知の女神
その人里から遥か遠く離れた村では、
外の世界から切り離された中で狩りや農業が行われていた。
外からの文明の侵入者はおらず、電気こそ通っていたものの、
豊かな自然に囲まれており、原始的な暮らしが行われていた。
そこにある時大きな変化が訪れたのだ。
空から女神のように美しい若い女性が舞い降りてきたのだ。
女性は村人の話す言葉を断片的にだが理解することができ、
驚いたことに拙いながらにも村人の言葉を自ら話すことができた。
村人が今まで見たことのない小さな美しい石板を持っている女は、
それをささっと操るたびに様々な言葉を話し、多くの知識を披露した。
食べてはならない植物の見分け方や、村の人間が今まで見たこともなかった
新しい罠の作り方など、様々な知識を村人に授けた。
村の若い男たちは皆、物静かでどこか憂いを帯びた表情を見せる
美しい女神の虜となり日々手厚くもてなした。
それからと言うものの、村人たちはわからないことや知りたいことがあれば、
女神のもとへ行き捧げ物と引き換えに新たな知識を授かった。
今まで文明や外の世界を対して知らない村人にとって、
女神の来訪は素晴らしい発展の礎となった。
女神は記念碑も建てられることとなり村の長老が挨拶に向かった。
「是非とも今後もこの村をお導きください。
全ては女神様の知恵にかかっておりますゆえ…」
長々と村人一人一人が順番に挨拶をし、
さいごの一人が女神の手に口づけをして帰ると、ようやく女神は一人になった。
どっと疲れた顔で女神はため息を漏らす。
「はぁ、今日もなんとか乗り切れた。
最初は自然豊かな辺境の地でのロケ撮影って聞いて楽しみにしてたのに、
いざ出発してみれば飛行機は墜落するわ他の撮影クルーとははぐれるわで散々だわ。
スマホの翻訳とインターネットで調べた知識で今はどうにかなってるけど、
この騙し騙しのやり過ごしもいつまでもつかしら。
あぁ早く誰か助けに来てよ、
こんなことになるならテレビタレントなんてやるんじゃなかったわ…」




