比べがち
小さいころに夢見たお姫様に私はなれているのだろうか。
いや、なれる未来が待っているのだろうか。
時折、そういう風に考えることがある。
私が夢見たお姫様。
ふわっとしたロングヘアーを風になびかせながら歌を歌い、時には動物たちと微笑みを交わして、広いお城の中で外の世界に夢を抱きながら王子様の来る日を待つお姫様。
お姫様になりたいという強い気持ちを忘れずに自由に生きていた少女がある日突然、本物のお姫様になるべく教育を受けるも、思い描いていた日々と異なり「お姫様の自分じゃなくて、私であることが大事なんだ!」と気づく少女の過程を彩るお姫様。
いろんな形のお姫様を見て、小さい私は心を躍らせていた。
あのトキメキはもう私の胸の中に戻ってきてはくれないのだろうか。
永遠に眠ったままなのだろうか。
大人になるにつれ、夢見る心や夢見る目を忘れてきてしまった気がする。
もっと日々の景色に胸をときめかせ、待ちゆく人々の人生を創造しながら毎日の時間を長く楽しいものであったことを忘れている。
本当の私とは何なんだろうか。
好きなものを、好きなことを思いっきり楽しんでいるだろうか。
私の人生はまだまだ長い。
道半ばで途絶えることもないとは言えないが、それでも未来への道は遠くまで伸びていると思いたい。
この長い道のりの中で、私はいったい何になるんだろうか。何になりたいんだろうか。
興味本位で手を出し、中途半端で終わらせてしまう。
志ばかり高く掲げ、何をも成し遂げられずにいる。
周りと比べてはならないと思いながらも、比較対象、価値基準が他人になってしまっている。
そうではなく、常に自分を見つめ、自分を評価し、何をも成し遂げられずとも何かを成し遂げようとした、その志そのものを評価すべきではないか。
その道途中で何かを見つけるかもしれないし、何かを失くすかもしれないが、それはその道を歩かなければ知らなかったことではないか。
人を羨む人生も悪くはないが、自分を推し続け今の自分に満足できずにいる、そんな人生も面白いじゃないか。
幼心に夢見たお姫様になれなくったって、私という名のお姫様に成れればそれは特別に素敵なことじゃないか。