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スピア・スフィア戦記  作者: 星馴染
21/23

第021話 スピアの女カッコカリ

開いて頂きありがとうございました!

20話突破しました!PVは……少ないですが頑張ります。

誤字やフォーマットが崩れたりしている箇所があるので更新休んで校正しようか悩んでます。

1,2話目でブラバされている方がかなり多いようですので、少し軽く書き直してみようかなぁ、と思う今日この頃。

城内の中庭でミラベルは、グゴゴゴという猪のような声で目を覚ました。

辺りを見回すとミラベルの傍でスピアがいびきをかきながら寝ていた。

「スピアさん……?」

幸せそうな寝顔に、ミラベルは少しずつ意識を失う前の事を思い出していく。マリッサの変わり果てた姿を思い出し、ミラベルは大きな目から大きな水粒をこぼし大きな声で泣いた。

「誰もいなくなってしまいました」

 優しかった家族。父も母も兄も姉もマリッサも。死んでいるか、酷い扱いで生かされているか。隣国の助けは無かった。

 ミラベルは自棄になり、晒された父や兄の後を追おうと武器を探した。

 最初に目に付いたのがスピアの剣だった。

「もの凄い切れ味でしたよね」

 そしてスピアが背中に抱えた変わった形の大剣を触ってみる。刃の所で指を滑らせても全く切れる事が無い。刃と呼んでいいのか、刃先の厚さは2センチくらいあった。

「こら……俺の物に触るな」

 そしてあくびを一つして、辺りを見回しステッカーが居ない事に舌打ちした。

「スピアさん……私を殺してくれないでしょうか」

「ん……?なぜだ。解らん」

「もう私には誰も居ません。父も母も姉も兄も。マリッサも居ません」

 ミラベルは父が殺された時も兄が殺された時も。母や姉が連れていかれた時も 大声でこの世の理不尽さに泣き叫びたかった。

そっとなだめ尽くし、時には笑わせてくれたマリッサが最後の精神の安定剤だった。そのマリッサはもういない。

「まぁ、そうだな」

 そう言ってスピアは興味なさそうにあくびをする。

「だから、私を切ってください」

「ん……?だからなぜだ。解らん」

「私はまだ子供です。一人で生きていく事はできませんし、国民達の多くは殺され、逃げ、国は滅んだも同然です」

「まぁ、そうだな」

「こんな理不尽な行動を助けてくれなかった国に逃げ子供として生きるのは無理です。野垂れ死ぬか、掴まってマリッサのように……」

 ミラベルはマリッサの事を思い出したのか、ぴくりと震え、続けた。

「拷問されて玩具にされて死ぬなんて嫌です。みんなの後を追って、この私が生まれ育った国のこの王城で、終えたいんです」

 年齢が十歳くらいの少女が既に生に絶望して死にたい、と叫ぶ姿にスピアは

「知らん。死にたいなら城にのぼって高い所から飛び降りればいいだろ。なんで俺が殺さないといけない」

「……え」

 死ぬ事を否定しないスピアに、ミラベルは身を固くする。そして、もういいです!と強く言って城の方へと走っていく。

姿を目で見送ったスピアは腕を組んで考える。


ステッカーちゃんの子孫……俺の子孫か。


ミラベルの後を追いかけ、階段を上っている所で脇の下から持ち上げるようにしてミラベルを持ち上げて言った。

「ちょっと待て」

「……なんですか、邪魔しないでください」

「報酬をよこせ」

「……ほ、報酬?」

「マリッサちゃんを助けてくれと言っただろう」

「助けられるって言った!嘘つき!助けられなかったじゃないですか!」

「む……?」

「マリッサを助けられますか?と聞いた時、簡単だって言った癖に!嘘つき!」

「……知らん。死んだのが悪い。気合が足りない」

「……!!!?」

 嫌な事を言うスピアの腕から逃れようとジタバタと身体をよじり暴れるミラベルに、

「無駄だ、無駄だ。バカなガキだな。持ち上げられていたら力が入らんだろう」と煽り笑うスピア。

「じゃあ囲まれていた洞窟の分をよこせ」

「……私は貴方を利用しました。ステッカー=シプラス。私のご先祖様はもう居ません!」

ミラベルはスピアが激昂して殺されても良い、と少し強めの口調で睨みながら言った。

「そうか、残念だな。そうだな……じゃあ金か女をよこせ。俺はそのために生きている」

「あると思いますか!?お金ならお城の物は好きに持って行ってください!」

「物じゃない。金だ。金か女だ。現物しか認めないぞ」

「最低です!私はまだ子供とは言えレディですよ!女をくれ、とか子供に言って恥ずかしくないのですか!それとも私に手を出そうとする変態ですか!?」

 そう言ってミラベルはいつの間にか死のうという落ち込んだ気分が、怒りに塗りつぶされて消えているのに気付く。


「どっちも無いだと……?じゃあお前自身を貰おうか。と言いたいが……まだガキだな。まあ将来は美人になりそうだし、お前でもいいか。よし、お前は今から俺の女カッコカリだ」

「何をバカな事を!」

「そうだな、もう十年くらいしてステッカーちゃんくらい美人になったら……お前を報酬で貰うとしよう。水をやるから早く育てよ、胸とか尻とかはムチムチじゃないと許さないからな」

「……私は植物じゃないです」

「よし、じゃあ最初の命令だ。勝手に死ぬのは許さん。胸とか尻とかはムチムチになってエチエチなお礼をした後で死にたかったら飛び降りて死ね。それまでは俺の女カッコカリだ」

 そして、ミラベルは諦めて項垂れおろしてと伝えた。

「……ミラベル」

「ん?」

「スピアさんの女カッコカリ?でしょ。ならガキじゃなくてミラベルと呼びなさい」

「お、グフフ。じゃあミラベルよろしく」

 そしてミラベルをおろした所で

「……ん、なんだ?」

 スピアが身体に痛みを感じ、倒れた。

「い、い……イタタタ。な、なんだこれ、痛え!!!!」

「す、スピアさん……?」

「み、水。水を頼む、身体が焼けるように熱い……」

ミラベルが急いで水を汲み、スピアの元に戻ったタイミングで、

痛みが治まったのか、うずくまっていたスピアはゆっくりと身体を起こした。

「なんだったんだ……」

 錆鉄のような色をした硬い髪は……輝くような純白に変わっていた。

短く刈られ獅子を思わせるようだった髪は急激に伸び、膝裏の辺りまで届いており、柔らかな絹糸の様に風にふわふわと揺れる。

 筋肉質で鍛えられていた身体は蒸発するように薄くなり、変わりにきめ細やかな真っ白い肌へと変わっていた。

 粗野な印象を受けるぶっきらぼうな怖い顔は、しっかりとした意思が裏に見える鋭い印象の美しい顔立ちへと変わっていた。

「どうした?ガキ……いや、ミラベル」

「す、スピアさんですか?」

 汲んできた水に映る自分の姿を見て、スピアは嬉しそうな顔をした。

「お、ステッカーちゃん……水の中に入ってどうし……」

 そしてペタペタと自分の顔を触り……スピアは声を上げた。

「って、俺だ!なんで俺がステッカーになってるんだ!」


読んで頂きありがとうございました!

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