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愚者の舞い 2−31

 ポカ〜ンと見る事しかできないミカ。

いつも仲間の練習風景を見ていたが、本気になるとここまで違うものなのかと驚嘆する。

相手は人形の変化した竜巫女。

火炎は吹くし、動きは目にも止まらぬ速さだしで、とてもミカにどうこうできるレベルでは無い。

相手がほぼ同じ実力と言うのもあるが、人形に勝てば献上用の上級酒をくれると言われ、ルパとメレンダは大張り切りだ。

クーナは仕方なくと言った感じで、あまり乗り気ではないようだが。

「さて、お前も始めようか。 どっからでもかかってきな。」

そう言われても、あの3人が同時にかかっても勝てない相手である。

ただの人間のミカに、どうこうできる相手でも無く。

また、相手はひょうきんな性格ながらも神である。

殴りかかって良い相手とはとても思えず、躊躇していると。

「なんだ? 戦う理由でも欲しいのか? それともお前も何か欲しいか?」

「いえ、あの・・・。」

「勝てない相手じゃつまらんか? ま、それも一つの理由だわな。 それにしても。」

そう言うと、改めてミカの頭から爪先まで、爪先から頭の上まで丹念に見てから、

「あんだってあいつもこんな娘を飼ってるかな。」

「え?」

「確かに食べても美味くなさそうだが。 脂は乗ってないし、筋肉もなさそうだ。 骨はしっかりしてそうだがな。」

「あの・・・。」

「顔立ちだって特別整っているわけでなし、何が気にいったんだか。 あいつも年老いてぼけたか? かなりの年齢だしなぁ。」

「あの、私の事はともかく、アクティース様の悪口は言わないで下さい。」

「なんだ、お前の存在も認めてくれん薄情な主人でも大事なのか?」

「・・・そうです。」

「よせよせ。 あいつは気紛れな上に頑固だからな。 もしかしたら食い頃になるまで飼い、食べようと思ってるのかも知れん。 豚みたいにな。」

「それでも構いません。」

「ほう。 食べて欲しいのか?」

「何が何でも食べられたいとは思いません。 でも、居て役に立てないなら、そうしていただきたいです。」

アラムは真剣な眼差しでそう言い切るミカの目をジッと見つめ返し、やがて、ニヤッと笑った。

「いいか? 正拳突きは、しっかりと腰を入れ、腕を突き出す。 バランスを崩さないようにな。 ほれ、やってみ。」

「え? あの・・・。」

「そこまでしっかり思い定めていて何を迷う。 お前はアクティースの餌か巫女、どちらかに成りたいのだろう? なら、そのための行動を起こせば良い。」

「その行動が分からないんです。 どうしたらいいのか・・・。」

「餌になりたいなら簡単だ。 俺に抱かれればいい。 あいつは穢れた体の娘を好かない。 簡単に捨ててくれるぜ?」

そう言うと、ミカは顔を赤らめた。

13歳と言えども、その手の知識は当然ある。

「巫女になりたいなら諦めずに待つんだな。 そのうち気紛れであっさり巫女にするかも知れん。」

いつまで待てばいいのだろう。

もう数ヶ月も過ぎていると言うのに。

「しないかもしれんが。」

アッサリそう言われ、カクッと項垂れる。

「信じる心は力となる。 答えが出るまで揺るがない事だな。」

「揺るがない事・・・。 でも私、自信が無いのです。」

「自信? なんの?」

「私は、アクティース様にとって必要なのでしょうか。 いえ、ここに居てもいいのでしょうか。」

俯きながらそう言うと、不意にポンと頭に手を置かれた。

「俺から言っていいか分からんが、一つだけ教えてやる。 あいつは死にたがる奴を好まない。 命の重さを良く知っているからだ。 その事は忘れるな。」

「死にたがる・・・命の重さ・・・。」

「じゃなかったら、あいつがこんな辺鄙な場所に住んでいないよ。」

バゴン! と、神殿の壁が突然粉砕され、ミカは振り向いた。

そこには、ルパが足だけ瓦礫の下から突き出し、ピクピクと動いていた。

「おやまぁ、クーナ以外は全滅か。」

見れば、肩で息をしながらも立っているのはクーナだけで、メレンダも床に伸びていた。

「またお前か。 壁まで壊しおって。」

「ようアクティース。 元気が余っているようだったから、ちと遊んでやったぜ。」

「やったぜではないわ。 とっとと壁を直すがよい。」

「へいへい。」

気の無い返事をしつつルパの下へ歩み寄り、ズボッと瓦礫の下から右手で片足を持って引き抜き、左人差し指をチョイっと振るなり壁は瞬く間に元に戻った。

「さて、今日の勝者はクーナだ。 ほれ。」

そう言いつつ、腰に差してあった酒筒をクーナに放る。

「アクティースに渡すなり、自分で飲むなり好きにしな。」

「ところで魔王。 最近猫臭くて敵わぬのじゃが。 どうにかせい。」

「馬鹿言うな。 なんで俺がそんな事しなきゃならんのだ。 やりたきゃ自分でやれ。 結界の入口は変えておいたから、暫くは平気だろうけどな。 それにあいつら、旅に出ちまったし。」

「まったく、いつまで放置しておくのだ? 管理者として職務怠慢であろう。」

「あの・・・。」

ミカが恐る恐る口を挟むが、2人とも意に介さない。

「あのなぁ、お前が他人の事言えるのか?」

「わらわはこうやって、しっかりと守護しておるではないか。」

「あの〜・・・。」

「お前の役目は一国の守護か? 夫婦で人間全般の指導係りだろうが。」

「そんなもの、あって無きが如であろうが。 そもそも今更何を教えろと言うのじゃ?」

「あの〜。」

「俺に聞くなよ。 そのでけぇ体と脳みそはダテかよ。 少しは考えて行動しろよ。」

「面倒臭いから考えるのは嫌じゃ。」

「あの〜、魔王様? アクティース様?」

「おま〜なぁ〜。 脳みそ腐るんじゃねぇか? 寝てばっかりで。 たまには肉体労働でもして、爽やかな汗でも流せよ。 ネグロみてぇに。」

「なんじゃ。 わらわの体でも見たいのか?」

そう言うなり、アクティースはズバッと服を脱ぎ捨てた。

「どうじゃ、美しいであろうが。 存分に見るがよいぞ。」

「作り物なんざ見たくもねぇ。 ってか、意味が違うじゃねぇか。」

アクティースに限らず、竜は己の体の強靭さと美しさに絶大な自信を持っている。

そして、見せたがる性質もある。

「魔王様!」

「ん? なんだ?」

痺れを切らしたミカが大声を上げると、ヒョイッとアラムが振り返った。

「ルパさん、死んじゃいます。」

片足を持ってぶら下げたままなので、ルパは伸びた蛙のようにブラ〜ンとしていた。

当然下着も丸見えなのだが、気を失ったままなので、それは本人は気にしないし出来ない。

それよりも、壁に叩きつけられ気を失ったまま吊り下げられていたので、頭に血が昇って、すでに顔は真っ赤っかである。

アラムがパッと手を離し、頭をゴキッと打った衝撃で意識を取り戻したが。

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