第003話 ゴブリン討伐・シプラス落城
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「できる限り早くゴブリン達を叩くのだ!」
王城で、シプラスの王が軍務大臣に激を飛ばす。
「とはいえ……パイソ国は国境付近に布陣しておりますので、防衛に最低限必要
な人数を置き……いえ、王都が落とされる訳にはいきませんので余裕を持たせて
防衛に当たらせますと……ゴブリン討伐に回せる戦力が不足しております」
全戦力を一気にゴブリン討伐に向けていれば、ゴブリン達には勝てただろう。
もっとも国境付近へ布陣したパイソ国により王都は蹂躙されてしまう事になるだ
ろうが。
「戦える者を強制で徴兵してはどうでしょうか?」
「戦える者は働ける者。徴兵により国の利益は大きく減ります。この時のための
常備兵制度ではないのですかな?」
経済大臣が軍務大臣の徴兵案を避難する。
常備兵の質が高ければ防衛に割いても余剰戦力でゴブリンを叩けたのではない
か、と。
「パイソ国と協力してゴブリンを抑えてみては?」
「そのゴブリンを連れてきたのはおそらくパイソ国だろう。宣戦布告してきた敵
国に兵を出せと?」
「人同士で争っている場合ではないでしょう?」
パイソ国は位置的にはシプラスよりやや離れた位置にある。ゴブリン達により
シプラスが滅ぼされたとしても、近隣諸国により自国に到達するまでには退治さ
れているだろう、と甘い考えを持っているかもしれない。
「無理だ。近隣諸国に兵を出してもらうのはどうだろうか」
「それこそ無理だろう」
代案を出すための代案に会議のための会議は続き、何も決まらないまま半年が
過ぎた。
支配下地域の街のうち山地部寄りの半数はゴブリン達に抑えられた。捕らえら
れた苗床から生まれるゴブリンは月に三十万体を超える。
「これ以上勢力を拡大されるとゴブリンを抑えられなくなってしまう」
王はパイソ国よりも人類の一大事であると戦える者を制徴兵し、全部隊で山地
部へとゴブリン討伐へと向かわせた。
ゴブリン討伐体がほぼ全損の被害を出しながら山地部をゴブリンから奪還し、
戻って来た時……王城はパイソ国の旗が掲げられ、王、王子の首が門の外に打ち
捨てられるように晒されていたのであった。
「シプラスの王は魔王の手先としてゴブリンを引き入れた。これは人類に対して
の反逆行為である」
パイソ国の将軍は王、王子の首を刎ね、王女達をゴブリンに与えた。一度ゴブ
リンの苗床になれば、シプラスの血を継ぐ者が現れる憂いは無くなる。ゴブリン
の苗床にされ作り替えられた時点で子を為す事はできないのだから。
一月経て、王女達がゴブリンを産む所を確認した後、奴隷の焼き印を当てる。
「王族、それも大国の女性となればみな美しい容姿をしておりますなあ」
下卑た笑みを浮かべる兵士に戦利品としてパイソ国へと送らせた。道中で楽し
んでも価値はそう落ちまいがほどほどにせよ、と伝えパイソ国の将軍は王の席に
腰かけた。
「あと一人、行方が掴めない末の王女であるミラベル=シプラスを捕えれば、長
いシプラス遠征も終わりだな」
末の王女、ミラベル=シプラスの身柄さえ押さえ、祖国へ帰る事を考えながら
パイソの将軍は軽く椅子に腰かけたまま、目を閉じた。
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