4話 貴族と特権
「何らかの基準…?」
「あぁ、単純に試験官が判断している可能性もあるが、こんな大人数を一気に審査できるとは思えない」
「分担すればいいんじゃないのか?」
「それだと比較ができないだろう。人によって基準がズレたりする。きっちりマニュアルを作って点数制にしてる可能性もあるがな。それ以外だと、例えば300位が同率で8個だとすると、8個に達するまでにどれくらい時間がかかったか、或いは8個以上の保持時間とかだろうな」
「8個以上の保持時間?何で"以上"なんだ?8個超えたら合格だろ」
「あのなぁ、例えば10個持ってたとする。それを奪われ一旦0個になる。そしてそこから8個集める。そういった場合、8個のときの時間のみに限定してしまうと、10個持っていたときの時間がカウントされないだろう」
「でも、1000人の受験者の保持時間を計るなんて、それこそ無理じゃないか?」
「袋、渡されただろ?これも魔道具だ。時間系の魔術とかでできる可能性もある」
「なるほどね」
ドン!!
ジオと話していると、爆発音が響いた。
『何してんだ?もう二次試験は始まってるぞ。ほら、早く戦え。二次試験は会場内の10人の魔法士から10分逃げることだ』
「逃げるって…」
「先程の一次試験が敵を探し出す能力を試していたとしたら、二次試験は対応力を試すってところか。捕まるっていうのは捕縛用の魔道具を持っているのか、捕縛系の魔法か」
「魔力探知で分からないのか?」
「俺様は分かる。だが、自分の力でやりたいと言ったのはお前だろ」
「さっきめっちゃ手助けしてたじゃん」
「言っただろう?お前に協力するのは気分だと」
「まぁいいか…誰か来るな」
同じ受験者か、それとも魔法士か。
「雷の投げ槍!」
「泥の柔軟球!」
雷の槍を防御する。
「お、いい反応。地走雷!」
「破炎豪!」
地面を電気が走る。
すると、地面が爆発して防がれた。
「さっきはどうも」
そこには、俺が地面に埋めた炎の魔術師がいた。
「あれ?動けないんじゃ…」
「地面を爆破して脱出した。もともとロデーズはかなり持っていたので合格できた。なかなか硬い拘束だったから苦労したがな。抜けにくいように土質を弄ったのではないか?」
「何それ、面白そうな話してんじゃん!」
再度雷の槍が飛んでくる。
「無詠唱っ!」
「掌炎放!」
掌の炎で相殺した。
「ここは協力しよう。流石に現役の魔法士相手に1人では分が悪い」
「あぁ、分かった」
「あの拘束、魔法士でも脱出には時間がかかるはずだ。その間に逃げよう。俺が囮になる」
炎の魔術を使う人が小さい声で相手の魔法士に聞こえないように言った。
「掌炎放!」
正面に炎を放つ。
「雷の投げ槍!」
雷の槍で相殺される。
「破炎豪!」
地面が爆発して、土煙が舞う
「目眩まし?」
「炎の闘拳!」
「うおっ、雷の手袋」
炎を纏った拳を雷を纏った腕で受け止める。
「今だ!やれ!」
「泥の沼!」
「足が沈ん…」
「よし!逃げるぞ!炎の人!」
「分かった!」
「やっべ足埋められた」
足を埋めて、その場から離れる。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はリンノ・イアンだ。よろしくな」
「タリス・ジレンだ。よろしく」
「とりあえず建物の中に逃げ込もう。そこでできるだけ魔力を消して隠れるんだ」
「わかった」
近くの家に入る。
「イアン家って、特級貴族…だよな?」
俺が聞くと、リンノは苦笑いを浮かべた。
「そうだな。でも俺は平民とも普通に接したいんだ。貴族だからって特別扱いされたくない」
貴族が魔法士になるのは珍しいことではない。だが貴族は試験を受けずとも入団することができるし、特級貴族ともなれば、何もせずとも副隊長になれるほどの権力がある。
「昔から、特級貴族だからと他の貴族連中には敬われ、平民からは嫌な目で見られる。そういうのが嫌なんだ。俺は上に立つ者として、平民の苦労を知り、悩みを知り、あらゆる人に寄り添いたい。俺に与えられた権力は、そのためにあると思ってる。だからこうやって入団試験を受けてるし、たまに身分を隠して庶民の街に行ったりもしてるんだ」
「へぇ」
「その度に怒られるけどな」
リンノも貴族なりに苦労しているようだ。
「うっわ凄いね。地面がすごく硬くなってる。密度上げてるのかな」
「そんなもの、すぐ抜け出せるでしょ」
「いや、そうだけどさ。流石に試験で本気出したらダメでしょ。で、ヴロ、どうだった?」
「どうって何よ」
「タリスって少年は君の目線から見てどうだった?ってこと」
「抽象的すぎ。何が聞きたいのかはっきりしなさいよ」
「実力とか、特別な何かがないか、とかだよ」
「まぁ、アイツに鍛えられてるだけはあるわね。基本的なことは一定水準を超えてるわ。でもそれだけね。才能はまぁまぁだと思うけど、何でアイツを選んだのか、アタシにはさっぱりわからない。もっといいやついっぱいいたと思うわ」
「へぇ」
「誰かこっちに来るな」
リンノが言う。
「ああ。バレてなさそうだけど」
「さっきの電気の人だろうか」
「いや、あの人は違うよ。魔力探知でずっと追ってるけど、逆方向に行ってる」
「わかるのか。凄いな。俺の魔力探知では離れすぎてもうわからないぞ」
「まぁ、この会場全体を大まかに捉えるくらいはできるよ」
リンノと話していると、何かが飛んでくる。
貴族の階級としては
①王族 厳密には貴族じゃないけどまぁ。うん。
②特級貴族 魔法士として数々の功績を上げた名家
③上級貴族 かなり強い魔法士を排出する貴族
④中級貴族 平凡。全てが並み程度の貴族
⑤下級貴族 上の方に何とか地位を守ってもらってる
⑥平民 貴族じゃねえけど一応
特級貴族は実力主義なのでめっちゃ怖い家とめっちゃ優しい家にわかれる。平民相手に威張ってるやつはだいたい上級か中級。下級は虫の息。王族?変人の集まりですよ(逆によくそれで国が成り立ってるな)。平民には貴族の階級とか違いとかよくわからないので貴族全般嫌われてます