6話 作戦と開戦
話しかけてきたのは、最後まで残っていたチームの男の子だ。同い年くらいだろうか。
「僕たちもどこかのチームと協力したいと話し合っていたんです。僕はローン・イムズと言います」
「俺はナイト・トクルだ。よろしく」
「私はリング・ユーアです」
「俺はタリス・ジレン」
「リンノ・イアンだ。よろしく」
「私はクノ・バーワールよ」
自己紹介を終えたところで、早速話し合いを始める。
「得点の配分はどうするの?一緒にすることはできないでしょ?」
「クリスタルは交互に運び、敵の制圧は早い者勝ちでいいのでは?お互いに足を引っ張り合うようなことは流石にしませんよね?」
クノの問いに答えたのはローンだ。ローンがチームのリーダーのようになっているのだろうか。
「敬語は止めてくれ。できるだけ対等な立場で話したいんだ」
「わかった。じゃあ敬語はなしで」
リンノは幼い頃から敬語で接し続けられたのだろう。特級貴族はほんの一握りだ。彼に対等、若しくは上から接することのできる人間に、家族以外会ったことがないのかもしれない。
「それでいいんじゃないか?」
「うん。問題ない」
「俺も異論はないぞ」
「じゃあ、出発しよう。取り敢えず近くにあるクリスタルから回収していこう」
クリスタルの位置は魔力探知でだいたい把握している。
「クリスタルの位置はわかるの?」
「まぁだいたい」
「え!?わかるの?凄いね」
ローンが驚いた表情で言う。
「数は…結構多い。300くらいあるんじゃないかな。殆どが屋内にあるけど、屋外にも設置されてるかな」
「数は元々が300、今は減って287だ」
ジオが教えてくれる。
「よし、行こう!」
「あったよ。クリスタル」
リングが早速1つ目を見つける。
「じゃあ、リングが持っていこうか」
「1人だと危険じゃない?リーダー」
「リーダーって呼ぶなよ…まぁ、念のためもう1人ついていった方がいいか」
「じゃあ俺が行くよ。信用してないって訳じゃないが、顔馴染みの方が安心できるだろ。それにリングの戦い方とかも知ってるから連携が取りやすい」
そう言ったのはナイトだ。
「じゃあ、ナイトとリングがクリスタルを持っていって、俺たちは敵を探そう。4人になった状況でさらにクリスタル運びで2人抜けたら協力した意味がなくなる」
「そうだね。タリスには敵の位置も分かってるの?」
「受験者の位置はわかるけど、それが敵か味方かは…」
「まだまだだな。もっと鍛えれば、魔力の質などから個人を特定できるし、常に魔力探知で追っておけばわかるだろうに」
煩いジオは無視だ。
「ただ、少なくとも1人で動いてるのは1人だけっぽい」
「あぁ、出発地点にいたやつか」
「あと2人で動いてるのが4組。たぶん1組はうちのチームの単独行動された人たち、あとはたぶん敵が2チームで組んで2人3組にわかれたんじゃないかな?」
「そんなことするメリットってあるの?」
「基本的に別行動で分散することで得点を稼ぎ、どこかのチームが戦い始めたらフォローする、とかかな」
「いや、結構離れてるからそんな風には見えないけど」
「じゃあ、その2人のところを狙うか?」
「うん。そうしよう」
「とりあえず、みんなの魔法とか戦闘スタイルとか知っておかないと、連携取れないんじゃない?私の魔術は氷華魔術。氷の蔦で捕縛したり氷の花びらで攻撃したりできる」
「俺は火炎魔術だ。炎を出したり、纏ったりできる」
「僕は斬撃魔術。斬撃を飛ばすくらいしかできないけど、攻撃は自信あるよ!」
「俺は泥魔術。目眩ましと防御、あとは足元を泥に変えて足が沈めてから解除することで埋めて拘束できる」
「俺は泥の拘束食らったがかなり抜けにくかった。あれに掛かれば魔法士でも数秒は必ずその場に固定できると思うぞ」
「そんなに凄いんですか?」
「食らってみる?」
「タリス、時間の無駄。ほら行くよ」
そうして、一番近い2人組のところへ俺たちは向かった。
「この家の中の2階だ。たぶんクリスタル破壊してる」
「突入したら、まずは俺とローンが攻撃、タリスとクノが援護と捕縛でいいな」
「ああ」
「うん」
「準備万端!」
「行くぞ!」
俺たちは家の中に突入した。
見えるタリスとクノ以外にも人がいるのであんまり口出しせずに黙ってるジオさん、偉い。ジオさんにしては偉い。急に虚空に向かってタリスが話し始めたら怖いですからね。そういう気遣いは一応できます