

 「帰って来ちゃだめ」

 変なことを言うなあと思ったけれど

 青葉は

 「わかった」と言って

 女の子の手を取って逆方向に歩き

 女の子と並んで駅前のベンチに腰掛けた

 僕も一応座った


 目の前の電気屋には大きなテレビがあって

 ニュースを流していた


「ブレイキングニュース

 先ほど○○駅近くの建設現場で

 発見された不発弾を処理する作業中

 突然爆発して、近隣の建物に大きな被害が出ました。

 ○○駅周辺の方は・・・」

 びっくりして目が画面に吸い付けられる

 空撮映像では地面に空いた大穴がとらえられていた



 「これなのよ」と青葉

 「この子は事故が予知できるってこと?」

 「そう、だから問題になるの」

 「なんで? 便利どころか貴重じゃん」

 「そうでもないんだ」

 そこから彼女が話したのはまとめるとこんなかんじ


 二人は離島の神職の家系でいとこ同士

 女の子の方が神をつかさどる家

 この家ではときどき予言者が出る

 この女の子はその能力が高い

 島に訪れる危機をいくつか予言したら


 「こいつが言うから悪いことが起こるんだ

 言霊が。こいつを黙らせないと

 ますます厄災が起こる」

 それがみんなに広がって

 子供はいじめてくる 大人は悪口を浴びせる

 あまりに暮らしにくいので

 青葉が都会の大学に行くタイミングで

 連れてきてしまった

 家族も了承済みとのこと

 「私の金髪も自然にそうなの、染めてるわけじゃなくて」

 顔が思いっきり日本人なので

 てっきり染めてると思ってた

 「私たちはどこか普通じゃないところがあるの

 なので、あまり目立たないようにしているの

 私はちょっと目立つけどね

 でも、都会ならそうでもない」


 もう、へえとしか言えないし

 嘘とも言えなければ、嘘とも思えない

 たぶんきっと本当にそうなんだ

 「いろいろ大変みたいだったね

 話が広がって欲しくないのもわかった

 だまってるよ」

 彼女たちをそっとしておくことにした


 そんなある日

 三人で遊園地に行こうという話になった

 一人余計な気もするが仕方ない


 バスターミナルでバスを待っていると

 女の子「そのバスに乗っちゃダメ」


 「・・・」


 僕と青葉は目を見合わせた


 「(例の予言が)来ちゃったかもしれない」

 「そうね」

 「どうしよう」

 「乗っちゃだめね、今日は中止して帰りましょう」


 でも、あの子が言うのだから何か事件や事故が起こるはずだ

 そのバスにはもう何人も人が乗り込んでいる

 この人たちが事故にあうのを放置しておいていいのか?


 しばらく考えて

 「僕はバスに乗るよ

  二人はもう帰って

  事故になるのを知っている人がいれば

  何人かは助けられるかもしれない」

 結構、真剣に言った


 毎日平凡だったが、ここでは僕が必要とされるかもしれない

 「・・・、わかったわ

  気を付けてね

  待ってる」



 僕はバスに乗り込んだ

 怪しいところなどなく、平和そうな人がたくさん乗っている

 むしろそれが不気味だ


 バスは発車、ドキドキしながら進行方向

 あるいは後ろに気を配る

 上は見えないけれど

 いつでも何か落ちてきても良いように

 壁際に身を寄せる


 バス停ごとに人が下りる

 ああ、あの人は助かった、よかった

 バスは進み続ける


 30分も走ると自分だけになった

 途中で気づいたのだが

 このばすはそもそも遊園地にはいかない

 どこか山の方だ


 なんだか変だなと思っているとバスが停車

 「お客さん終点ですよ」

 下りないのは変なのでバスおりる


 山の中

 茶屋と書いただんごののぼりがある建物と

 バスの転回場で終わり

 いたって平和で何もなさそう


 火星人が襲来してもおかしくないぐらいに思っていたたが

 どうも空振りらしい


 スマホで青葉に連絡

 ・特に何もなし、今から帰る

 青葉から

 ・わかった、よかったね 待ってます

 ・でも帰りに何かあるかもだから気を付けて


 発車までひまだから茶屋の中に入てみる

 小さなお土産屋もあった

 手ぶらじゃなんだから何か買うかと

 「○○名産桃だいふく」なるものを買う

 イチゴ大福の中身が桃に入れ替わっているらしい


 それを持ってバスに乗り込む

 帰りも何かあるかもと警戒するも

 バスは人を乗せて淡々と走り

 バスターミナルに到着


 青葉がいた

 下車して合流

 「なんもなかった」

 「よかったじゃん」

 「空振りもあるんだね」

 「今まではなかったけど、厄災が起こるよりはまし」

 なんとなくほっこりして笑いあった


「お土産買ってきたよ

  フルーツの大福」

 女の子がうれしそうに手を出してきた

 「だいすき、すぐ食べれる?」

 「じゃあそこベンチで食べよう」


 三人並んでベンチに座って、包みを開けた

 「イチゴ大福のいとこの桃大福で~す

  中身が甘い甘い桃になっていて

  とってもおいしいよ」

 一つ女の子に渡した瞬間

 青葉がそれをとり上げた

 「ダメ、この子ひどい桃アレルギーなんで

  食べたらどうなるかわからない」

 「えっ・・・」


 そして、女の子は大泣きを始めた

 「どうしてくれないの?食べようって言ったのに

  ずっとずっとお姉ちゃんと待ってたのに・・・」

 かわいそうだがしかたない 泣き止まないけど仕方ない


 ここで気づいた

 「ねえ、青葉

  この子が予言した厄災って

  『待たされて、空腹になって、大福をもらったけど

   とり上げられた』

  ってことなんでは?」


 「あー、そうかも

  子供にとっては厄災ね」

 二人で目を見合わせて笑ってしまった


 「ごめんごめん

  おなかがすいたんだね

  じゃあ、そこのお店でケーキを食べよう」


 機嫌を直してもらうべく、三人でケーキ屋に入った


 この子には予想外だったようで

 楽しそうに選ぶ横顔が印象的だった



こんな終わりがあってもいいかなと思って結末を書きました


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