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見えない魔物

リモート勇者計画が始まった。しかし、始まった瞬間に遠隔操作用の人形が壊れてしまった。



「は? いつ攻撃を受けたんだ?」

利文は驚いた。


「魔物のテリトリーに入った瞬間だ。おそらく1秒もかからないうちにやられた。」

バッグスは落ち着いて答えた。



「どうします?人形壊れちゃいましたけど?」

人形の体の半分は完全に消滅していた。


「鎌滝涼之介、以前人形の姿を変えた時と同じようにしろ。」

涼之介はバッグスに言われた通りに、またあのヌードモデルの男性を思い浮かべ、人形に触れた。すると、人形は元の姿に修復されたのだった。


「人形の修復はすぐに可能だ。さあ、リトライだ。」

また、人形を坑道へ転移させた。

だが、結果は同じ。

一瞬のうちに、ズタズタにされた人形が戻ってくるだけだった。

四、五回繰り返すも状況は好転しなかった。



「無理だろ。モニターずっと真っ暗じゃん。相手の姿も見えないのに、どうやってスキルを回収しろって言うんだよ。」

利文は頭を抱えた。


「坑道だから真っ暗なんですかね。なんか明るくする方法とかないかな。人形に明かりを持たせて転移させましょうよ。」

涼之介の提案にバッグスはカンテラを持ってきた。


そして、人形に持たせて転移させる。


また、人形が戻ってくる。



「あ!一瞬明るくなったぞ!あ…、カンテラ、向こうにいっちゃた。」

「状況は何も好転してないな。しかし、そうか、人形にものを持たせることはできるのか。」

利文が壊れた人形を覗き込み考え込んだ。



「いつも同じ壊れ方だな。魔物は同じ攻撃を繰り返しているのか?ちょっと趣向を変えるか。人形の姿勢を変えて転移させよう。」

利文に合わせて、人形は体育座りになった。



「利文。姿勢が変わるとどうなるの?」

「直立より的が小さくなるだろ。攻撃が当て辛くなるんじゃないかってさ。」



体育座りの人形を転移させた。すぐにまた戻ってきた。

「あれだちょっと戻ってくるまで時間がかかったかな?しかも、カンテラが向こうに入ってるおかげでちょっと見えるようになったね。」

「誤差だな。あまり変わらない。よし!ちょっと考えよう。」



利文は人形の前に立ち、壊れた人形の鼻をつく。

「魔物は必ず人形を真っ二つにする。俺たちは、人形の姿勢を変えられる。そして、向こうに何か持っていける。」


利文の言葉に涼之介が続く、


「姿勢次第では、壊されるまで時間稼ぎができるよな。壊されにくい姿勢で、突入する?それってどんな姿勢だ?的を小さくするために蹲るか?でも、体育座りとあまり変わらないな。」

「涼之介、こいつは人形だぜ?人じゃ無理な姿勢だってできるんだ。何かいい格好があるはずた。」


利文は壊れた人形の首をグリグリ動かす。すると、バキッと音を立てて首が折れた。



「格好にこだわる必要はないか…。あ!バッグスさん、人形が戻ってくる条件ってなんですか?」

「そのコントローラーやベルトでの操作が完全に不能になったときだ。」

「じゃあ、もし首だけ残っていても視点操作はできますよね。首が完全に残っていたら戻らないと思うんですけど。」

「まあ、そうなるな…。」

「よし、利文。人形の首を極限まで肩に近づけよう。体の中心から首だけ逸らすんだ。」

「なるほど、真っ二つにされても首は無事。人形の目は生きているから、坑道の中は見れるってことか。」


涼之介たちは、人形の頭と肩が離れないようにベルトや紐などでしっかりと固定した。もう人ができるような姿勢じゃない。

「よし、転移させるぞ!」


狙い通りだった。今まで一番長い時間、モニターには坑道の映像が流れていた。



「あっ!何か見えるぞ!毛??」

涼之介が叫んだ。


「何?どこ?」

「ここだよ。ここ!」

涼之介がモニターの端を指差した。


「あ!見えた!金髪の毛か??」

そこには、生物の毛らしき何かが映っていた。が、利文が確認した瞬間に映像は消え、人形が戻って

きた。


「やったー!やったー!よっしゃー!!」

「見えた!見えた!見えたぞー!!」

二人は手を叩いて喜びハイタッチをした。が、




「じゃねーだろ!!相手の毛先を見るだけで、どんだけ時間かかってんだよ。何を大喜びしてんだよ。バカか俺たちは。」

利文は急に冷静になった。

「そうだよ…。こんなじゃ、いつになったらスキルを回収できるねぇよ。」

涼之介も同調し落ち込む。

「そうだよ。スキル回収…。…………………。…?あれ?スキル回収ってどうやるんだ?」

ハッと利文は気づいた。



「いまさらかよ。」

あきれてバッグスが答えた。

「いや、教えろよ!」

「知ってて、遠隔操作しているのかと思った。聞いてこなかった君たちが悪い。」

「知るわけねーだろ。」

「そんなに怒るなよ。この世界じゃ常識なんで教えるのを忘れてたんだ。」

 そう言うと、バッグスはおもむろにポケットから何かを取り出した。

 


 それは、ラメの入ったクリアな玉だった。

「何ですか?これ?スーパーボール?」

「スキルだ。」

「え!?スキルって概念的なやつじゃないんですか?物なんですか?」

「スキルの固形化技術。この世界では、普遍的な技術だ。」

「どういうこと?」

 涼之介と利文は驚いて、スキルとよばれた玉をじっと見つめる。



「スキルの固形化技術により、人はスキルの受け渡しが可能となった。スキルを簡単に移植できるようになったんだ。あの壊れスキルも同じだ。あの魔物が元々持っていたものじゃない。固形化し移植したんだ。」


「つまり、スキルを固形化したらあいつから奪えるってことですか?でも、どうやって?」


「人形の体内に固形化に必要な仕組みがある。魔物がこちらに手渡す意志さえあればすぐに固形化できる。」


「え?まさか、説得して譲渡をお願いするんですか?できるんですか?そんなこと?」

 

 バッグスは一息ついて答えた。

「無理だろうな。だから、強引な手を使わざる得ない。やつが死ねば意志など関係なく固形化できる。そう、やつを殺すんだ。」


「殺す!やつの姿さえまともに見えないのにどうやればいいんだよ。」

 

 また、バッグスは一息つくと隣の部屋から台車を持ち出してきた。台車の上には何十個ものスキルが置いてある。


「殺す方法は、私にもわからん。だがスキルはたくさんある。これを君たちに移植する。これで君たちもスキルが使える。手札を与えたぞ。さあ、知恵を絞れ!」




〈この世界の真実〉

スキルの固形化技術は、この世界で広く知られる普遍的な技術である。

人々はこの技術により容易にスキルを移植できるようになった。



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