第004話 ミラベル王女と侍女マリッサ、森に隠れる
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シプラスはいくつもの小国が固まってできた国である。多民族国家は時として民族の知恵と知恵があわさり相乗効果をもたらす事もある。
弊害として考えを押し付け合い決断が遅く、身内同士で足を引っ張りあう事もあった。今回は意見がまとまらずゴブリン対策が遅れ今の事態を招いてしまった。
良い事ばかりでは無いがシプラスの技術水準は隣国に比べて高かった。
シプラス国は複数の小国が温めてきた様々な料理方法により、他国よりも美味しく珍しい料理が食べられるという。そんな国の王女ともなれば当然舌が肥えている。
「ミラベル様、木の実を集めました。罠には小動物が数匹かかっておりました」
ミラベルの侍女、マリッサが言うのを聞いてミラベルは顔をしかめた。
「好き嫌いを言う訳ではないのですけど。こういう状況ですし、仕方ないとは思うのですけど……」
硬い木の実には特に忌避感は無い。問題は小動物であった。
「やっぱり、鼠」
「ミラベル様、これは山鼠です。街中の鼠とは別物ですよ。草食性で木の実しか食べないから味もいいですし、栄養にも美貌にもいいですよ」
鼠を見て落胆するミラベルを慰めようとマリッサがフォローするが
「この間見たその鼠は不衛生な所に出る黒い虫を美味しそうに食べていましたけど」
「……すみませんミラベル様。これしか獲れなかったのです」
悲しそうなマリッサを見てミラベルは頭を振る。
「いいえ、マリッサはよくやってくれています。ありがとうございます、マリッサ」
硬く味の薄い木の実を齧り太陽の光に当て乾燥させた小動物の干し肉の食事をとる。
「火が使えないのは何とかならないでしょうか。肉も火を使えば味が変わると思うのですけど」
ミラベルは小声で忘れてちょうだいと言って干し肉を齧る。火を使うと煙も出ますし誰かに気付かれるかもしれない。危険な野生動物が匂いを嗅ぎつけてくるかもしれない。魔物が寄ってくるかもしれない。
敵に見つかる可能性を少しでも削り、状況が変わるのを待つ。マリッサはその事だけを考えていたが、ミラベルの落ち込んだ顔に思わずこう返した。
「煙が漏れず、火があまり広がらないような場所。洞穴とかですかね、もし見つかったら火を使った料理を食べましょうか」
ありがとうとマリッサに抱き着き屈託の無い笑顔を浮かべるミラベルに、マリッサは優しく微笑みを返した。
「もうすぐ二ヵ月になるぞ!?お前らは何人いるんだ!たかが小娘一人を見つける事もできないのか!」
パイソの将軍はミラベル王女が見つからない苛立ちを抑えようともせず、集めた兵士長達に怒鳴り散らした。
「し、しかし。街中はゴブリンで溢れている状態です。人数を少なくすると隙を狙って襲ってくるため、団体で動かなければならないため、思うように進まないのです」
「くそ、忌々しいゴブリンはここでも邪魔になるか」
民間人を襲うためシプラスの労働力と技術は失われる。
パイソ国が得られるのはシプラスで貯めこまれた金と
ゴブリン達により荒れた土地が残る。
ゴブリン達を駆除してから民をパイソ国からこちらに移り住ませて、と考えると今回得られた財宝だけでは不足するかもしれない。
暗黙のルールとしてゴブリン等の魔物を使った制圧はしない、と決められているのは例え勝利しても得るものがないためだ。
人種が違うとはいえヒトがゴブリン達に家畜のように喰われたり飼われたりする姿を見るのは気分が良いものではない。
早く自国に戻りたいとパイソ将軍は今日も強く部下達にあたり、パイソ産の数少なくなってきた葉巻を燻らせた。
「あ、あれって洞窟でしょうか?」
「やりましたね、ミラベル様」
人が入れるくらいの入り口を持った洞窟の発見にミラベルとマリッサは手をお互いに当てて喜んでいた。
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物語進行が遅い分、投稿はなるべく速く落としていきたいと思いますので
これからもよろしくお願いします。