7話 分散と包囲
2階に上がると、すぐさまリンノとローンが魔法を放つ。
「掌炎放!」
「小斬撃!」
リンノが掌から炎を、ローンが斬撃を出す。
「何!?」
「六角盾!」
女性が驚いた声を上げるが、横にいた男性が冷静に六角形の魔力の盾で防ぎ、どちらの攻撃も届くことはなかった。
パリン!
「窓から逃げたぞ!」
「追うよ!」
俺たちも窓から飛び降りる。魔力で体を強化しているので無傷だ。
「っ!?泥の柔軟球っ!」
泥のクッションを出すと、魔法の矢が刺さった。
「ありゃ?バレた?」
少し離れた建物の上に女の子が乗っている。
「毒…酸か?」
「まさか、他のチームとも組んでたってこと?」
「いや、近づいてる。6人全員が近くに来てる。これは…」
「転移か」
「あぁ」
誰かが味方を転移させて6人を近くに集めたのだろう。
「気づいてるみたいだね。形勢逆転だよ」
「…いや敵の位置は目の前に2人、後ろの家を挟んで後ろに1人、少し離れた位置の建物にさっきの酸の矢の狙撃手、それ以外にそこそこ離れたところに2人。一見そこまで離れてないように見えるけど家をいくつも挟んでるから家を壊して突っ切らない限りそこそこ時間がかかる位置にいる」
「…それがどうしたの?」
目の前の女性が冷や汗を流す。
「たぶん後ろにいる人は射撃系の魔法でこの家ごと貫いて奇襲するつもりだったのかな?狙撃手がわざわざ姿を見せた上に移動していないあたり近接もできるタイプ。男の人の魔術はさっきの魔法からたぶん結界魔術。女の人はわからないけど、離れてる2人は固まって動いてるし、狙撃手が直線上に立ってる。近接ができるならこっちに来ればいいのに。その2人に近づいてほしくないのかなぁ?」
「っ…」
「反応した。当たりかな。おかしいとは思ったんだよね。戦闘が始まったのをすぐに察知して転移を発動できるかな?って。離れてる2人、攻撃ができない転移魔術師と連絡係の魔術師だろ」
「…だとしたら…何?」
「そもそも俺たちの言葉を律儀に聞く必要もないのに。狙撃は位置がバレてるなら防ぐのも簡単だし2人のところに行かせないように位置取ってて動かないから攻撃しないのはまだわかるとして、結界魔術は攻撃得意じゃないし、攻撃してこないあたり貴女も攻撃向きの魔法じゃないんじゃない?後ろの人も奇襲がバレたから撃ってこないのかな?そうだったら、そこまで威力が高い攻撃を撃てる訳じゃないっぽいね」
「っ!」
この女の人、わかりやすいな。正直女の人の魔術や後ろの人の魔術に関しては結構適当に言ったんだけど、合ってるみたいだ。
これが演技なら俺たちは既に詰んでいるので演技じゃない可能性を信じよう。
「そうとわかれば全員捕まえて一挙30得点だ!さっき決めた役割でやろう!」
「「「了解!」」」
「泥の弾丸!」
「掌炎放!」
「六角盾!」
「酸の矢!」
泥の球と炎は魔力の盾に防がれ、酸の矢が飛んでくる。
「氷の花弁!」
酸の矢は氷の花びらに撃ち落とされる。
「泥の柔軟球っ!」
後ろから建物を貫通して飛んできた水の弾を防ぐ。
「巨人の一太刀!」
ローンが後ろにある建物を切り崩すと、建物が崩落し、後ろ側に倒れる。
ズドン、と大きな音がする。
「ちょ、ローン!殺す気かよ!?」
「ごめん、ちょっとやりすぎた」
「まだ魔力はあるし、死んでなさそうだけど」
「じゃあ私が捕まえに行ってくる」
「わかった」
『犯罪者サイドが1人無力化されたぞ。引き続き頑張れ』
ここでアナウンスが入る。
「クノか?」
「いや、今向かったばっかりだろ。早すぎる。他の誰かがやったんだ」
「僕たちも頑張ろう!小斬撃!」
「六角盾」
防がれる。
「防御が硬いな」
「女の人の方の魔術もまだわからない。防御に徹せられたら中々崩すのは難しいぞ」
「なら近接戦闘だ。炎の闘拳!」
「防護結界」
半球状の結界が張られ、防がれる。
「あぁ、もう!全部バレてんだし私が全員倒せばいいじゃん。トイン、足場出して」
「はいはい。六角盾」
魔力の盾が空中にいくつも展開される。
「酸のナイフ!」
酸の敵がナイフを両手に出す。
そして敵が魔力の盾を足場にして飛び回る。
「泥の弾丸!」
「破炎豪!」
「小斬撃!」
全て躱される。
「動き回って当てずらいし、不規則だから予測もできない。厄介だな…泥の柔軟球!」
急に敵がこちらに飛んでくる。敵のナイフが泥に突き刺さった。
「うわぁ、凄い反応。こっちの防御も中々だぁ」
「ローン、ここから離れてる2人の確保に向かってくれ。向こうはバリアで2人には攻撃がほとんど通らないし、飛び回ってる方も中々攻撃が当たらない。このまま時間稼ぎに徹せられたら何もできずに終わる」
「わかった」
「させないよ!」
「泥の柔軟球!」
酸の敵の進行方向に泥を出す。
「もうそれは見たよ!」
酸の敵は空中で魔力の盾を使い、進行方向を変えて回り込む。
「はい1人目ぇ!」
「させないっ!」
泥で再度阻む。ジオに鍛えられていたため、急な方向転換にも対応できた。
「あらら」
「小斬撃!」
そのままローンが建物に穴を空けて強行突破して直行する。
「行かれたっ!」
「トイン、どうする?」
「そもそも、ビビが前に出てこなかったら…」
「じゃあアンタたちで4人を止められた?」
「っ…それは…」
「仕方ない。この2人を私が倒せばいいだけ」
『犯罪者サイド、2人目の脱落者が出た。犯罪者サイド大丈夫か?』
ビビ(酸の人)の戦闘スタイルはクーガー(ノーマルトリガー)みたいな感じです
ビビ「マナシールド殺法!」
トイン「・・・・・・・・・・・・(イラッ)」
ここ好きなんですよね。グラス○ッパー殺法!