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欠落した過程 4

 私がこの世界・・・・この町に来た時、真っ先に見たのは最悪な光景だった。

 ただただ争いにくれる人間とエルフ・・・・実力では、明らかにエルフのほうが上ではあった。

 当然だ、エルフという種族は植物を操るという奇妙な能力を使うことが出来たのだから。その能力で、エルフのほうが優勢・・・・かのように見えた。

 ――――あまりにも、人間の数が多すぎたのだ。

 それもそのはずだエルフという種族は、繁殖するときに相手と同じ染色体へと変えて繁殖する。

 しかし、その代わりに男という存在がいない・・・・つまり、自分たちと別の種族から雄という存在を捕まえてこなければいけないのだ。

 繁殖量の差・・・・その差は、人間とエルフとで歴然とした差があった。

 エルフは人間と戦うが・・・・人間は大量にいるため何度も襲ってくる。

 しかし、圧倒的力を持つエルフに人間はかなわない・・・・。

 だからこそループする。何度も何度も、戦いは繰り返される。

 その光景を見て、真っ先に私は「面倒くさい」と感じた。

 そもそも私がここに来た理由は、まったりとした生活を送りたい・・・・という願いからだからだ。

 だからこそ、戦争などという面倒くさいものには関わりたくなかった・・・・だからこそ――――。


 ・・・・私は、この力を・・・・能力を、自分が思うままに振るった。

 まずは木を腐らせ、エルフの力を無力化させた。

 次に大地を砕き、人間とエルフとの間に境界線を作った。

 戦争は、一瞬のうちに収まった。

 圧倒的力の前に、彼らはひれ伏したのだ。

 人間は、私の力に・・・・私自身を恐れた。

 人間である・・・・私をだ。

 

 別にいいのだ、私は平穏な日々さえ送られればそれで。

 

 この力を使い、私はエルフへと自分の生態を変化させた。

 そして、エルフの長に成り上がり、内乱などの騒ぎを全て収めた。

 そして、私は同じく力を使って不老不死になった。

 そうなることによって、完全な安全を、安息を手に入れたと――――そう思っていたのだ。


***


 ――――そして何年経っただろうか。

 確か、私が来てから2世代ほどエルフの世代が交代したころだろうか。

 私が人間であったことを知っているエルフは、ほとんど死んでしまった。

 ・・・・ここでの世代交代のことだが、エルフの寿命は人間の数倍ほどある。ので、それほどの時間が経っていることを分かってほしい。

 

 エルフの中には、私のことを家族のように慕う者もいた。神のように崇める者もいた。

 しかし、一向に人間からは信頼を得られず、良好な関係を築くことは出来なかった。

 これは、私がずっとエルフ側にいるのが問題でもあるのだろう。恐れられている私がずっとエルフ側にいるのだ、そりゃあ嫌悪感を持たれても仕方がない。

 それに、私は朝から夜まで寝続けたり、何もないところでボーッとしてみたり・・・・私は時間を無駄に使うのが楽しかった。

 言うならば、この安息になった日々に甘えていたのだ。

 もとより、私は面倒くさいのが嫌だからこそこの力を授かったのだから、こうなるのは必然のこととも言えた。

 

 そうして怠惰に生活を送って数日――――私は、改めて自分が阿呆だということに気づいた。

 その日はよく晴れていたというのを覚えている。

 私は、天気のいいその日に気まぐれで人間たちのもとへと遊びに行った。

 当然、人間たちは見た目エルフである私を恐れた。

 私は特に気にも留めず散歩をしていたのだが、少しの違和感を覚えた。

 私の力を恐れる者はいた・・・・エルフという敵に怯える者もいた・・・・だからこそ、その者たちの表情は覚えている。

 しかし、その時の人間たちの顔は、そんな表情をしていなかったのだ。

 ――――まるで、何かを隠しているような・・・・それが知られることを恐れるような・・・・。


 ――――私は、やはり阿呆だった。

 

 人間たちが一生懸命に隠そうとしている物を・・・・者を見つけた時、私はとっさにそう思った。

 それは・・・・少女だった。

 少女は虚ろな目をしていて、焦点があっていないようだった。

 おそらくまともな栄養分を取らされていないのだろう。かなり痩せこけていた。

 ・・・・その少女は、犯され続けていたのだ。

 

 一ついっておこう――――彼女は、人間だ。決して人間の恐れるようなエルフではない。

 私は、疑問に思った。

 なぜこの少女がこんな仕打ちを受けているのだろうか、この少女は何もしていないのに。

 なぜ彼女は孕み袋にされていたのだろうか、彼女は同じ人間だというのに。

 

 ――――しかし、そんな疑問はすぐに消し飛んだ。

 簡単なことだ、こいつらが阿呆だったのだ。

 髪色――――その少女の髪色は、金髪の色をしていた。

 ――――そう、まるで・・・・エルフのような金髪だ。

 きっと、彼らはエルフと勘違いしていたのだろう。そうに違いない・・・・いや、()()()()()()()()()()()()()()


 ・・・・だが、この件に関しては私にも非があるのだろう。

 私がエルフという側に付いてしまったせいで人間に余計なトラウマを植え付けてしまった。

 力で力を抑制したせいで、その分の反発がひどかった。

 ――――私は、阿呆だ。


 私は人間からその少女を引き渡してもらい、エルフの里へと連れて帰ることにした。

 ――――しかし、まずはやることがある。


 私は少女に言った「ここでエルフとして過ごそう」と、私の力でエルフにすると。

 ・・・・しかし、奇妙なことが起きた。

 彼女には言葉が通じなかったのだ、この世界の言語が・・・・――――彼女は、私と同じ世界に住む者だった。

 私と同じ言語を、日本語を使うものだった。

 ・・・・彼女の名は、マリー・・・・本名は、麻里 沙理というらしい。

 ・・・・なんでも、彼女はあの人に会っていないようだった。

 車の事故に合って死んだ――――が、目を覚ましたらここにいたらしい。

 

 ・・・・彼女は、私に聞いた。どう生きればいいのかと――――何をすれば私はいいのだろうかと。

 ――――そのとき、私はどうしようもない怒りを感じた。

 何故まだ少女のこの子に、そんな言葉を話させるほどまでの仕打ちを受けさせたのかと。

 こんな状況を作り出してしまった自分と、それを行った人間に、どうしようもない怒りを感じていた。


「・・・・私のために生きて、私が死ぬまで生きて」


 私は、彼女の問いにそう答えた。

 生きる目的がないのなら、用意してやればいい。

 それが何にしろ、ゴールがあるならばそれでいい――――いや、私は不老不死だった・・・・だからゴールなんてないか。

 どちらにせよ、私が彼女にしてやれるのはそれだけだった。

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