サバイバー、 荒廃で生きる
これはその日その日を生きるサバイバー達の生存日誌である。
2xxx年、 人類が全面核戦争に直面して10年後のお話。
「.......はぁぁぁぁぁ」
大きな溜息をつく。今日一日を調達に費やして収穫がドッグフード缶しかなかったのだ。
「全く嫌になるね、毎日その辺の草やら虫食べてると犬の餌で喜んでしまう自分が悲しくなるよ。」
日が落ちると文明が"ほぼ"失われたこの地域一帯は夜の星空がより一層明るく見える。
「明日は…そうだな、少し遠いけど食品加工の工場があったはずだからソコに行ってみよう。」
返される返事はない。 2年前に共に暮らしてた柴犬と別れても尚、孤独だという現実に直面出来ないでいるのだ。
「今日は少し早いけどもう寝よう。」
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朝日が昇り、野鳥の声で目が覚める
「...........よし。」
この荒廃した世界では常に危険が付きまとう。同じように一日一日を生きる為に過ごす人間。そして人間と同じく食料に飢えている変異した動物達。身を守る為の装備無しでは生きてはいけない。
「忘れ物は無いかな、途中で怪我してもいいように幾つか消毒液と包帯を持っていこう。」
目指すは食品加工工場。 距離は7km程なのだが、道はガタガタ で左は河川 右は鬱蒼とした森林 どちらも視界が通りにくく危険な為、警戒しつつ進まなければならない。
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暫く歩くと対面の道から人影が近づく。
思わず、頼りのないハンドメイドの槍に手を掛ける。
すると、対面の人影もピタリと歩みを止めた。
(敵なのか.......?)
無言のまま2分間だろうか....その位の時間が過ぎた。
人影「あの...」
「はい?」
人影「お互い敵意は無さそうですし、武器仕舞いませんか?」
声を聞く限り男性だろうか、声は震え 喉も枯れている。
(信用していいのか?)
このような場面ではまず、普通の人間なら信用はしない。
しかし彼が孤独に耐えきれていない人間ならどうだろうか。
「分かった、同じタイミングでお互いの武器を置こう」
人影「分かりました」
お互いが武器を置く、距離は15m程。
人影「こういう世界で好戦的じゃない人と会うのは久しぶりです。良ければ水を貰えませんか?」
そう言うと彼はゆっくりと近寄ってきた。
「そこで止まれ まだ僕は君を完全に信用した訳では無い、それにこの世界での水がどれほど貴重かは君にも分かるはずだ。」
そう言うと、彼は、
人影「勿論、タダで貰おうとなんて思っていません。さっき寄った工場で食品を見つけました。通貨のない時代です。物々交換でよろしいですか?」
背中に背負っていたバックパックから食料を出す。
(久しくマトモな食事を見たな)
「それなら良いだろう、だがリスクは減らしておきたい。お互いの物資を片方ずつ真ん中に置こう。僕から先に置く。」
綺麗な水をガタガタの道路に5本置いた。取って逃げるような奴ではないと願いたい。
「ほら、置いたぞ。水を拾って食料を置いてくれ」
人影「水5本で幾つ欲しいんですか?やはり5つですか?それとも10個?」
「10個だ。」
すかさず答える。彼が言うように先の工場から取ってきてるのなら、今向かう場所には何も無いのだ。引き返す他はない。
人影「水5本と食料10個じゃ、割に合いませんよ。実は先程僕が口にした工場、まだ食料はあるんですよ。」
「じゃあ、なんでバックパックいっぱいに回収しない?」
人影「それはですね、あの工場"グール"が居たんですよ。」
(グールだと...?!放射能に毒されて凶暴化した人間だとは聞いているが....)
「成程、一時的な共同戦線を持とうと言うことか?」
人影「感の鋭い人は好きですよ。それはそうと喉が乾いて喋るのも辛いので1本くれませんか?グールがいる情報でも有難いものと思いませんか?」
「あぁ....くれてやる。共同戦線も承諾する。しかし条件がある」
水を渡すと、必死に飲み始めた。
人影「ぷっはぁ!生き返る!!有難うございます。それで条件とは?」
「完全に信用しきれてないのはお互い同じだろう、幸い飛び道具は持ってないようだし距離を置きつつ2人で行こう。視界から消えないようにな。」
人影「分かりました。それでは行きましょうか」
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久々の他人との遭遇。この出会いが吉と出るか凶と出るか。
答えは誰にも分からない。