スキルのチュートリアル
"炎を出すスキル"
"光を出すスキル"
"氷を出すスキル"
スキルにはざっくりとした説明書きが書いてあった。
「このあたりは、ベタだね。異能力バトル物でよくみるやつだ。」
涼之介がスキルを触る。すると、涼之介の体内にすっと入っていった。
「固形化されたスキルに触れ、その力を欲しいと願えばスキルの移植が完了する。これでお前は炎のスキルが使えるようになった。」
「移植って言うから、複雑なものを想定していたんですけど意外と簡単なんですね。あ、炎が出た。」
涼之介の手の上に炎がでてきた。
「ベルトのコントローラを使えば、君たちのスキルが人形に反映される。」
涼之介がベルトを着けるて、念じると人形から炎がでた。
「おー、すごい。すごい。これでスキルの遠隔操作が可能になるわけですね。」
涼之介は感動した。
「しかし、よくこんなに集めたな。全部元は人のスキルだったのか?」
利文は眉間にシワを寄せる。
「私は、スキルを探求する学問を修めたスキル学者。この程度の数のサンプルを集めるくらい容易なことだ。」
「あー、確かこの場所をラボって呼んでましたもんね。研究者だったんですか。」
「そうだ。スキルについて私より詳しい人間は中々いないだろう。」
「んじゃ、スキル学者さんに一つ質問。」
利文が手を挙げる。
「なんだ?」
「さっき、異世界人は強力なスキルを持っているから召喚されたと言ってたよな。でも、即戦力を求めるなら、わざわざ、異世界召喚なんかせずに強力なスキルを集めればいいんじゃないか?お前のようにな。」
「強力なスキルがあったとして、それが簡単に使いこなせるかどうかは別の話だな。たとえ強力なスキルを移植しても、それが即戦力になるかは甚だ疑問だな。」
「それは俺たちだって同じだろ。異世界人にスキルを使った戦闘なんてできないぞ。即戦力にならねぇ。」
「それは、私たちにスキルの移植に慎重にならざる得ない事情があるからだ。この世界の人間はスキルを一つしか持てないんだよ。」
「一つしか持てない?」
「以前、持っていたスキルが使えなくなる。上書きされてしまうんだ。そして、何より最大の問題は、スキルの練度だ。通常、生まれ持ったスキルは、訓練などで使えば使うほど強力になっていく。一方で、移植したスキルは全然成長しない。全然強くならないから、使いこなすことが難しいんだ。」
「だから、移植に慎重にならざる得ないと。」
利文とバッグスが問答をしていると、涼之介が二人を呼んだ。
「ねぇ、やっぱりダメだよ。五回ぐらい魔物に挑んだけれど、全然スキルを使う暇なかったよ。カンテラの灯りも消えて、また見えなくなったし。」
「バカ!鎌之介、勝手にやるなよ。それに失敗するに決まってるだろうが。というか鎌之介、聞いてなかったのか?」
「え?何を?」
「なんでもバッグスは言うには、スキルは一つしか持てないらしいぞ。前に持っていたスキルが上書きされるんだと。」
「ええっ?じゃあ、僕が持っていたはずの超強力なスキルがもう使えなくなったってこと!!もったいねー!まだ何のスキルかもわかってないのに!!」
涼之介がうつむき肩を落として喚いた。
「安心しろ。そのルールは、この世界の人間にしか適用されない。」
バッグスが手で涼之介の顔を上げた。
「私の度重なる人体実けぇ…、調査の成果によりとある事実が判明したんだ。」
「とある事実!!」
涼之介は希望に満ちた声をあげた。
「おい、お前、今、人体実験って言いかけなかったか?もしかしてマッドな人?お前?」
利文を無視して、バッグスは続ける。
「君たち異世界人は、複数のスキルを持つことができる特異性があるんだ。」
「そんな特異性が…。特異性?何か前にも言ってましたよね。遠隔操作するために必要な特異性があるって。もしかして、、。」
「あー気づいたか。お前たちは、遠隔操作のために無意識に複数のスキルを使っていたんだ。」
「え?いつ僕たち、複数のスキルを手に入れたんですか?」
「それはだな。召喚直後、君たちが気絶している間だ。私が移植してやった。」
「やった!じゃねーよ!何勝手にやってんだよ!もし、体に異常をきたしたらどうするつもりだったんだったんだ。てめぇ!」
利文がバッグスの胸ぐらを掴む。
「何ともなかったじゃないか。」
バッグスは悪びれもしなかった。
「結果論だろうが!」
「事後承諾。私たちの学会では、常識的な方法だ。リモート勇者作戦に賛同した時点で、承諾したものとみなす。」
「なんだそのイかれた学会は!やめちまえ!」
「僕さ、バッグスさんが何を考えているのか、全然わからなくなりました…。」
「いい関係じゃないか。互いに理解できない。理解できそうなところは己の理で考えて解釈する。」
バッグスは、前にも言ったようなことをまたつぶやいた。
「さて、くだらない口論をしても事態は何も解決しない。さあ、知恵を絞れ!鎌滝涼之介!増上利文!」
「お·ま·え·も·か·ん·が·え·ろ!」
利文が突っ込む。
「私は、人形を操作することができない。君たちがやるしかないんだ。好きだろ?ゲームの攻略。」
「ゲームではないですよ。これ。はー、仕方ない考えますか。」
涼之介はため息をつきながらも、打開策を考える。
「せっかく、スキルを手に入れても魔物の攻撃は一瞬だ。使う暇なんてない。だから、こちらからできることは、人形を転移するときに仕掛けるしかないんだ。さっき姿勢を変えて転移させたみたいにね。…。スキルを使って、人形を火だるまにして送りつけるか?」
「いや、ダメだ。ただそれだと、相手が人形に触れない限りダメージを与えられないよな。それよりか、爆弾のようなスキルはないか?転移した瞬間に坑道を爆破させるとか。どうせ、攻撃の狙いなんてつけられないんだ。点でダメなら面でってやつよ。」
「う〜ん、相手の攻撃の正体がわからないからな、なんともいえないよな。その方法で確実に殺せなかったら、坑道内が滅茶苦茶になる。そしたら、余計スキル回収がし辛くなるから、やるとしても最終手段かな。」
「そうか、まずは相手が何の攻撃をするか。正体を掴むことが先決か。じゃあ、何とかして生きながらえる方法を考えるしかないか…。相手より速く動ければいいんだが…。あっ!必殺技!あのずばやく周りを斬りつけるやつ!」
「あ!忘れてた。あったね、それ!忘れてた。バカだね、僕たち。必殺技を発動した瞬間に転移させてみるか!」
二人はさっそく実行した。
「よし、涼之介!転移した瞬間に連打だ。」
「OK 任せろ。」
人形を転移させる。
「いけ!鎌滝!涼之介!鎌之介!連打!連打!連打!連打!!連打!連打連打連打!」
利文の声に合わせて涼之介はボタンを連打する。
すると、人形はすぐに戻ってくることはなかった。
そして、明らかに今までと異なる手応えが帰ってきた。
ドギャーンという聞いたことのない音が何度も聞こえてきたのである。
涼之介は相手の攻撃による音だと推測した。
どうやら、相手は人形に何度も攻撃しているらしい。
そして、ついに攻撃があったようで壊れた人形が戻ってきた。
「思いの外うまくいったな。そして、今の攻撃の間に、次やることを思いつた。」
利文はそう言うと、一つのスキルを持ってきた。
"光を放つスキル"
「これで、辺りを照らしてやつの正体を暴く!」
今度は人形を発光させ挑んだ。
モニターには鮮明に坑道の映像が映っていた。
これで、ようやく敵の正体がわかると涼之介は期待したが、さっきとは様子が変わっていた。
魔物が攻撃しなくなったのである。
不思議に思った涼之介がボタンの連打を止めた瞬間、一瞬なにか影が見え、斬撃が飛んできた。
そして、映像が見えなくなり、遅れて壊れた人形が戻ってきた。
「攻撃しなくなったね。こちらのこと警戒しているのかな。あと頭を優先して狙った?意図的に頭を残した時の、思惑に気づいたのかな?」
「何にしても、攻撃の正体が掴めたな。斬撃は予想していたが、まさか、瞬間移動もしてくるとは。空間を切断するスキルじゃないのか?聞いてたことと違うぞバッグス!」
涼之介と利文はバッグスの方を振り返る。
「壊れスキルの詳細について教えよう。いいか?このスキルの本質は、空間に異次元の穴を作り出すことだ。異次元の穴は、近くのものを吸い込んでしまう。そして、穴に吸い込まれた物は、異次元から抜け出すことができない。つまり、この世界から完全に消滅する。スキルの保持者を除いてな。異次元の先で、また穴を作ればこの世界に戻ってこられる。これが、やつの見せた瞬間移動の原理だ。」
「やっぱり、知ってやがったか。なんで、黙っていた?」
「君たちが聞かなかったからだ。」
「その言い訳やめろ!どうせ、まだ何か隠してるだろ。あのスキルについて!」
「何かとはなんだ?」
「何かっていうと…。えーっと…、あれだよ、あれ、えーっ…弱点とか?」
「弱点なんてない。」
「そうだよな…。世界を滅ぼす力だもんな。ないかー。」
「弱点はないが、消滅させられないものがある。」
「弱点じゃねーか!」
「違う。スキル生成者の遊び心だ!」
「何が違うんだよ!」
「弱点は意図してないものだが、遊び心は違う。遊び心は、スキル生成者が、後世に悪用された時などに備えて、意図的に施した対抗策だ!」
バッグスは、語気を強めて反論した。遊び心にこだわりがあるらしい。
「わかりました。とりあえず、何が消滅できないんですか?」
涼之介は話を元に戻した。
「これだ。」
バッグスは服屋で買った服を取り出した。
「これは、ある特定の地方で栽培された綿花を原材料として作られた服だ。やつのスキルは、その綿花で作られた衣料品には効かない。」
「あー!だから、念入りにを服を選んだんですね。」
「まあ、いろいろ他にも準備をしていたがな。」
バッグスはタオルなども取り出した。
「よし、着せるか。」
利文と涼之介は、人形に服を着せた。
「じゃあ、もう一回いくか!」
二人は気合を入れ直した。
「待て!」
バッグスが二人を止める。
「私がなぜ、君たちに遊び心を教えなかったかわかるか?それは意味なく突っ込んで、貴重なチャンスを不意にすると思ったからだ。」
「僕らは全然信用されてないですね。まぁ、実際に考えなしに突っ込みまくりましたけど…。」
「だから、知恵を絞れといったんだ。君たちが無茶苦茶やった結果、もうやつは、完全に私たちを警戒している。この状況で、スキルが効かない相手が現れたらやつはどうする?いや、もしかしたら、キルの遊び心を知っているかもしれない。」
バッグスは警告した。
「いいか?何にせよ次が最後のチャンスだと思え。確実に次で仕留めろ!」
〈この世界の真実〉
異世界人は複数のスキルを所持できる。
この事実は、あまり知られていない。