プロローグ
「君は『人を殺すこと』と『人を死に追いやること』どっちが簡単だと思う?」
「……?」
「……質問を変えよう。君は『人を殺すこと』と『人を生かすこと』どちらが簡単だと思う?」
「……」
「では……『人を生かさないこと』と『人を生かすこと』を選べるとしたら、どちらを選ぶ?」
「さっきから何を聞きたいんですか?」
「私は過去にこの選択を間違えた。そして、私の人生はそこで大きく狂ってしまった。君には恐らく『仮面』が見えているのだろう? 私もその1人だ」
「……『人を生かさないこと』を選んだんですか?」
彼は最初の質問にしか答えない。
「どちらを選んだか、どちらが過ちだったのかは、君が私を話を聞いてから自分で考えてみてくれ。この世界は善と悪、光と闇で満ちている、と良く思われる。だが、それは膨大な悪を僅かな光で誤魔化しているに過ぎない。君は、『運命』を信じるかい?」
「……僕は……運命は信じません」
「ふむ、今はそれで良いだろう。だが、いつか君が他人の『運命』を変える時がやって来る。その時に、『仮面』が見える君は先ほどのどちらを選ぶか、よく考えることだ。その為にも、私の話は必ず役に立つはずだ。君には、君の目から見た『世界』でなく、本当の『世界の姿』を知っておいてほしい。聞いてくれるか?」
「…………」
「じゃあ話すぞ。これは、私が周りの人の『運命』を左右することになった時の話だ」
世界が姿を見せる時。
君は絶望を味わうかも知れない。
だから。
その時までに、選択してくれ。
『生かす』か、『生かさない』か。