1話
いつもと同じような日々。
何か特別いいことがあったわけではなく、何か悪いことをしたわけではないのに、唐突に私の人生は終わりを迎えた。
今思えば運が悪かったとしかいえない。
あれは、いつものように学校に向かう途中、イヤホンをしてお気に入りの音楽を聴いて、信号が青になったので横断歩道を渡る。
そんな、変わり映えのない毎日。
何か悪いことをしたわけでも、いいことをしたわけでもないのに、私は突然の衝撃と共に吹っ飛ばされて、気がつくとどこか温かい場所にいた。
そこは私を包んで、足を伸ばしても柔らかい壁があっただけ。
そこでは時間がわからないが、数日か数週間は現状を理解するために考えた。
思考がうまく纏まらないがなんとか考えて、考えて、結論。
私はどうやら転生したようだ。
そのことに気づいたのは、この温かくて居心地がいいこの場所の外から声のような音が聞こえたから。
そこからは、退屈な日々だった。
なぜ転生したのか?
そういったことはどれだけ考えたところで答えがわからない。
だから、暇を潰して不安を感じる日々。
いつ産まれるかもわからない上、人間じゃなくて別の動物だったりする可能性があったりから。
ちなみに人間として生まれる確率が1京分の1のなんだとか。
そう考えると人間以外にはあまり生まれ変わりたいとは思わない。
たとえ生まれ変わるとしても植物とかがいいなぁ。
そんなことを考えていると、体が頭の奥へとゆっくりと流れていく。
あー、これ産まれるわやつだ。
ゆっくりと時間をかけて、追い出されるように流れていくと外に出て、息を吸う。
う、うえぇ。気持ち悪い。
体の中に入ってくる空気が、ものすごい異物のような感じがして理性とは別に泣いてしまう。
それより、頭がガンガンと痛いし、目は開かないし、なんか声が聞こえるし怖い。
そして、それから大体1年ほど経ちました。
まだまだ言ってることはわからないけど、物や人の名前だったらわかるようになりました。
今世での名前はシリルという。
父はレオン、母はクラリスと言い、長子の姉はレティシア、長男の兄はエルネストという名前だ。
あと、1人では自室の外に出ることができない。
一度メイドの目を盗んで部屋の外に出て、階段を降りるときに階段から落ちそうになったからだと思う。
これについては仕方がないんだよ。
一度ではいいから自分で外に出たかったから。
そのときに私を発見したのは姉のレティシアです。
結構な騒ぎになったなー。
ちなみにお付きの、というよりお目付け兼監視役のメイドが1人付いている。
明らかに先の部屋を出た時のせいだろう。
ああ、早く外に1人で出たい。
せめて家の中だけでも1人で行動したいなあ。