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スピア・スフィア戦記  作者: 星馴染
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第009話 スピアの大剣

開いて頂きありがとうございました!

「……ん……ん~?」

 軽量化するような魔法どころか、一切の魔法はかけられていなかった。

 研がれてもいない。ただの金属のプレートだった。

「魔法はかかってないように見えるけど、スピアさんが持ち上げると発動する

の?」

「魔法……?」

 不思議そうな顔をするスピアに、ステッカーは大剣の持ち手を持ち、動かそう

とする。

「ほら、全然動かないよ。こんなのを振り回せる人がいる訳がないじゃない。何

か言葉に反応して発動したりするの?」

「いや、お前が非力なだけだろう……」

 そう言うと、スピアは軽々と大剣を持ち上げる。

「どこが特別なの?魔法じゃないなら、この大剣の形状に何か秘密が?」

「これはスルキヤの鍛冶師が作ったものだ」

 鍛冶の国として有名なスルキヤの名前をあげるスピアに、ステッカーは尋ねる。

「名のある鍛冶師が作ったの?誰々の代表作だ、とかそういう感じ?」

「鍛冶ギルドの鍛冶見習いだ」

 見習い……?とステッカーは首をかしげる。

「ムチムチした巨乳の美人だった」

「……うん?」

「スルキヤでは特殊な鉱石の金属で武器を作り、はじめて一人前として認めても

らえるらしい。武器を作ったら報酬にその武器をあげるから、と材料集めを手伝

わされた」

「そこまではよくある話だね」

「集めた後、巨乳美人鍛冶見習いちゃんは能力不足で武器を作れなかった。どれ

も武器とは呼べないなまくらになった」

「……は?」

「次は成功させるから、次は、次は、となまくらの剣を十回ほど作った後、さら

におかわりの素材を求められた俺は、巨乳美人鍛冶見習いちゃんにこう言った」

 間を置いてスピアは続けた。

「次に成功しなかったら性交させろ、と」

「何でどうだって顔してるのさ……巧くないからね。シモダジャレだからね?」

「報酬の武器が作れないなら抱かせろ、と」

「クズだ……。あ、でもそれで奮起して次の剣は成功させた?それがこれ?」

「翌日、おかわりの素材で作ったと思われるなまくらを持って出てきた。死んだ

目をしたまま、好きにすればいいじゃない、とキレ気味に言われた。さあ、やり

なさいよ!と言うから喜んで抱かせて貰った。初めてだったしな」

 思い出すように目を細めたスピアに頬を引きつらせ、続きを促す。

「どうしても諦められないというから、俺がアイデアをあげた。今までのなまく

らをまとめて一本の大剣にしたらどうだ、と。多少切れなくても重さで潰せるだ

ろうし、長い板にして持ち手を削り出せば大剣っぽく見えるんじゃないか?それ

くらいできるだろう、と」

「……でも、それって大剣っぽく見える持ち手のついた金属の板だよね?」

 ステッカーがそういうと、スピアは頷く。

「うむ、そう言われて認められなかったらしい。重くて誰にも持てない物を武器

とは言えないだろうと馬鹿にされたようだ」

「そうだよね」

「俺は考えた。武器とは何だろう?敵を倒せれば武器なんじゃないだろうか?剣

と言えば形の想像はできるが、剣っぽくなくても優れた攻撃力を持っていれば、

それは武器ではないだろうか?武器とは言えなくてもそれに近い何かでは?と」

「哲学だねぇ。でもその武器って、大剣っぽく見えるように金属の板に持ち手を

付けただけって自分で言っていたよね。なんでそんな言葉が出るのかな」

 ステッカーの言葉を無視してスピアは続ける。

「仕方なく武器だと認めさせるためにスルキヤ近くに住む竜をこれで叩き殺した」

 竜殺しだった。

 持ち手付き金属の板の付加価値(プレミア)のためだけに殺された竜にステッカ

ーは心から同情した。

「竜の首を持って鍛冶ギルドに乗り込み叫んだ。これは竜殺しの武器だ、俺の愛

剣を認めろ、と一番偉そうな奴を捕まえて大剣を突きつけた。武器だと認めるか

ら命だけは助けてくれ、と怯えていたが俺の活躍により彼女は一人前だと認めら

れ鍛冶場を与えられた」

「まぁ……方法はどうあれ……人助け?なのかな……。できて良かったね」

「そこに転がり込んで、そのままイチャラブな生活をしようとしたら一週間で追

い出された。もう許してください、と」

「台無しじゃない!なんで転がり込んだの!」

 にやつくスピアに、ジト目で睨むステッカー。

 二位、三位と決まっていき、選抜を終えスピアはシプラスの騎士となった。

 実力だけはあるのが手に負えない、性格的にも容姿的にも騎士に見えない騎士、

スピアの誕生である。

読んで頂きありがとうございました!

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