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ドラマなどなく異世界転移

 ここは日本のとある高校。昼休みが終わるまであと2分ほどであった。他クラスで遊んでいた生徒も自分の教室へと戻り席つく時間だ。

 そんな中、2年5組の教室の後ろにあるロッカー前で二人の男子生徒が口論をしていた。


「早く、早くしろよ。もう古文の授業が始まるだろうがよ。」

「うるさいなぁ、ちょっと待てよ。すぐに見つけるから待てって。」

「うーわ。汚ぇロッカーだな、整理ぐらいしろよ、全くよぉ。」

「ぐちぐち言うなよ。ほらこれでいいだろ!古文の教科書!」

「これはお前のだろ。俺の教科書を返せつってんだよ。」

「次の授業はこれで乗り切ればいいだろう。」

「あのさぁ、そういうことじゃなくてだね。」

「あーもう、お前から借りなきゃよかったよ!めんどくせーな!」

「ふざけんな!お前が勝手に借りたんだろ!俺が休んでる間にな!」



 口論が激しくなる中、近くの席の女子生徒が声を上げる。



「もう、あんたたちうるさいよ!休み時間中ずーっと喧嘩して!勉強してる私に少しは配慮しなさいよ!」



 ロッカーが汚い教科書を借りた方の男子生徒は言い返した。



「ふん。古文単語の小テストだろ。ギリギリまで覚えてこなかったお前が悪い。残念だったな。」

「八つ当たりしないでくれる?私がいつ勉強するかなんて私の勝手でしょ。」



 古文の教科書を貸した方の男子生徒はこう言った。



「古文単語が覚えられなくて、君の方がイライラしているんだろ?あからさまに八つ当たりしてさ。いいのか?あからさまに勉強した方がいいんじゃないか?あ、古文単語の"あからさまに"は"ほんのちょっと"って意味な。これで一つ古文単語を覚えられたねー。」

「くっそ、こいつら、超むかつく!」

 


 そんなくだらない会話をしている最中、教室全体を激しい地鳴りが襲った。教室全体にどよめき声が広がる。そして、教室の中心に深い穴が出現した。その穴は、次第に教室全体へと広がり、生徒たちは奈落の底へと落ちていった。


 









…と、まあこんな感じで君は異世界転移をしたわけだが。」

「嘘だろ!こんなアホみたいなタイミングで異世界転移したの俺!!」


 男子高生は頭を抱えしゃがんだ。彼の名は、鎌滝涼之介(かまたきりょうのすけ)。ロッカーが汚く、古典の教科書を借りた男子だ。


「物事ってのには伏線はないのさ。予測のつかないタイミングで異世界召喚も起きる。今回はその好例だな。」

「いや全然よくないですよ。あなたは誰ですか?異世界っていったい?」

 

 涼之介の目の前には、短髪で細目の男が椅子に座っていた。頬杖をつき、足を組みながらこちらをじっと見ている。その態度は、なんとも偉そうだった。男はふうとため息をつき、涼之介の問いに答えた。


「当然の問いだな。これを見るといい。」


 男は近くにあったホワイトボードを指し示した。


「まず、これがお前たちの世界。」

 ホワイトボードには、"お前たちの世界"と文字が雑な丸で囲まれて書かれていた。


「んで、これが俺たちの世界。」

 同様に"この世界"と書かれている。


「そして、こうなって…。」

 "お前たちの世界"と"この世界"を↓で結んだ。


「ということで、お前はやってきたんだ。理解したかね?」

「図示して説明していただいたわりには、情報量0ですよ。何も分かりません。」


 

 男は異世界転移について説明した。しかし、涼之介は異世界転移を受け入れていた。自分が異世界転移をしたことよりも、目前にいる男の正体こそ最も知りたいのである。

男は眉間にしわを寄せ、また、ふうとため息をつきこう言った。



「まあ、突然異世界だとか言われてもわかるわけないか。外に出ることを勧める。外の空気感を己の感覚で味わえれば、ここが"お前らの世界"と違うことがよくわかるはずだ。」


 涼之介は、男が複雑な状況をわかりやすく説明するために、まずは自分が異世界に来たということを理解させようとしたのだと察した。


「いや、異世界かどうかっていうのは別に問題ではなくてですね…。異世界に来たということはもう十分理解してるんで…、ん?でも、そうか確かにそれは確認する必要がありますね。」

 

 その時、涼之介は自身の浅い思慮を恥じた。冷静に考えれば異世界転移はおかしい。なぜ自分は、このことを自然と受け入れてしまったのだろうか。謎の男の言うとおり、まずは、本当に異世界に来たかを確かめるべきではないだろうか。


「ならば、後ろのドアから外に出るといい。」

 

 謎の男が指し示した方向にはドアがあった。

 涼之助はコクリと頷き、ドアへ向かう。


「一つ目の巨人には気をつけろよ。出会ったら確実に殺される。」

出る間際に、男がそんなことを言ったような気がした。涼之助は聞かなかったことにした。




 外へ一歩出ると、洞窟の中であった。振り返ると先ほどまでいた建物がある。岩壁に覆われているため、その全体像を把握できなかった。

「なんでこんな隠れ家的なとこにいるんだ?あいつ?」

涼之助は呟く。

 

 しばらく道なりに進んでいると、外の明かりが見えた。日が昇っている時間のようだ。洞窟の外へ出ると、8 メートル ほど先は崖だった。辺りを見渡せば木々が生い茂り山中であることが推測できた。

 涼之助は異世界に来たことを確信した。なぜなら、都市部の高校から一瞬で山へ行くのは転移以外不可能だと考えたからである。加えて決定打となったのは、崖下に男が忠告した一つ目の怪物がいたからである。


 涼之助はゆっくりと洞窟の入り口まで後ずさりして、

「何だっけ、一つ目の怪物の名前。サイクロンじゃなくて…。」

 涼之助がそう言うと、

「サイクロプスな!」

 近くの茂みから声がした。

「お前も来てたのか!利文!」


 姿を現したのは、増上利文(ぞうじょうとしふみ)。涼之介に古典の教科書を貸した男子生徒である。

 涼之介は、利文の姿に面食らった。


「何でお前、全裸なんだよ!?」

 それを聞いた利文は、怒りの表情を浮かべ、涼之助の胸ぐらを掴んだ。

「なぁんで!てめえは!服着たんだよ!」

「やーめろ!わけわかんない理由で怒んな!」




 ドアを蹴破る音がした。


「おい!バッグス!てめえから聞いた話と違うじゃねーか!転移に失敗したから俺は全裸なんだよな!?こいつは服着てるぞ!」


「バッグス?」

「ん?そういえばまだ名乗ってなかったな。バッグスは私の名だ。よろしくな、鎌滝涼之介(かまたきりょうのすけ)。」


「え!俺の名前を!?」


「彼、増上利文(ぞうじょうとしふみ)から聞いたんだ。」

「あ~!だから、異世界へ来る前の僕らのくだらないやりとりも知っていたんですね。」



「おい、無視するな。俺の質問に答えろ。」

 

 バッグスは、ふうとため息をつき答える。

「落ち着け。増上利文。お前は失敗して、鎌滝涼之介は成功した。ただそれだけだ。」

「それで納得すると思っているわけで?」

 利文は、拳を握りしめる。


「利文、もういいじゃん。どうでも。俺のブレザー貸すからさ、ね。」

「裸にブレザー一着って、変態感が増すだろ!やめろ!」

「え?寒いから全裸嫌なんじゃないの?」

「まともな格好がしたいんだよ。俺は!」

 

 涼之介は利文を指差し、

「こいつ無視していいですよ、昔から変なこだわりのあるやつで。あ!バッグスさんの服貸してくれません?」

「残念ながら、私の服は今着てるものしか持っていない。」

「どんな暮らししてんだよ!この短髪!」

 利文が吠える。

「じゃあーさぁー、利文…

 涼之介が喋ろうとしたとき、ドンっと、バッグスがホワイトボードを叩いた。



「おい、バカ二人。状況わかっているのか?服がないとか、些細な問題だろ?違うか?もっと大きな問題があるんじゃないか?緊張感大事だよな?」

「はい…。」

 涼之介が返事をしその場に座ると、利文も不満気ではあるが座った。


「いいか?お前がなぜこの世界にやって来たのかを説明する。二人揃って、異世界転移に動じない図太さに感心したが、お前らバカなだけだろ。」

「すみません。」

「ごめんなさい。」

 涼之介と利文は謝った。


「改めて説明するが、お前たちは異世界に来た。」

バッグスは、ホワイトボードにある先ほど書いた図を指し示した。


「それは、何も自然的な現象ではなく人為的なものだ。異世界転移を実行したのは、この世界に存在するとある国だ。国名は、エスアル王国。連中は、異世界召喚と呼ばれる儀式で度々お前たち異世界人をこの世界に連れてきている。」

 

バッグスは、図中の"この世界"の下に↓を書き、"エスアル王国"と"異世界召喚"という文言を追加した。


「じゃあ、バッグスさんはエスアル王国の人間なんですか?」

 涼之介が質問した。


「いや、全く関係ない。私は奴らの召喚を利用したのさ。」

 バッグスは"この世界"と"エスアル王国"の間の↓を枝分かれさせて"ラボ"と書いた。


「要するに、私は奴らの異世界召喚を横取りしたのさ。本来君たちは、エスアル王国に行くはずだったんだ。」


「もしかして、この建屋が洞窟の奥に隠されているのって…。」

「鋭いな、鎌滝涼之介。このラボは、奴らにバレないように、人目のつかないような場所に作った。」


「しかし、わからないな。そのソシャゲのレアリティみたいな名前の王国は、なぜ異世界人を連れてくるんだ?あんたもわざわざ危険を冒してまで俺たちを横取りしている。そこまでする価値があるのか?。」

 今度は、利文が質問した。


「その理由はお前たちに異世界人の特異性にある。」

「特異性?」

「まず、この世界にはスキルと呼ばれてる力がある。この世界の人間は誰しも持っている力で、人により異なっている。この世界ではスキルが全てだ。スキルで生き方が決まる。」


 利文は異能力漫画を頭に浮かべた。


「まさに異世界らしい話だ。スキルにより人生が左右されるなら、人の社会的な地位もスキルによって決まりそうだな。特に、戦闘においてはスキルの優劣により人の優劣を決するのでは?」


「人の優劣は、スキルの優劣で推し量ることはできないな。まあ強力であることに越したことはないがな。ただし、増上利文、戦闘においてはお前の言う通りだ。誰しもが強力なスキルを欲している。そこで繋がるのが、お前達に異世界人の特異性だ。異世界人は、なぜだか知らないが強力なスキルを持っていることが多い。エスアル国はそこに目を付けた。」


「なんでそんなに強力な力が欲しいんですか?戦争でも始める気ですか?」


「そうさ、私たち人類は今戦っている。人間を絶滅せんとする怪物たち、その名も魔王軍。王国はこの世界の平和を守るために異世界召喚を行った。手っ取り早く強力な戦力を得るためにな。」


「そうか。バッグス…、お前もその世界平和のために俺たちの強力なスキルを必要としたのか?」

 利文の言葉を聞くと、バッグスは首を振った。


「私には君達の強力なスキルは不要だ。私が必要とするのはある別の"特異性"だ。私は世界平和のために君たちの"もう一つの特異性"を利用する。」


「スキルについては一旦置いておいて、お前も俺たちに魔王軍とかいう化け物と戦わせる気か?戦闘力皆無だぞ俺たち。」


「そう構えるな。王国ほど君たちに危険な戦いを強要するわけじゃない。世界の危機と言ってもいろいろあるだろう?貧富の格差だとか、環境問題だとかな!」


「え?バッグスさんは僕らに社会問題を解決させようとしているんですか?」


「まあ、ある側面からみればそうだが…。つまり、私が言いたいのは、魔王軍と戦わせるつもりはないということだ。」


「じゃあ、俺たちに何をさせる気なんだ?」


「君たちには危険な物を回収してもらいたい。人形を操作してな。」

「危険な物?人形?」


「危険な物とは強力なスキル。この世界を容易に破壊することが可能で、"壊れスキル"と言われている。危険すぎて容易に近づくことさえできない。そこで人形を遠隔操作し、スキルを回収する、名付けて"リモート勇者作戦"だ。」


〈この世界の真実〉

この世界では、しばしば異世界から人が召喚される。


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