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スピア・スフィア戦記  作者: 星馴染
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第005話 洞窟の中に眠る物

開いていただきありがとうございます。


 洞窟の中は苔がびっしりと生えていた。

「自然の洞窟、という感じではありませんね」

「自然の洞窟じゃないのですか?」

「階段に石を切り出した後があります。切り出して階段のように並べたのでしょ

う。それに地面の石を覆っているのは自生しづらい観賞用の苔ですね。このコケ

は昔、香水にも使われており富裕層の財産代わりでもありましたから」

 綺麗に苔むした切り開かれた階段を指さしマリッサは答える。

「確かに魔法回路が使われていますね」

 ミラベルが壁に手を触れると天井や地面に張り付いた苔が薄く発光する。


「ミラベル様、ここを見てください」

 マリッサが指し示すそこには、ミラベルが慣れ親しんだシプラス王家の旗印、

家紋が彫られていた。

「シプラス王家の関係の洞窟でしょうか。私は森にこんな洞窟があると話を聞い

たことはありませんが」

 ミラベルがさらに奥へと踏み込むと石造りの机の上に、苔色の表紙を麻糸で縛

ったような簡素な作りの本があった。

「保管魔法……?」

 ミラベルが手を触れると、役目を終えたと言うように保管の魔力は四散する。

 苔色の本を手に取り、表紙を軽く手でなぞると『ステッカー=シプラス』と言う

名前が書かれていた。

「ステッカー=シプラス……?肖像の広間には無い名前ですね」

 数代前からそれぞれのシプラス王家の写真が飾られている広間に、ステッカー

の名前は無かった。

「ミラベル様……その名前はシプラス国の学校に入ったら最初に習うものですよ」

 入学する年齢に満たないミラベルは首を傾げ、誰なのでしょう?とマリッサに

尋ねる。

「シプラス国の建国の王です」

 ステッカー=シプラス。小国をまとめ、シプラス王国を建国した建国の王。

 レンズを合わせて写像を固定し人がトレースする写像機が無かった時代だ。そ

の姿は身体に不釣り合いなほどの大きな大剣を持ち、一振りで軍隊を吹き飛ばす

ような荒々しい神話のような絵しか残っていない。

「肖像の広間は王城を建て直した二百年前からの王の肖像が飾られています。そ

れまでは写像機もありませんでしたし、誇張されたような物もありますから」

 それにしても、とミラベルの手にある本を見て口を開いた。

「ステッカー=シプラスの手記ですか。もし誰かが見つけていたのであれば宝物庫

に入っていたと思いますので、もしかするとここは不明とされていたステッカー

様のお墓かもしれませんね」

 パラパラとめくり、ミラベルはマリッサに手渡す。

「古代シプラス語ですね」

「私は習っていないので読めません。お願いします」

『彼を封印する事に成功した。危険なのでこの封印は決して解いてはならない。

もし封印を解けば彼はシプラス国を滅ぼすかもしれない』

 次のページをめくってマリッサが固まる。

「どうかしましたか、マリッサ。続きを読んでください」

「……ミラベル様、後は白紙です」

 マリッサは申し訳なさそうにミラベルに白紙のページを見せる。

「何ですかそれ……」

 何が封印されているのかもなぜ危険なのかも書かれていない。

「封印がどこにあるのかも……」

『強固な精神力を持った意思の強い者の封印で意思は大きな石によって抑える事

ができるという』

 白紙のページを眺めているとミラベルの頭に声が聞こえたような気がした。

 身体を震わせながら

『本があった近くに意思は無いかな』

 声に従い石造りの机の上に目をやると、かすかに苔が膨らんでいる箇所があっ

た。

 そっとミラベルが手で苔を払うと、そこには魔法陣が書かれた石があった

読んで頂きありがとうございました。


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