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政略結婚の果てに──私に興味がないそうですが、私がいなくなったら困るくせに――  作者: クレキュリオ
最終章 政略結婚の果てに――

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第23話 黒幕

「急ぎ運べ。ただし慎重にな」


 直系三十メートルある、巨大な黒い球体。

 それを何十人もの兵士が、持ち上げている。

 戦闘にはヒゲを生やし、王冠を被った男性。


 周囲を警戒しながら、王宮へと球体を運び込む。

 月下が照らす中、警備が手薄な道を通る。


「よう。そんな物騒な物持って、なにをするつもりだ?」


 青い風が兵士たちの、男性の前に降り立つ。

 風は青い服と亜麻色の髪、赤いローラーシューズに変化。

 冬木ユウキの姿になった。


「トウイチの処分のため、証拠を回収しているところだ」

「へえ、そうかい。てっきり兵器転用でも考えているとでも思ったぜ。王様」


 男性、国王は眉間にしわを寄せる。

 誤魔化しは不可能だと悟ったのだろう。

 開き直った笑みを浮かべて、ユウキに近づく。


「ああ。そうだとも。我が国の更なる発展のためにな」

「他人のふんどしでか? 使うならもう少しまともなおもちゃを使うんだな」

「これは我が世界で開発されたものだ。知識を譲り受けてな」


 国王は兵士たちに球体を置くよう、指示を出した。

 警備兵と共にユウキを囲む。


「退いてもらえるかな? 異界の法に介入しないのがルールだろ?」

「まあね。軍の規律にはそう書かれている。だから……」


 ユウキは一瞬で距離を詰め、一人の兵士を蹴り飛ばした。

 飛ばされた兵士は壁に激突。そのまま意識を失う。


「これは個人的感情さ」

「そんなことをすれば、君は処分では済まないだろ?」

「覚悟の上さ。命でも人生でも。好きな物を差し出してやる」


 ユウキは笑みを消して、国王を睨む。


「これ以上あの二人に手を出すな。時間と人材を無駄にしなくて済むぜ」

「全てを捨てる気か……。確かに君相手では、兵士が百人居ても足らんな」


 国王が再び兵士に指示を飛ばす。

 今度は自分を守る様に、壁を作らせた。


「アンタ堂々と動き過ぎだからな。国王だからもみ消せるとでも?」


 背後から鉄が地面を叩く音が近づく。

 王宮の兵士。それも国王の所属とは別の者が現れた。

 最後尾で指示を出すのは、国王の弟、ノバだ。


「兄よ。貴方の計画、全て見せてもらった」


 ノバは兵士の間をくぐって、ユウキの隣に立つ。


「トウイチにはスポンサーが居たんだ……。秘密裏に計画を進めるため」

「駆け落ち貴族が、あんなもの作れる人員も資金も集められるわけないからね」


 少し遅れてレイも、前方に出る。

 ユウキは口笛を吹きながら、剣を引き抜いた。


「ここは我々に任せてくれ。国王の不始末、君が責任を負う必要はない」


 ノバが前に出て、王族の証を見せる。

 この動作の影響で、部下の兵士たちが戸惑いを見せる。

 

「貴方は国王でもなんでもない! ただの反逆者だ!」

「弟よ。国の発展の為、兵器を作る事が何の法律に触れるのだね?」


 ノバは黙った。確かに法律に触れる行為ではない。

 それでも恐ろしい兵器を開発していたことは、気持ちの良い事ではない。


「伯父様! お願いします! 貴方の身勝手で、これ以上彼らの幸せを奪わないで!」


 レイの必死の訴えも、国王は鼻で笑う。


「たかが二人の犠牲で、数万以上の国民が救われるのだぞ?」

「アンタが救いたいのは、自分の支配欲だけだろ?」


 ユウキの皮肉に国王は顔をこわばらせた。


「他人を支配したくて、でもそのままだと醜くて。だから気持ちの良い言葉を使っているだけさ」

「ふん。自分の気持ちを言い当てられるほど、気分が悪いものはないな」

「おっと! 認められるとは意外だな!」


 国王は両手を広げた。

 球体。ダークマターを活性化させる装置が、起動する。


「点検してから使いたかったが。まあ良い」


 装置から赤紫の光が、国王に向かって放たれる。


「なっ……。ダークマター因子がなければ、起動しないはずでは?」

「愚かな弟よ。トウイチはお前に全ての因子を渡していない」


 光に吸い込まれるように、国王は球体の中に入った。 

 球体が不気味な赤黒光を放つ。


「残ったのなら、私に使わせてくれと頼んだのさ!」

「自分に因子を? なんて無茶な……」

「お前達は良く動いて、トウイチを始末する理由を作ってくれた!」


 球体から黒靄が放たれる。靄が城の外壁に接触すると。

 一瞬でレンガを消滅させた。


「後は残る因子を取り込めばいい。全て私の計画通りだ」


 国王を取り込んだ球体は、空中に浮かぶ。

 黒い稲妻を放ちながら、高速で空を飛んだ。


「おっと! そうは行くか!」


 ユウキが球体を追いかけようと、ローラースケートで滑り始めた。

 そこに国王直属の兵士たちが、立ちふさがる。


「国王陛下の邪魔はさせない!」

「お前らなぁ……。あんなので国が発展すると本気で思っているのか?」

「だ、黙れ! 我らは国王をお守りするために……」


 騎士が言い終える前に、強い風が吹いた。 

 同時に鈍い音が聞こえて、先頭の騎士が吹き飛ぶ。

 コスモ家の衛兵服を着た者が、風と共に現れる。


「ユウキ、奴を追え! そして絶対に勝て!」


 なぜ目の前の衛兵が、自分の事を知っているのか。

 そんなことはどうでも良かった。

 ユウキはサムズアップを見せて、衛兵の脇を走っていく。


「任せとけって!」


 尚もユウキを妨害しようとする兵士を、ノバとその部下が防ぐ。

 ユウキは兵士を突破して、市街地に向かった。

 行き先は分かっている。国王の目的は、残った因子の回収。


「教えてよ。悪って言うのは、どうして黒が好きなんだ?」

「ほう。追って来たか。ならば相手をしてやろう……」


 球体は赤紫の光を纏った。

 ユウキは冷汗を背中から流す。


「あ~。国王陛下が、市街地で暴れる? 暴れん坊国王?」

「ダークマターの力を味わうが良い!」


 球体から紫色の光線が放たれた。

 光線は地面を削りながら、ユウキに近づいていく。


「わあ! 暴れん坊どころじゃない!」


 ユウキは左側に飛んで、光線を回避した。

 着弾した地面を走りながら見つめる。

 物質が完全な消滅をしている。公道の下の土まで消えている。


「こんな所で戦う訳にはいかないか……」


 夜になっているとはいえ、まだ通行人が大勢いる。

 それに建物に当たったら、被害が甚大だ。


「ヘイ、王様! レースと行こうじゃないか! 先にコスモ家についた方が勝ちで!」


 ユウキは青い光を纏いながら、走る速度を上げた。

 国王を追い抜いて、市街地の外へ向かう。


「市民への被害を避けるためか。良いだろう、乗ってやる」


 国王も速度を上げて、ユウキに追いつく。

 直ぐに前方に出て、彼に振り向いた。


「へえ! その球体、前後あるんだ! 知らなかった!」

「分からぬな。お前にとってコスモ家も、この世界の住民も外の世界の者だろ?」


 球体の左右から黒い靄が発生する。

 靄はアークを描きながら、地面に着弾。

 反物質の力で、物質を消滅させる。


「なぜ守ろうとする? 他の世界の人間をなぜ助ける?」

「さあね? 地獄で考えな!」


 ユウキは超能力を使って、分身を四体作った。

 分身が球体の上下左右四方向へ移動する。


「お前の価値観じゃ、転生しても理解できないかもな!」


 分身が四方から時間差で斬りかかる。

 最後は本体が中央に向けて、突き攻撃を行った。

 機械からスパークが飛ぶ、装甲が剥がれる。


「もっと頑丈に作るんだったな」

「おのれ! おのれ! おのれ! この忌々しい異界人がぁ!」


 装置は漏電に加えて、赤い稲妻も纏い始めた。

 機械の音も大きくなり、放熱で周囲が暑くなる。


「もうこんな機械などいらぬ! 私自ら宇宙の概念化してくれるわ!」

「そうはさせるか! ブーストファイアー!」


 ユウキはありったけのエネルギーを、剣に込めて。

 再び球体に体当たりで貫通した。

 機械は地面に落下して、摩擦を受けながら止まった。


「残念だったな! これで全部終わりだ!」

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