第020話 別れと再開、そして別れ
開いて頂きありがとうございました。
投稿時間を少しずらしてみる試み中です。
体調を崩していました。筋肉痛・関節痛症状→皮膚炎
まだ痛いです。更新遅れたらごめんなさい。
欲しい情報を持っている人を捕えた場合、それを吐かせるためにはどうすればいいか。
ドラマや漫画の世界にある自白剤では
「や、辞めろ!くっ……喋りたくないのに喋ってしまう!」
と言う事もあるが、実際にはそんな便利な物はない。
麻薬やアルコール等の類が主に使われる。
アルコールは長らく自白剤がわりに使われていた歴史もある。
お酒を飲むと大脳皮質の働きが鈍り理性よりも先に本能的な欲求を求めるようになるのだが、心当たりがあるのではないだろうか。
「暑いから服を脱ぐ」と脱いだり、酔った勢いで泣きながら上司の事を面罵したりして翌日青褪める経験は……ファンタジーではないのだ。
それと同時に「酔っ払いの言う事だから……」という意識もないだろうか。
自白剤で得られた情報は思い込みや妄想、空想や嘘等が入り込む事も多いため、拷問等で得られる情報の方が重宝されたという歴史的な背景もある。
代表的な拷問に、不眠、絶食、痛みによる物がある。
不眠は中世ヨーロッパでも行われた拷問である。眠れないように交代で見張り、眠ると起こす。眠りたいという欲求が何にも勝り、自白すれば眠れるとすればどこまで我慢ができるだろうか。
学校や会社、大事な約束があるのに夜更かしで寝てしまって後悔した事は無いだろうか。あと数時間起きていれば大丈夫だったのに、という徹夜明けで向かおうとして途中で寝てしまった事は無いだろうか。
睡眠の阻害により脳が情報を整理する事ができず、眠いという本能が理性に打ち勝つ状態の時、喋らなくても耐えられるだろうか。
単純にして精神に異常をきたしてしまう恐ろしい拷問である。
絶食については単純で物を食べさせなければいい。
飽食の時代、食べ物がある時代に生きた人でも飢えの苦しみは一番身近にあるだろう。物が食べたいという欲求は誰もが感じた事があると思う。
それが食べたくて、食べると家計が厳しいと解っていてもつい食べてしまう。そういった経験は誰にもあると思う。
そしてマリッサが取られた拷問は……
「ひ、い、いや……ま、マリッサ……」
ミラベルは酷い惨状に頭を抱えて蹲り吐き、意識を失った。
喋るまで痛めつける。最もシンプルな拷問……痛みによる拷問である。
あたりは血に塗れていた。
マリッサの両目は抉られ止血されていた。
腕は肩から、足は臀部からなくなっていた。
顔も含めて身体中が薄く何度も切り刻まれた跡が残っていた。
細かく切り刻んだ肉はそこらに打ち捨てられ、腐り、蛆が沸いていた。
くぐもった呻き声から漏れる口は、顎が外され舌が切り取られていた。
情報を吐かせるための拷問は、ミラベルの場所が特定された事により、ただただ弱者を嬲る方向へとエスカレートしていた。生かす必要も無い、と新しい傷口は止血すら施されず……息絶えているのが遠目からでも解った。
ミラベルを抱え地下室から出た所で……
「スピアさん?」
「……ん、ステッカーちゃんか」
スピアはステッカーと再会する事になる。
地下室の惨状を見て、ステッカーは気分悪そうにスピアの元へと戻った。
「このガキが助けてくれと言っていた女らしい。俺の物になるはずだったのだが。試合に勝って勝負に負けた気分だ。あいつらを殺しても何にもならなかった」
「スピアさん、いったん外に出ようか」
ステッカーが炎の魔法を地下室に打ち込んだ後、スピアが今まで自分が見た事がないような鎮痛な表情をしているのに、やや驚きながら言葉を待った。
「もう考えるのは辞めだ。ステッカーちゃん、とりあえず報酬をよこせ」
はじめてステッカーを抱いた時のセリフと同じセリフをスピアが口にする。
「変わってないね、スピアさんは」
ステッカーはスピアの傍にいるミラベルに目をやった。
「ん、まぁ……。ああ、それなら……これからいう事を許してくれたら、一回だけならいいよ」
ステッカーは恥ずかしそうに頬を染め、スピアの方へ指を一本立てて言った。
「……ん?お前をいつでも抱ける報酬だったはずじゃなかったか?」
「違うよ、一生身も心も捧げるという報酬だよ」
「なんで一回になる」
「報酬は終わっているよ。私はもう死んでいるからね。今の私は力の残り、みたいな物かな」
そういうステッカーにスピアは手を伸ばすが、ステッカーに手が届く事は無かった。
「触れないじゃないか!騙したな!?」
「触りたいの?」
そして次にステッカーがスピアの手を握ると、ステッカーの手の感覚にスピアは目を瞬かせる。
「どう?魔力を集めるとスピアさんが触れるようにできそうなんだよね。えっと、その前に話をしていいかな」
そう言って妖艶に笑うステッカーから、スピアに対してごめんね、という出だしから懺悔が始まる。
耐えられなくてスピアを封印した事
子供ができたためシプラスの王族はスピアの血を引いている子孫だという事
全てを話し終わった後、怒るだろうと覚悟していたステッカーに、スピアは
「よし、許そう」
一言で笑い飛ばした。
「本体でも残りでもどうでもいい、ステッカーちゃんは相変わらず美人だしな。特に今日は気分が悪い事があったから、そういう時はいい女を抱くに限る」
ミラベルの傍でそっと二人は行為に及ぶ。
スピアが満足した後、
「さて、これからどうするかな。ステッカーちゃんも居ないなら、とりあえず近くの国でも回ってみるか。いい女が居るといいな。グフフフ」
シプラスの惨状から目を背けるためか、軽い言葉で言うスピア。
その声がやや高い事にステッカーは身体を引く。
満足そうに目をつむり余韻に浸るスピアを見て、
「あー、ごめんね……。封印の事を許して貰えたから言うけど、身も心も捧げるって契約と封印の生贄っていう性質が変に作用したのかも。これは私にも予想外だったなぁ……」
ステッカーはそう呟くと、自分の身体が薄くなり消えていくのを感じた。
読んで頂きありがとうございました。




