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女性冒険者を雇え!

「一つの壊れスキルを手に入れた。これで残り6つだ。」

「聞いてないんだけれど。」

「言ってないからな。でも、君たちは私の作戦に乗った。事後承諾済みだ。」

「開き直んな!悪びれろ!」

「で、バッグスさん。次は、どうやって手に入れんですか?」

 喚く利文を無視して、鎌之介は話を進める。


「まずは、場所。エスアル王国ベイラー領、シマル山の奥地にあるアカイ神殿。その隠し部屋の奥に厳重に保管されている。」

 バッグスは地図を指し示しながら語る。



「山、奥地、隠し部屋?大変そうだな。」

「そこがネックではない。神殿内部の地図がある。辿り着ければ一瞬で攻略可能だ。」

「えー、せっかくのダンジョンなのに…。面白いところ全部カットですか?」

「残念ながら、探索のワクワクはカットだ。というわけで、今回の目的は、隠し部屋の鍵を手に入れること。」


「鍵ですか?」

「鍵とは、閃盤岩(せんばんがん)と呼ばれる希少鉱石だ。このシマル山で採掘が可能だ。だが、ただの閃盤岩ではダメだ。ある特定の式の解の数値、特定の重さの鉱石が必要だ。」

「え?どいうこと?」

 

 利文が首を傾げたので、バッグスはホワイトボードに書き出す。



・隠し部屋の鍵は、特定(1)の場所で採掘した特定(2)の鉱石が必要。ただし、重さは特定の式(3)によって導出された特定(4)のものによる。


(1)シマル山

(2)閃盤岩

(3)日付などのパラメータを必要とする式

(4)上記式で導き出される答え。



「特定…。多すぎません?」

「それだけ、厳重に保管されているのさ。解法が分からなければ、辿り着くことは不可能だ。」

「誰がわかるんだよ。仕掛け作ったやつ以外、不可能だろ。まあ、それが狙いか。」

「ちなみに、式による重さの導出は済んでいる。あとは、条件に合う鉱石を見つけるだけなんだが…。」

「それがネックですと。」

バッグスは頷く。

「実は、このシマル山は男子禁制なんだ。そして、閃盤岩だが、とある神事に使われる洞窟にしかない。」

「神事って?」

「詳しくは知らないが、洞窟の中に地下水の溜まった場所があって、そこで裸体の女性が複数人で祈りを捧げるらしい。身を清めるとかが、理由らしいが…。」

「なるほど…。で、どうするんですか?僕たち山にさえ入れませんよ。」

「人形を使う。人形の姿を女性に変えて、忍び込む。」

「それって、裸の女性達と関わることあります?」

「確実にあるだろうな。」

「じゃあ、嫌です。」



「嫌?」

「覗きじゃないですか。嫌です。」

バッグスは、今まであまり否定してこなかった鎌之介の反応に驚いた。


「君、そんなに貞操が固いのか?世界の危機だ、多少のことには目を瞑れ。利文、鎌之介を説得しろ。」

「俺も嫌だ。」

「君も?なんでだよ!」

「それは、俺たちは初心だからだ。初心だから女性の裸なんてまともに見れない!」

「初心なことを堂々と語るな!君たちは、多感な時期だろ!この際だから、今回でその初心直せ!」

「違うんですよ!バッグスさん!僕たちは後天的な初心なんです。」 

「後天的な初心なんて存在しねえよ。」

「聞いてください!いいですか?僕と利文には、宮平という女子の親友がいるんです。以前、誤って彼女の下着姿を見てしまって…。それ以来、女性の性的なものを見ると嫌悪感を抱くようになってしまったんです。」 

「初心関係ないだろ!トラウマだろ!それ!君たちが嫌悪感を抱くようになったのは、罪悪感からだ!悪い事したから、自己嫌悪に陥ってるんだよ!初心ってことにして、誤魔化そうとするな!」

「そうさ!俺たちは悪い事をした!でも、今、また、同じ過ちを繰り返させようとしている人がいる!犯罪教唆!倫理観の欠如!いけないんだ!いけないんだー!」

「うるさい!黙れ!嫌なら別の方法を考えろ!」

 

 しばらく対案を考え、利文が発案する。

「適当な女性引っ掛けて、お願いすればよくね?」

「利文!いいね、それ!」

「初心なやつからは、絶対に出ないアイデアだ。」

バッグスは面倒くさそうに言った。





「冒険者?」

「ああ、端的にいえば、戦闘に関するなんでも屋だ。傭兵は戦争を生業とするが、冒険者は違う。鉱石の採取など、面倒事を報酬さえ払えばやってくれる。」

「つまり、バッグスは冒険者を雇えって言いたい訳?」

「後腐れなくできるからな。さぁ、冒険者ギルドへいくぞ。」 





エスアル王国ベイラー領ジョウシン

通称、冒険者の街


 冒険者ギルドは賑わっていた。

 鎌之介は、市役所の賑わいに似てると感じた。騒々しいと考えていたが、落ち着いた雰囲気だった。

 近くの椅子に座る男性が大あくびをしている。何か待たされているのだろうか。遠くのテーブルでは、複数人が何やら談笑している。


「ああやって、冒険者たちはギルドを介して情報交換をするのさ。」

 バッグスは、鎌之介が気になっている様子を見て教えてくれた。よく見ると、談笑している人々は武器を持っている。戦闘を生業とする冒険者だからだろう。


「よし、とりあえず適当なやつに声かけてみるか。」 

利文が息巻くと、バッグスが制止した。

「依頼をするには、手順がある受付に行って依頼書をもらってこい。」



受付嬢から依頼書をもらった。



「なんか、怪訝な表情で見られましたね。」

「遠隔操作だからな。私たちの気づかない怪しいところが、あってもおかしくない。」

「一度、俺たちはやらかしてるからな。あの買い物の惨劇は勘弁だ。」

「私も対人対応が心配だ。私の計画にはなかったからな。今後どうなるか未知数だ。」

「よし、書けた。」

鎌之介は、依頼書に依頼内容を記載した。




求む、女性冒険者!

依頼内容は簡単です!初心者歓迎!誰でもできます!

シマル山から閃盤岩(せんばんがん)の採掘をお願いします。

成功報酬は言い値で渡します。



「どう見ても文面が怪しくね?短いし。」

「え?端的に表現したつもりなんですけど?」

「これ見て誰が依頼を受けるんだよ。人に見られることを意識しろ!」

「そうだぞ、バッグスの言う通りだ。依頼書は掲示板へ貼っ付けるみたいだ。これじゃ、他の依頼に隠れて目立たない。これぐらいしろ!」

 利文は、女性、初心者、言い値に大きく赤丸をつけ強調させた。


「怪しさが増しただろうが!再三、思うが君たちの感性はおかしい!書き直せ!」

「え?もう掲示板に貼り付けましたよ。」

「剥がしてこい!」

 バッグスが怒鳴る。言われた通り、鎌之介が掲示板に剥がしに行くと。受付嬢がいた。



『あの、無記名で依頼されると困ります。』

 依頼書を剥がして差し出した。


「名前…、どうします?バッグスさん?」

「偽名を考えろ。色々詮索されると面倒だからな。」

「わかりました!じゃあ、リモートコントロールの“リモト“で。」

「単純だな。」

バッグスが呟く。

 

 鎌之介がリモトと記載すると、受付嬢が依頼書をじっくりと確認する。

『はい、リモト様、不備はありません。では、応接室でお待ち下さい。ご依頼を受けたいという冒険者がいますので…。』


 鎌之介たちは、応接室へ案内された。

「妙だな…。依頼の受理が早すぎる。それに、応接室での対応なんて聞いたことないぞ。」

バッグスが首を傾げる。

「僕の書いた内容が良かったんですよ。あ、もしかしたら、利文のアシストあれが決め手だたったのかな?」

 鎌之介が得意気に語る。

「それはない。」

バッグスは強く否定した。

「言い値で報酬を出すことが効いたんじゃないか?上客だと判断したんだよ。きっと。」

「だといいがな。」

バッグスは腑に落ちなさそうに返事をした。



 応接室には、もう依頼を引き受けた冒険者が来ていた。

 鎌之介の依頼通り女性だ。態度は大きく、こちらを睨んでいる。

 顔立ちは、凛々しく目鼻立ちはくっきりしている。何より目を引くのは、座っている椅子に立て掛けられたバトルアックス。彼女の華奢な体には、不相応なほど大きい。


「こいつ…。結構強いな…。」

バッグスが一目見て判断した。

「わかるのか?」

「大体。」

バッグスは、前のめりになりモニターを見ている。



『お前が、依頼者リモトか?』

女性冒険者は、依頼書を突きつけた。

『そうだが?あんたは?』

声を出すのは利文。人形の操作は、鎌之介が担当している。

『私は、Aランク冒険者。キアラ。』


「Aランク冒険者って、どのくらい凄いんですか?」

「階級は上から二番目だ。」

「マジですか!バッグスさん!そんな強い人は要らないりませんよ。この依頼。」

「なるほど、合点がいった。私たちが上客だから応接室を用意したんじゃない。こいつが私たちの依頼を引き受けたから、応接室に呼ばれたんだ。」

バッグスは不審そうな顔でキアラを見ている。


『この依頼内容たが、いくつか聞きたいことがある。なぜ、石が必要なんだ。』

 キアラが依頼書を指し示した。

 

利文がバッグスの指示を仰ぎ見て答えた。

『言えないな。依頼を受けてもいない奴に答えられない。』


それを聞いたキアラは、依頼書に署名した。

『これで依頼を受けた。さぁ、目的を教えろ。』


バッグスは理由をでっちあげ、利文に答えさせた。

『とある特定の量が欲しい。アクセサリを作りたいのさ。』

『なるほど。鉱床は特別な場所にあるぞ。』

『だから、冒険者を雇うんだろ。』

『その通りだが…。』

キアラの尋問するような態度に利文が我慢できなくなり発言した。


『お前、態度悪いな、何がそんなに気に食わないんだ?』

『気を悪くしないでくれ、今ギルドはとある問題を抱えていてね。』

『問題?』

『複数の女性冒険者を襲った殺人事件があったんだ。だから、ギルドは女性冒険者のみの依頼を警戒してるのさ。』

『へー、大変だな。』

『殺された女性たちは、シマル山で殺された。シマル山は男子禁制だからね。女性冒険者が依頼で出向くことは少なくない。だから、シマル山の依頼にも警戒している。』

『うん…?』

『そんな状況下で、見知らぬヤツが、火中現場で行う好条件の変な依頼を出した。わかるか?お前さ…、怪しすぎるんだよな。何か事件について知ってるな?』

キアラは、バトルアックスの刃をこちらに向けた。



「バッグスさん?何ですか!そんな事件あるんですか?」

鎌之介は、焦って聞く。

「知らね。初めて聞いた。」

「知っとけよ!かなり重要な事だろうが!!」

利文のツッコミも虚しく、鎌之介たちは疑いの刃を向けられた。


〈この世界の真実〉

戦闘を生業とするなんでも屋を冒険者と呼ぶ。

冒険者は、報酬次第で依頼を受ける。

そして、総じて冒険者ギルドに属する。



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