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愚者の舞い 2−35

主要人物 紹介


ルーケ 主人公の若者。 80年前から時を超えてしまった。 外見は二十歳。

ロスカ ルーケの仲間の魔法使い。 57歳

ラテル ルーケの仲間の戦士。 33歳

フーニス ルーケの仲間のシーフ。 27歳

 一斉に飛びかかって来る大蛇の攻撃をなんとか避けながら、ルーケは腰に吊るしていた小瓶の蓋を外して剣に降り掛ける。

「やめろハルマ!」

「あんたもどうせ口先だけ。 私の苦しみなど分かりはしない。 あなたに分かって? 愛する者に化け物呼ばわりされる苦しみを。 あなたには分かって? 嫉妬と逆恨みで全てを失う苦しみを。」

「分からん! ああ確かに分からんさ! だが、今の君は自分の不幸を他人を犠牲にして八つ当たりして晴らしているだけだと何故気が付かん!!」

ザンッ! と、一振りで一気に2つ、大蛇の頭を刎ね飛ばす。

「グゥッ! な、何をした!?」

「・・・ヒドラ程ではないが、スキュラの回復力も凄まじいものがある。 だが、切り口を火で焼くか、浄化すれば再生は出来ない。」

切られた蛇は、斬り口からジュクジュクと沸騰するように血を沸き立たせ、再生はされなかった。

ルーケの隠していた手段、それは聖水。

アンデットを滅ぼす聖なる水だが、スキュラも呪いの産物。

スキュラの再生を阻止する事を、ルーケは知っていた。

まさか、タキシム対策に持って来たのをスキュラ相手に使うとは思っていなかったが。

大蛇の頭を切り落とされ、焼かれる痛みに怯んだハルマの大蛇を更に2匹切り落とすと、ルーケは一気に飛びあがってハルマの上半身に接近し、渾身の力で横薙ぎに剣を振るった。

「・・・ばかな・・・。」

バシャッと川に落ちるまで、ハルマは、信じられないと言う眼差しでルーケを見つめ続けた。

ルーケは上半身を失い、逃走を始めた下半身を少し見た後、ハルマの上半身に歩み寄って抱き上げた。

「思い出せ。 生ある者の温もりを。 天に帰り、今度こそ・・・幸せに。」

「・・・お前の・・・血を・・・。」

「吸いたければ吸え。 だが、蘇生は・・・できないよ。」

ルーケは左手で抱きとめつつ、剣を川に突き立てると、手袋を脱いでハルマの口元に腕を押し付けた。

ズキリと、牙が皮膚を貫く痛みがあり、全身から力を吸い取られる虚脱感を感じる。

ハルマは少しの間血を吸ってから、口を放してルーケを見上げた。

「本当に馬鹿な人間だね、あんた。 だけど・・・それが・・・心地いい・・・。」

ルーケの血を吸って少し回復したハルマはそう言うと、一瞬微笑みを浮かべた。

そして、砂のようになって消え失せた。

逃走していた下半身も、不意にバシャッと倒れ、同じく消え失せる。

ルーケはグッと左拳に残った砂を握りしめると、立ち上がって剣を引き抜き、リザードマンを睨みつけた。

「お前らの従うスキュラは倒した! まだやるか!? それならば俺が相手になるぞ!!」

ルーケが一喝すると、リザードマンは事態を掌握して一歩引いた。

青ざめたルーケの鬼気迫った迫力と、スキュラを倒した事実。

やがて、暫し睨み合うと、身を翻して全力で駆け去って行った。

「フゥ〜・・・。 疲れたぁ。」

フーニスが安堵し、肩の力を抜くと、ラテルもその場にへたり込んだ。

「いやはや、強いなリザードマンは。」

ロスカの方は、口も利けない位疲れ果て、杖に縋って立っているのがやっとの有様だった。

魔法を限界まで使ったためだ。

「安心してここに居座るわけにもいかないだろ、みんな。 リザードマンは集団行動が基本の筈。 早くここを離れよう。」

ルーケはそう言うと、仲間を促して、ふらつく足を叱咤して立ち去った。

スキュラの吸血力は思ったより強く、本当にあの後リザードマンが襲って来たら、間違いなく抵抗する間もなく倒されていただろう。

ともかく、ルーケ達は疲れ果てた体に鞭打つように、リザードマンの影に怯えながらリセへと逃げ込んだ。


 聖水は聖なる水であり、魔や邪悪な物を破壊する力がある。

浄化能力は魔法に比べれば弱いが、こと破壊の観点だけで見れば抜き出ているのだ。

そのため、呪いと言う魔の力を聖水の力で破壊されたため、スキュラは回復出来なかったのだ。

ロスカに聞かれ、そう説明すると、仲間三人は色々な感情が入り混じった吐息を漏らした。

「そう言う事は早く教えておくれよ。 絶対絶命の状態で疲れたよ。」

「そうは言うけど、奥の手だからな。 大声で教えるわけにいかないだろ?」

「そりゃそうだけどさ。」

「こいつ、いい歳してちびったかゴッ!」

「次はダガー投げるよ?」

横からふざけて言ったラテルの顔面に拳を叩きこみ、物凄くにこやかにそういうフーニスはかなり怖い。

町に帰って来るなり着替えて来ると家に帰ったのはそう言う事かと納得はするが、ルーケとロスカは苦笑いを浮かべるだけで言及はしなかった。

ラテルもフーニスなら本当にやる事を知っているので、深追いする事はしない。

シーフであるフーニスの戦闘方法は、ダガーと言う切れ味鋭い刃物による攻撃だが、リザードマンは皮膚と言うか皮と言うか、とにかく防御力が高い。

誰が作るのか想像できないが、弱い胸や腹を守る鎧も身に付けている。

非力なフーニスでは傷を付ける事さえ安易ではなく、1匹を受け持って牽制し、足止めする事で精いっぱいだったのだ。

ラテルが相手を倒した後、2対1で倒すのが勝算だったが、リザードマンとラテルの技量は互角で、すぐには駆け付けられなかった。

そのため、何度か間一髪と言う場面があり、鎧は薄く、自力で倒す手段が皆無だったフーニスにとっては悪夢のような時間だったに違いない。

「でも、よく相手がスキュラだとわかりましたね。」

「前に文献で読んでいたからさ。」

「ですが、相手の名前も知っているとは・・・。 どこでそんな物を?」

ロスカは一番ルーケの近くに位置していたし、直接戦っていた訳ではないから、その会話も聞こえていたのだ。

「師匠の書物の中にあったのさ。 悲しいニンフの物語として・・・。」

ルーケは異次元の図書室で、倒したら有名になれそうな魔物を中心に調べていた。

それこそ英雄に成るために必要だと考えていたからだ。

その中にスキュラも含まれていた。

その特徴などを調べているうちに、関連文書としてハルマの事も書かれた文献が合ったのだ。

天女であるハルマは、人間との恋愛は禁断であった。

だが、時々許され自然界に来た時の逢瀬は、愛し合う二人にとって、最高に至福な時であった。

そのハルマを慕う若者を、マギサが目を付けた。

マギサは何度も若者を誘惑したが、全く振り向いてもらえなかったため、ハルマに呪いをかけたのだ。

目の前で魔物に変わったハルマを、マギサの狙い通り、若者は化け物と呼び、逃げた。

呪いにより、天界に帰れなくなったハルマを、率先して倒しにも来た。

心の荒んだハルマがどうやってリザードマンと知り合ったかは知らないが、当ての無い放浪に出たのはそのためだった。

その若者は、結局、マギサの餌となり果てたが、それはルーケも知らない事である。

ちなみに、こちらもルーケは知らなかったが、マギサは既にこの世にはいない。

30年ほど前、リョウが倒し、不死と獣人化の呪いをかけられ、丁度マギサを倒しに来たプリとクラスィーヴィに出会うきっかけになったのだが、それは別のお話である。

ともかく、闇に光に、表に裏に、ルーケは知らず知らずに歴史に関わっている事になったのであった。

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