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ロストプロローグ

作風を伝えるため、詰め込み気味で書いています。

今回は完全に趣味全開で、書きたいものを書いています。

ちなみに挿絵はAIイラストを加工したものです。

「うわぁ~。やっぱり都会のお祭りは規模が違いますね!」


 銀髪ロングの髪の毛を風でなびかせながら、はしゃぐ少女。

 白いドレスに身を包みながら、赤いカチューシャを付けて。

 青い瞳で真っすぐとある男性を見つめる。


「あまりはしゃぐな。田舎者だと思われる」


 上質な赤い服を着こんだ、黒髪の青年が注意を促す。

 赤い瞳に冷たさを宿し、少女、セイを睨む。


「実際田舎者じゃないですか。ゾア様」

「俺は貴様とは違う。何度もこの手のパーティに参加してきた」


 見下すような視線を向けながら、青年ゾアは前に進んだ。

 やれやれと両手を広げながら、セイも彼を追いかける。

 二人は婚約者同士だ。もっともそこには政治的な思惑があるが。


 セイの家は田舎を統治する下級貴族だ。規模もそこまで大きくない。

 最近は財政難に苦しめられている。

 その問題を解決するため、上級貴族との繋がりを持ちたかった。


 何とか媚びを売り続け、王族にも近いコスモ家の嫡子と婚約出来た。

 二人の婚約に、互いの意志は関係なかった。

 セイは十五歳と言う歳で、婚約者を決められたのだ。


「屋台とか見ていきます?」

「お前の好きにしろ。俺は興味がない。屋台にもお前にもな」


 セイの婚約者、ゾア・コスモは一言で言えば冷たい人だ。

 いつもセイを邪険に扱い、見下した態度で接する。

 他に好きな人が居る訳でもない。それでも彼はセイを嫌っている。


 彼女はそんな態度も気にせず、ゾアを懇親的に支えた。

 まだ婚約したばかりで、彼の従者からも舐められている。

 田舎者が媚びで、主と婚約を交わしたと。


 一々否定する材料もないので、セイは気にしていない。

 理解されるのに、時間が必要なのだと思っていた。

 自分を一人手で育ててくれた父に恩返しをするため。彼女は今の立場を弁えている。


「俺は王族と挨拶に居る。田舎娘が居ると邪魔で仕方ない」

「はぁ~い。じゃあ私は邪魔にならない様、屋台で楽しんできま~す」

「それと、その軽い口調を止めろ。貴族としていかがなものか」


 セイは屋台に向かい、タイ焼きを購入した。

 遊ぶフリをして、ゾアの事をこっそりと追いかける。

 彼は権力に執着している。自分との婚約は、彼にとってなんのプラスにならない。


 ここ最近、彼は王宮の者と何度か会っていた。

 その内容は薄々察しがついている。

 それでも確信が欲しくて、彼女はこっそりゾアの後を付けた。


 今日は王宮の庭まで、一般開放されている。

 国王の誕生祭だからだ。セイは庭に侵入し、ゾアを見つける。

 彼は王族の従者と、コソコソ会話をしている。


「それで、以前のお話の件はお引き受けしてもらいますか?」


 従者がヒソヒソ声で、ゾアに告げる。

 いけないと思いつつも、セイは隠れて聞き耳を立てる。


「貴方に損はありません。レイ様はお部屋に閉じこもっている身ですから」

「俺は権力を手に出来て、お前らは後継者が出来て安寧なわけか……」


 セイは溜息を吐きそうになるのを、グッと堪えた。

 レイとはこの国の王族少女の名前だ。

 部屋に閉じこもって、祭りの日以外外に出ないらしいが。


 彼女と婚約を結び、自分のものは破棄するつもりらしい。

 ゾアがコソコソとそんな計画を立てていたと、セイは薄々理解していた。

 権力に貪欲な彼が、このまま自分と結婚するはずがないと。


 ――分かっていた。そこに愛がない事は……。

 それでももしかしてを信じて、セイはゾアを愛そうとした。


「あの娘には、大金を授ければ良いでしょう? どうせお金目当てなのですし」


 従者はセイの事をなんとも思っていないようだ。


「我が主、ノバ様も後押ししております。どうかお考えを」

「確かに悪くない提案だ。だが忘れるなよ」


 従者の襟をつかみ、グッと顔を引き寄せるゾア。


「俺は別に権力が欲しいわけじゃない。俺の最終目的は……」


 彼がそこまで言いかけた所で、庭の外が騒がしくなった。

 次の瞬間、街方から爆発が上がる。

 何事かと周囲が目線を一致させると。空に赤黒い雲がかかっていた。


 雲は一瞬で太陽を隠すと、赤紫の光を地面に落下させる。

 光は地面に着弾すると、見たこともない黒い怪物に変化した。

 次から次へと怪物が降り注ぎ、周囲を攻撃していく。


「総員急げ! 王都騎士団の名にかけてあの怪物達を倒すのだ!」


 現在ここには貴族達が集まっている。

 防衛に失敗すれば、王都騎士団の名前に傷がつくだろう。

 貴族の衛兵と協力しながら、騎士団は怪物に向かって行く。


 だが怪物が放つ赤い光線に、次々と衛兵はやられていく。

 数だけでなく、一体一体が衛兵の強さを上回っていた。

 怪物達はあっという間に、貴族たちを包囲する。


「よし! 全員そこまでじゃ!」


 何者かの声と共に、怪物たちは止まった。

 赤黒い雲の中から、奇妙な物体が振って来る。

 魔法を使った道具なのだろうか? 鉄の塊が宙を浮いていた。


 鉄の塊の上には、紫の鎧の様なもので包まれた謎の人物が座っている。

 彼は王宮の一室の前に立ち止まると、鉄の塊から飛び移った。


「レイ王女。そこに居るのでしょ? この状況が見えていますか?」


 謎の人物が手から紫の光線を放つ。

 光線は城壁に当たると、一瞬で粉々にした。


「私はDr・ネガリアン! 貴方様を迎えに参りました」


 ネガリアンと名乗った人物は、部屋に閉じこもった少女と会話しているようだ。

 レイ王女。王族ではあるが、王位継承権はない。

 噂によると、不思議な力を持っているとされている。


「勿論拒否権はありません。同行していただかないと……」


 黒い怪物が少しだけ動いた。


「この場に居る全員の安全は、保証しかねます」


 脅し文句が効いたのか、窓が開いて一人の少女が飛び出した。

 赤い髪の毛をロングにした、白いドレス姿の少女だ。

 儚げな表情で庭を見下ろしながら、体を震わせている。


「貴方が同行してくれれば。この場の全員に危害は加えませ……」


 ネガリアンが言い終える前に、一体の怪物が悲鳴を上げた。

 セイが目線を向けると、怪物は体に切り傷が出来ている。

 なにが起きたのか分からないセイの前に、青い風が吹いた。


 何かが転がる様な音と共に、風は怪物に体当たりしていく。

 次々と庭を制圧した怪物を倒していき、風は城の屋上へ飛んでいく。

 風の正体が、青い光の消滅と共に現れた。


挿絵(By みてみん)


「よう、ネガリアン! 相変らずゲスな商売しているな」

「ぬぉ! 冬木ユウキ! おのれ! こんなところまで追ってきおって!」

「異世界でも地獄にでも、追いかけてやるぜ!」


 屋上に立つ謎の少年。亜麻色の髪の毛に、青い服装。

 青色の服に赤い靴を履いた彼は、右手を前に突き出した。

 すると彼の体が緑色に光始める。


 それとほぼ同時に、崩れた城の柱が同じ光を纏った。

 まるで持ち上げられているかのように、柱は宙に浮かぶ。

 謎の少年が腕を振ると、柱はネガリアンに向かって飛んでいった。


 柱はネガリアンに直撃。

 彼を引き飛ばして、彼方まで飛んでいった。


「覚えておれ~!」


 ネガリアン捨て台詞を吐きながら、青空の星となった。

 

「ホームラン! 出来の悪いストッパーだったけど!」


 セイには理解できない言葉を放ちながら、少年は指を鳴らした。

 その背後から衛兵が駆け寄って来る。

 なぜか武器を構えて、少年を囲む。


「見つけたぞ! 逃亡者!」

「あらら? 王女様助けたら、免罪になると思ったけど。都合よくいかないのね……」


 ユウキと呼ばれた少年は、両手を広げた。

 手に剣は握られているが、抵抗する素振りを見せない。


「無礼者共! そのお方は、私を助けてくれたのですよ!」


 反対側から怒声が聞こえてきた。

 先ほどまで儚げな表情をしていたレイ王女が。

 凛々しい顔になり、衛兵を叱りつける。


「し、しかし王女! この者は素性が分からぬ、怪しいもので……」

「彼の身柄は私が預かります! 貴方達は控えなさい!」


 騎士達は命令を受けて、渋々武器を下した。

 ユウキは両手を広げたと思うと、青い光となってその場から消える。

 彼はテレポートでレイ王女の傍まで、転移していた。


「丁重に扱ってくださいよ。王女様」

「ええ。貴方には聞きたい事が山ほどあります」


 ユウキは王宮のバルコニーから、庭を見つめた。

 彼の視線は真っすぐある人物に。

 それはセイの婚約者。ゾアに向けられたものだ。


 ゾアを見たユウキは、フッと笑いながら両手を上げた。

 そのままレイ王女の指示に従い、王宮に入っていく。


「う~ん、一瞬過ぎてなにがなんだか分からない!」


 人より前向きなのが取り柄のセイは、直ぐに気持ちを切り替えていた。

 ゾアが心配になり、彼にもとへと駆け寄る。


「ゾア様。大丈夫ですか? 怪我とかしてませんか?」

「あ、ああ……。大丈夫だ」


 これは物語の始まり。セイの物語はここから始まる。

 それは壮大な婚約破棄と世界の運命を決める事件へと発展してく。

いかにもバトルがありそうな雰囲気ですが。

実はバトルシーンはここと終盤に一回のみです。

だってこれ恋愛小説だもん。

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