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神木様係

『私の名はケイジ。お前たちにスキルを譲渡するものだ。』


『木じゃねえか。』

目の前には、大木があった。リモトは、利文が操作している。


『木だが?』


『お前どうやって喋ってるんだ?』


『テレパシーだよ。私はスキルによって、そういう風に作られた。今は、複数の意思を感じるよ。お前たちは、何人だ?』


『止めようか、お互いに詮索は。さあ、スキルをもらうぞ。』


『聞いていると思うが、地下深くにあるぞ。どうするつもりだ?』


『穴掘りのスキルを使う。』


『そうか、騒がしくしないでくれよ。親交のある村人に、ばれたらまずいからな。』




利文は順調に穴を掘った。ある程度掘り進めると、声が聞こえてきた。


『あなた!何をしているんです!』

村娘エイルだった。


『神木様に失礼なことをしないでください。』



「神木様…?」

利文はマイクを切り、呟く


”私のことだ。”

ケイジのテレパシーが聞こえてきた。


「げ!ラボの声を聞き取れるのかよ。」

利文は驚く。


”無論だ。”


「お前、村人に神木様とか呼ばせているのかよ。」


”私は、この村の守り神ということになっている。それは、私に命をくれた亡き村長の願いだ。村人たちは、私を拠り所にしている。何とかこの状況をごまかしてくれ。”


「仕方ねえな。」

利文は引き受けた。


『いやー、失礼なことはしてないよ。』


『嘘です。穴を掘ってる理由を教えなさい。』

エイルは聞く耳を持たない。



「あー、俺無理。向いてない。鎌乃介パス。」

利文は、鎌乃介にコントローラーを投げる。


「お前が引き受けたんだから、お前がやれよ。」

鎌乃介は、コントローラーを返す。


「頼むよ。女性の扱いに長けているんだろ。」


「そういう問題じゃないだろ。」


”誰でもいいから、対応しろ。スキルを渡さんぞ。”

ケイジは忠告した。


「わかったよ!やればいいんだろ!」

鎌乃介は渋々引き受けた。





『僕は、神木様の根を調べているんだ。病気がないかね。』


『病気?神木様は病気なんてしません。』


『ふふ、果たして本当にそうかな?』


『言えますよ。私は神木様係!神木様について知らないことはありません。』

エイルは自信満々に言い切った。


『ふっ、神木様係か。ならば、私はその一つ上と言ったところか。』


『どういう意味です?』


『私は国際神木愛護保護団体のメンバーだ!』

鎌乃介は大ぼら吹いた。


『国際神木愛護保護団体⁉』

エイルは驚く。


『そうだ!国際神木愛護保護団体だ。』


『え?国際神木愛護保護団体ってなんですか?』


『国際神木愛護保護団体とは、世界中の神木を愛護および保護する団体だ。広義では、世界の神木様係といったところかな。』


『そんな、神木って世界中にあるんですか!?』


『ある。そして、この神木様も愛護保護対象なのだ!』



「口裏を合わせろ。」

鎌乃介はエイルに聞こえないようにマイクを切る。


”あ、ああ。”

ケイジは答えた。


『そうだ。私は、その団体と親交がある。』

ケイジはもう団体名を忘れた。


『だめですよ。神木様!そんなあやしい団体を使用しないでください。』

エイルは当然凶弾した。





「鎌乃介、大丈夫か?やっぱ、俺がやろうか?」

利文は心配する。


「安心しろ。僕はバッグスさんから学んだんだ。最もらしい理論で、強引に押し切る方法を!」


「私はそんなバカな理論は使わないぞ。」

バッグスは突っ込んだ。




『団体の名前も知らないとは、素人だな。神木については、僕の方が詳しい。』

鎌乃介はほらを吹き通す。


『ぐぬぬ!なら、神木様クイズで勝負だ!あなたが本当に詳しいか、確かめてやる。』

エイルは悔しそうに言った。




「は?こいつ何言ってんだ?」

「君もだぞ。」

バッグスはまた突っ込んだ。


「だが、好都合。こっちは、神木から直接答えを聞ける。頼んだぞ、神木様!」


”あ、ああ。”

ケイジは状況をあまり把握していない。




『ふん、望むところだ。』


『問題は全部で五問。三問正解であなたの勝ち。』


『いいだろう。』


『では、第一問!神木様が好きなお食事は?』


「お前何が好き?」

鎌乃介はケイジに聞く。


”え?イカ天とか?”

ケイジは答えた。


『イカ天だ。』


『そんなわけないでしょ!』

エイルはキレた。


『は?』


『神木様の好きなお食事は、朝の陽ざしと雨の日の後に、ご自身の葉からこぼれた一番最初の雫でしょ!!』


『なんだ、その斜に構えた答え。違うぞ、神木が好きなのはイカ天。』


『イカ天なわけないだろ。馬鹿かお前。』

ケイジは食い気味に否定した。




「てめぇ、どっちの味方なんだよ!」

鎌乃介は問い詰める。


”私のイメージを崩さないためには必要なんだ。この問題の答えも、威厳を保つために、昔、適当に言った気がする。”


「適当って、お前。」


『一問落としましたね。では、第二問!神木様の好きな音は?』

エイルは続けて出題する。



「音?答えは何だ?」


”わからん。全く記憶にない。だが、それらしい事を言ったなら、小鳥のさえずり、とか?”



『小鳥のさえずり。』

鎌乃介は答える。


『違います。むしろ、嫌いです。』


『は?嫌い?』


『私は以前こっそり聞いてしまいました。”あー、もう、うるせえ!枝の鳥がうるせえ!

これだったら、人間のバカ騒ぎの方がましだ!”というお言葉を。よって、答えは人間の声です。』


『それ、別に人間の声が好きなわけじゃないだろ!ましって言っただけで、むしろ嫌ってる方だろ!』


『え?そうなんですか?神木様?』


『私は人間の声が好きだ。私は全ての人を愛しているよ。』




「また、保身に走りやがって!」


”今のは別に私悪くないだろ!”


「まずいぞ。想像以上に神格化されている。こうなったら、よりインパクトのある答えをしないと。」


”何をするつもりだ?”



『後がなくなりましたね。これが最後の一問です。』


『それは、どうかな?』


『いえ、最後です。第三問、三年前、魔王軍の大軍が進軍してきた。その時のご助言は何?』


"この時のことは覚えている。村の防備を固めろ。誰も立ち向かってはいけない。と適当なことを言った。結果として、それが正解で魔王軍は村を襲うことなく、素通りしていったんだ。"

ケイジは思い出した。


「なるほど。そんなことが。だが、それが正解と言えるのだろうか?」

鎌之介は疑問を投げかける。


“どういう意味だ?“


「今までの傾向からして、あの神木様係はお前を神格化している。今の答えが、あいつの解釈に一致しなければ、正解にならない。だから、答えを誇大に言う事で確実に正解にするんだ。」


『正解は、村の防備を固めろ。誰も立ち向かってはいけない。だ。そして、その言葉の真意は、』


『真意?』

エイルはたじろぐ。


『魔王軍を寄せ付けない強力な結界を村に張ることで、村人全員を守ることだったんだ!』


“できるわけないだろ、そんなこと!“

ケイジは突っ込んだ。


『そんなことが!知らなかった!さ、さすが神木様!』

エイルはすぐに信じた。


『あ、あー、ばれちゃったな。ははは。』

ケイジは鎌之介に乗るしかなかった。


“おい、余計な事言うなよ!“


「この状況を乗り越えるには、こうするしかない。」


”この状況を乗り越えた後、乗り越えられなくなるだろうが!”




『まさか、私の知らない情報を知っているなんて!』

エイルはがっくり肩を落とす。


『試してるつもりだったのか?試されているのはお前の方だ!』

鎌乃介は適当にそれっぽいことを言う。





『私は負けない!第四問!ある日突然、まだ、豊熟していない作物を収穫しろと神木様がおっしゃいました。それはなぜ?』


”この答えは、大雨を予測したからだ。天気予報を頼まれることがあって、いつも適当に答えているんだ。当たった時のことはよく覚えている。”


「弱いな。」


”弱いってなんだよ!真実だぞ!”


「適当に言ったことが当たったてことは、外れる時もある。外した時の理由も考えないといけないな。」


”もう、余計なことは言うなよ!”


鎌乃介はケイジの制止も気にせず答える。

『それは、大雨を予測したからだ!そして!』


『そして!』

エイルはわくわくしながら、鎌乃介の答えを待つ。


『神木は天候を操作することができる!』


”おい、いい加減にしろ!”


『噓!本当に!』


『神木が天気予報を外したことがあっただろ?あれは、わざとなんだ。僕たち人間に自然も脅威を教えるためにね。』


『私たちのために!』


”さっきまでの慎重な態度はどうしたんだ!なんですぐに信じるの!”


『そうなんですか?神木様?』


『いや、そこまでは、私も。…もちろん、その通りだ。』

ケイジは否定しようとしたが、キアラの羨望の眼差しに耐え切れず肯定してしまった。


「今まで、適当にやってきたツケが回ってきたな。」

元凶のくせに、鎌乃介は偉そうなことを言い出した。


”これは、クイズなんだ。正解すればいいんだ。盛る必要ないだろ!”


「そう!つまり、相手の最も望む答えを言うべきだ!それがクイズだ!」

「違ぇよ。」

利文は冷ややかに突っ込んだ。


『では、最終問題。神木様の教え、私の父さんが死なない方法はなんだ!』


”これは、適当なこと言ってないぞ。正解は、エイルが一番に父の帰りを待っていたら、父さんは絶対無事帰ってくる、だ。人間には、帰りを待つものがいるという事実があるだけで強く生き残りたいと思うからな。”

ケイジは弁明するような気持ちで言った。


『エイルが一番に父の帰りを待っていたら、父さんは絶対無事帰ってくる。だな。さて、この言葉の真意がわかるか?今までのことを総合的に考えれば、わかるぞ!』


『もしかして、天候を操れる神木様にとっては、結界も村の外へ張れるはず。しかし、それには限度がある。普段結界を張っていないことがその証拠。つまり、父さん一人に張るのが精一杯。私が一番に待つことで、結界の終了のタイミングを確認されている。そういうことですか⁉』


『正解!』

鎌乃介は、エイルが何を言ってるか全然わからなかったが、適当に答えた。


”何で出題者と解答者が逆転してんだ!”


『さすが、神木様!これは村の皆に伝えないと!』


『え!待て!いや、待ってください!』

ケイジの懇願も虚しく、エイルは走り去ってしまった。




『ふう、何とか乗り切ったぜ。』

鎌乃介は汗を拭く動作をした。


『なにが、乗り切っただ!ゆるさん!貴様らにスキルは渡さん!死ね!』



ケイジの巨大な根がリモトに襲い掛かる!






数分後




炎のスキルでケイジは焼けていた。


『ごめんなさい。スキル渡すから、もう帰って。』



三つ目の回収。残り四つ。




〈この世界の真実〉

【壊れスキル】

"擬似の命"

あらゆる物や生き物に、命を与える事ができる。

ただし、正確な人格のデータが必要。





すでに生きている物に、命を与えると元の人格は消滅するらしい。


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