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三話.VS.PK集団


 ポイズンバチを短剣で切り裂いたナナヲの耳に、クラッカーのような破裂音が響く。



 ーーパンパカパーン!!!!


 ーープレイヤー:ナナヲがレベルアップしました。

    Lv1→Lv5、スキルポイント10を得ました。


 ーー条件達成。『自身のレベルより5倍以上のレベルを持つエネミー討伐』

 ーー称号:『格上狩り』を得ました。


 ーー条件達成。『自身のレベルより10倍以上のレベルを持つエネミー討伐』

 ーー称号:『番狂わせ』を得ました。


 ーー条件達成。『初攻撃がクリティカル』

 ーースキル:《必死の一撃》を得ました。


 ーー以上、リザルトを終了します。



(ほう、レベルアップ)


 蜂の死骸をインベントリにしまい、ナナヲはアスセナを見る。この妖精、解説するだけすると、自分だけ安全な場所に逃げていたのだ。


「アスセナちゃん♡ お 仕 置 き ♡」

『ふぇ~~!!?』


 終わりましたか~、とのこのこ近づいてきたアスセナを捕まえ、こちょこちょを始める。


 アスセナをくすぐって、しばらく笑わせていると


(ん? 戦闘音が聞こえる)


 ──ズガンッ、ドゴン! という音が風に乗ってきた。


 薄暗い森の中に自分以外のプレイヤーでもいるのだろうか。気になったナナヲはその音に導かれるままに、歩を進めた。



   ◇



「……っ!」


 一人の少女が森の中を疾走する。その後ろを追うのはプレイヤーの集団。──六人一組のパーティーだった。


 同じプレイヤーである少女を追いかけるプレイヤーたち。余程の事情がない限り、ありえない光景。それでも、少女は自分が襲われる理由を知らない。


 ──プレイヤーキラー、通称PK。


 少女を狙っているのはその集団だった。


 森という地形が幸いして今は逃げられているが、それがいつまで続くか。


 少女は思考する。

 この状況を抜け出す切り札は持っている。持ってはいるが、


(すぐに効く訳じゃないし、若干運頼み!)


『やっちゃえばいいじゃん』

『ダメっ! こんなことで配信はしない!』


 プレイヤー補助妖精の言葉に、少女は言う。緊迫した状況で、口は動かせない。思考入力による返答で会話は続く。


『配信者のプライドねぇ』

『バカにする?』

『するわけないじゃない。そんなあんただからついていってんだから』


 ここで緊急配信を始めれば、それを見たプレイヤーが助けに来てくれるかもしれない。しかし、そんなことのために配信をするのは、配信者としての矜持が許さない。


 二人は会話をやめて、後ろからの攻撃を避ける。

 木々が邪魔で、飛び道具等の攻撃は届かないはず。現に、今までも攻撃されてはいるが、どれも木々に阻まれて避ける必要すらなかった。飛んできたナイフを躱しながら、思考は最悪の答えにたどり着く。


(追いつかれた!!)


 少女のすぐ後ろに、PKプレイヤーたちの一人がいる。


(戦うしかない!?)


 少女は戦うことが苦手だ。だから、仲間を支える付与魔法を選んだ。だから、傷ついた人を癒す回復魔法を選んだ。


 武器は森の中でも振り回しやすい短杖。普段使っている杖は長すぎてここでは使えない。


(やらなきゃ! これでも公式アイドルなんだ!)


 少女──『F』の公式バーチャルアイドルは覚悟を決めて、振り向いた。


『「ヘ?」』


 少女と妖精の間の抜けた声が重なる。

 PKプレイヤーの集団も唖然とする。


 ナイフ使いが、──コケていた。



   ◇



(あ、これヤバイやつだ)


 戦闘音のする方角ヘ向かうにつれ、ナナヲの悪い予感は大きくなる。隣を飛ぶアスセナも、今ばかりは真剣な表情だ。


「……《草花の悪戯》」


 少女と集団の追いかけっこを目視できる距離まで来てナナヲは立ち止まり、魔法を発動する。間一髪。少女に刺さろうとしたナイフが、それを突き出した男ごと倒れる。


 少女を含め、戦闘していた者たちは突然の事態に頭が追いつかないようだ。この利を使わないのはもったいない。


 ナナヲはできる限り気配を殺してPK集団に近づく。


 ──ザッ!


 踏み込みと同時に短剣を投てき。続けて、種鉄砲が射出される。

 集団の最後尾にいる、灰色のローブに身を包んだ青年に、種が当たる。痛みに振り向いた青年の顔に、ナナヲの短剣が突き刺さる。


「まずは一人」


 種鉄砲とナイフの速度差を利用した時間差の攻撃に、クリティカルが乗って、青年が倒れる。


 青年の顔から短剣を引き抜き、そこについた血をナナヲは舐めとる。ついでに、ローブの中に隠し持っているナイフも奪う。


「緊急事態だからね、むさい男の血も利用するよ」


 突然の闖入者に、止まっていた時間が動き出す。


「─────…………!!!!」


 声にならない咆哮を上げ、大剣を担いだ男が迫る。


「なんで、森の中でそういうのを使うかな」


 障害物が多くて、扱いづらそうに振り回される大剣。それを身を捻って躱しながらナナヲは続ける。


「頭にあまり血を登らせないほうがいいよ。──ほら、転ぶ」


 男の浮いた片足を蹴り上げて、奪ったナイフを投てき。狙いは男の背後から槍を持って機をうかがっている女。


(森の中で長物とかバカなの?)


 倒れた男を飛び越えて、女に接近する。


「あ、ぐっ……!」


 右の視力をナイフに奪われ、女は悶える。


「……痛覚を設定でオフにしてても、体内を直接いじられる不快感は感じるよね?」


 ナナヲは女の槍を踏みつけ、女の顔面に短剣を突き刺す。すぐ近くに落ちているナイフの回収も忘れない。


「格上のプレイヤーでも、急所ヘの攻撃は即死かあ」


 スキル《必死の一撃》の効果を乗せた攻撃で、呆気なく二人めが死ぬ。


「……残り、四人」


 浴びた帰り血を舌で舐めると、女の顔に口を近づけ、


「──おいしい」


 目が妖しい光を帯び、吸血姫は嗤った。


 スキル《必死の一撃》について


 ・《必死の一撃》:必殺の一撃を繰り出すスキル。

         :急所ヘの攻撃によるクリティカル発生率の上昇、及びクリティカルダメージの増加。



   ◇



 「ナナヲは“女の槍”を踏みつけ……(本文より)」


 ふた◯◯、足◯◯プレイを楽しむ主人公様。

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