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大きな水槽

「こんな星どうやって侵略すればいいんだ。」

「しかも星のほとんどが水と来た。大きな水槽みたいなとこだな。」

宇宙人たちはステーションの中で作戦会議をしていた。


「なかなかに知能の高い生物が支配しているようだ。」

「この様子だと数少ない陸地も隅々まで奴らが監視してるはずだぜ。」

無人の砂漠のような星ばかり狙ってきた彼らは初めて出会う星に頭を抱えた。

会議は長引くばかりで彼らは途方に暮れていた。


すると、ずっと黙り込んでいたキレ者の宇宙人がふと口を開いた。

「彼らは地上を隅々支配しているんだよな、だが水中はどうだ。」

「水中?どうかな、深海の方となるとまだまだ未開だと聞くな。」

「いいか、奴らはこの水だらけの星に住んでいるにもかかわらず、

陸でしか暮らせないから海の底では何が起こっているかさっぱりだ。

きっと奴らにとって未発見の魚や動物もまだまだいるだろう。」


「さすがに学者連中が調査はしているんじゃないのか。」

「そこだよ。奴らは小さな潜水艦に乗って真っ暗な海を探索してるはずだ。

深海の暗がりで我々がわざと未発見の生命体として見つかり、

それを捕まえた学者たちの体に寄生して乗っ取るのはどうだ。」

「なるほど、暗がりの中で密かに人間に寄生できるわけですか。」

「向こうも初めて発見する生命体に喜んで気も緩むだろう。

潜水艦の中に引き上げられたら決行だ。」


そうして宇宙人たちは静かに海面に着陸すると深い深い海の底へと潜り込んだ。

深海での長い時をじっと過ごしていたが、ついにそこに希望の光が照らされた。

暗闇に現れた小さな潜水艦が宇宙人をアームのような物で捕まえたのだ。

が、その瞬間アームからは強い電気ショックが流れ

宇宙人たちはあっけなく気絶してしまった。


ぼんやりとする意識の中で彼らはテーブルの上に乗せられた自分たちを、

気味悪そうに見つめる調査員たちの会話を聞いた。

「…おいなんだこれ、すげえ見た目だな。」

「…地球のものとは到底思えない、海の底はまだまだ謎だらけだな。」

「…一通り調査が済んだらあそこに移送しよう。きっとみんなも見たがるだろう。」

大きな地上の研究所のことだな、と宇宙人たちは思った。

何にせよ計画は狂ったが次のチャンスを伺おうと思いながら

宇宙人たちは再び意識を失っていった。


次の瞬間、宇宙人たちは目を覚ますと自分たちが水中にいることに気づいた。

「や、なんだ。また海の中だぞ。

気絶している間に潜水艦で調査が終わって放されたのか。」

「いや、待ってください、遠くに人がいます。」

「何を馬鹿な。ここは海の中だぞ。奴らが息をできるはずない。」

宇宙人たちは遠くに見える人影に向かって泳いで行ったが、

何か見えない壁にぶつかった。

「見えない壁にぶつかりました。いったいどういうことですか。」

「むぐぐ、さっぱり訳がわからん。とにかく一刻も早く脱出を試みるぞ。」

見えない壁の向こうで人間たちは恐怖と好奇心の入り混じった表情で、

新しく水族館に追加された新種の深海生物たちの動向を見守っていた。

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