美人エルフに『今夜泊めて』って言ってみた
「妖精?」
「どっちかっていうと精霊だ」
目の前の、羽根で飛んでる女の子。
緑髪で、ポニテで妖精って──
「Dのネズミ様の怒られる!
ティンカーなんとか、だ!」
「なんだ、なんとかって」
「せめて緑の髪は止めよう!」
「うるさい! 髪が緑なのは
お前が緑だからだ! お前のせい」
「え? そうなの?」
「精霊は本来、姿をもたない。
話す相手に合わせて、姿をかえる。
なんだ緑って! いないからな!
こっちの世界にも緑髪!」
「いいだろ別に!
敬愛する人気YouTuberが
緑髪なんですー、あやかってるんですー
ってか『こっちの世界』って言った?」
「絶対売れない呪いかけてやる、
その人気YouTuber」
「え? もしかして、俺を、
こっちの世界に連れてきたのお前?」
「もしかしなくてもそうだ。
だから今、話しかけてる」
俺は改めて辺りを見渡した。
森のような所で、
近くの川でモンスターがのびている。
つまり、これは
「え? ガチ?」
「ゴリゴリのガチだからな。
言っとくけど、
あのモンスターにやられてたら、
死んでたからな」
「え? コンテニュー無し?
レベルアップするのに?」
「正確には、お前は、強制的に元の世界の
元の状況に返されるから……溺れ死ぬ」
「めっちゃやばいじゃん!」
「お前には、これから、
魔王討伐に動いてもらう」
「え? それ、拒否権ないかんじ?」
「嫌なら別にいい。
今すぐ元の世界、元の状況に──」
「あー、やりますやります!
丁度したかった所です魔王討伐!
でもどうやって?」
「魔王を倒すには金の盾が必要だ」
「え? あの、
チャンネル登録者100万人行ったら
運営から送られてくるという伝説の?」
「違う。
かつて、すべてを消し去る為に作られ、
万物にあらゆる能力を与えてくれる
と言われる、伝説の、だ」
精霊は盛大にため息をついて、
「やっぱり、金の盾、違いだった……」
と呟いた。
「もしかして、
俺、金の盾欲しいって願ったから、
ここに来たの?」
「私は、金の盾の精霊なんだ。
金の盾を願う人材を、
他の世界から連れてきて、
魔王討伐を願う……しかし、間違えた」
「正直、こっちもいい迷惑っす」
「わかった、いますぐ元の状況に……」
「いやいや待って! 俺がんばるから!
絶対がっかりさせないから!」
「なら良い」
「でも、どこにあるんです? 金の盾」
「わからん。力が強すぎるが為、
レベルが高く、
試練をかいくぐった者にしか
たどりつかない」
「レベルってどのくらい?」
「まぁ、おおむね、100とか」
「ひゃ……」
「お前のチャンネル登録者と、
どっちが多い?」
「……泣きますよ」
「では、たのんだ」
「あ、ちょ!」
「なお、レベルは常に右上に表示される」
「どんなシステム!」
ドロンと煙を出して、精霊が消える。
わー、編集の煙エフェクトみたいー。
「金の盾かぁ……」
右上の数字を眺める。
『2』
さっき上がったからな。
ってか、レベル1で
モンスターと戦ったんだー。
ゲーム実況なら、
なめプかよ! って
コメントつくわ。
「あ、あの緑髪さん」
駆け寄ってきたのは、
さっきの美人エルフだ。
「さ、先ほどは助けて下さり、
ありがとうございます」
「あ、いやいや。気にしないで、
こっちも助けてもらったし」
「でも、それではこちらの気が……」
そう言って、モジモジと顔を赤らめる。
こ、これは、フラグじゃね!
イベント発生だろ!
これはモノにすべき! 全力で!
「あ、じゃあ、ひとつお願いが」
「はい、なんでしょう」
「今夜、泊めて」
「え?」
いやもう、ほんと……
「お願いします!」
必死で頭を下げる俺のを見下ろして、
エルフはにっこり微笑んだ。
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ご視聴ありがとうございます!
ティンカーとのラブラブ展開楽しみ!
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「ティンカーって呼ぶな!」
「伏せ字使って、ティン●」
「伏せる場所に悪意がある!」




