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愚者の舞い 2−23

 ミカに改めて拳闘志の基礎を教えながら、クーナも疑問に感じて考えていた。

アクティースの対応を見る限り、アクティースはミカを嫌っているどころか大のお気に入りだろう。

それは傍で見ているクーナには良く分かった。

ただ、嫉妬するほどでもなく、アクティースは巫女達に均等に接していたが。

だが、何故竜巫女にしないのかと言われると、理由は分らない。

どう答えたものか考えている時、突然背後からモニュッと胸を揉まれた。

「キャァ!?」

「相変わらず良い乳してんなぁ。 鍛えているだけあるな。」

そう言いながら、背後からモミモミと揉む男。

「でたぁ!! 今日こそは!!」

「行くわよメレンダ!」

「俺から一本取れるもんならとってみな♪」

クーナが無言で蹴りあげた背面蹴りを素早く離れてかわし、そこに殴りかかって来たルパのスカートをズバッとめくり上げて動きを止める。

「キャン!」

咄嗟にめくられたスカートを押さえたルパから飛び離れ、飛び蹴りで飛んで来たメレンダをヒョイッと避け、着地と同時に肉薄する。

反射的に突き出された肘鉄を屈んで避けつつ、下から腕だけでグイッと持ち上げるようにして、胸を揉み上げる。

「ギャー!」

「ウムウム。 クーナより肉体年齢がある分、熟して柔らかいねぇ。」

「こんのぉ〜!」

背後から後頭部を狙って突き出されたルパの拳を更に屈んで避け、メレンダの腹寸前で止めたために互いの動きが止まった瞬間、クルリと回転するようにルパの背後に回り込み、すかさずスカートをめくり上げて下着を凝視する。

「ギャー!!!」

「うん、流石俺の選定眼。 長持ちする良い布だ。」

「なんで毎回現れるたびに!! 成敗します!!」

「指導代金だろ♪ ほれほれ〜♪ いつもとおり、1本取れたらいいもんやるぜ♪」

本気になって殴りかかる三人の巫女の攻撃をことごとく余裕で避ける。

クーナは格闘の達人であり、ルパとメレンダもそれに次ぐ実力があるのだが、それを平然と避けるアラムとは大人と子供のような実力差があった。

もっとも威力と音は凄まじいものがあるが。

拳にしろ蹴りにしろ、普通の人間どころか熊でも一撃で即死だ。

クーナ達のような契を交わした竜巫女は、竜と半ば融合した存在なので、永遠に生きる事が出来る。

そして、竜の特性もある程度身に宿るのだ。

そのため、通常の人間とは違って全身の筋力は遙かに上回り、防御力も格段に上がる。

岩を軽々と持ち上げ、通常の剣で斬られても切れるのは着ている服だけである。

外見は通常の人間とまったく変わらないのだが。

ともかく、まだ素人同然のミカはとてもではないが加わることはできない領域が、眼前で展開されていた。

「まったく、毎回一騒動起こさんと気が済まんのかおのれは。」

「あ、アクティースさま、おかえりなさいませ。」

「あやつが来たからには・・・なんじゃ? 人間の男の匂いがするの。」

アクティースがそう言いつつ顔をしかめた途端、一人の若い男が入口から駆け込んで来た。

「師匠!! なにやってんですか!!!」

「おうルーケ。 やっと来たか。」

「やっと来たかじゃないですよ! 結界抜けた途端に消えて、なにやってんですかぁ!!」

「見ての通り、拳闘志の指導だ。」

「スカートめくるのが指導かぁ!!!!!」

「私だって揉まれたもん!!!!」

「・・・本気でなにやってんですか師匠!!!」

「だから指導だって。 現状の実力は見たし、そろそろ反撃すっかな。」

そう言った瞬間、4人の渦巻き滾っていた気配が一変した。

今までは全力で攻めていた巫女達に緊張が走り、アラムからは殺気がほとばしる。

「踏み込みが甘い。 そんなんじゃ足を掬ってくれと言ってるようなもんだ。」

スパッとそう言いながらルパの軸足を蹴り払い、体が宙に浮いて身動きをとれなくしてから、突き込んで来たメレンダの拳を屈んで避けつつ、即座に腹に拳を叩きこむ。

「左手は防御。 疎かになってるとこうなる。」

ダンとルパの体が床に落ち、強く背中を打ったために息が一瞬止まったところをズンと踏み付けつつ上体を起こし、

「受け身ぐらいちゃんととらないからだぞ。」

そこに突き込んで来たクーナの拳を、左手で軽く掴みつつ半回転しながら懐に踏み込み、突き出された腕の手首を掴み直した瞬間背負い投げで床に叩き付ける。

「はい残念。 着実にレベルは上がっているが、まだまだだな。」

「相変わらず手加減なしですね・・・師匠。 相手は女の子ですよ?」

「馬鹿言ってんじゃねぇよ。 ちゃんと手加減してるだろ。 見ろ、誰も死んでない。」

「手加減の程度ってそこですか・・・?」

「他にどこをしろと?」

「いやもっとこう・・・」

「あれで手加減なんですか?」

ミカは横に立つアクティースを見上げてそう聞くと、アクティースはフンと鼻を鳴らす。

「天軍百万の軍勢相手を素手で壊滅させる奴じゃ。 あの程度では手加減と言うか手抜きじゃな。」

「じゃあ、お姉さま達にいたずらするのは何故ですか?」

「本気でやらねば鍛錬にならんからだそうじゃ。 どこまで本気かわからんがの。」

と、言う事は、自分は存在すら認めてくれていないのか?

確かにアクティースと契を結んでいないため、竜巫女としての力がないただの人間の娘だが、それにしてもあんまりではないか?

アクティースへの不満と疑問などが重なっているところであったため、ミカはなんだか物凄くムカムカと、ムカついてきた。

弟子らしい若い男と言い争うアラムにツカツカと歩み寄り。

「? ミカ? 何をする気じゃ?」

無造作にアラムの右手を掴む。

「ん?」

そのままその手をグイっと自分の胸に押しつけて。

「どうですか?」

「へ??」

ジ〜ッと見上げられ、反応に困る。

「私はどうですか?」

「え? あ? いやその・・・。」

「ホホホホホ。 戸惑うそちを見るのは初めてじゃの。 やるのう、魔王を戸惑わせるとは。 ホホホホホ。」


 豪勢な料理もあらかた食べつくし、酔い潰れた巫女達を寝室に下がらせた後。

アクティースとアラムは二人きりで杯を交わしていた。

ちなみにルーケは潰れるなり、空になった荷車ごとどこかにテレポートされて消えている。

「一応感謝をしておこう。 お前が来てくれるおかげで、良い刺激になっておる。 わらわも今日は不味いものを口に含んだのでな。 口直しになった。」

アラムは口の端を吊り上げて笑みを浮かべる。

何も変わらぬ日々、何も変わらぬ景色。

永遠を生きるには長すぎる檻の中だ。

「で、どうすんだ? あの子。 戸惑っているが。」

「・・・ミカか。」

「わかっているんだろ? お前はもう、長くはない事を。」

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