交渉と策略 6
――――――しばらく階段を上り、着いたのは9階層目。
そこには、地面に突っ伏しているマリーの姿と――――ふっくらと丸みのあるポンチョ、しかし微かに赤く塗れているポンチョだった。
「・・・・なるほど、確かにこれは子供には見せられませんねぇ」
「・・・・分かるのか?」
「そりゃあ私も察しがいいほうではありますから――――いや、まさか・・・・」
ハルはそう言葉を溜めて――――
「まさか3人同時に――――いや、すいません、何でもないですぅ!」
腰から取り出したスタンガンをチラつかせると、ハルは慌てた様子で謝罪をする。
「まったく・・・・分かってますよぉ、これでも血の匂いには敏感なんですからぁ・・・・」
「・・・・ということは、やっぱり分かってたか」
「えぇ・・・・まだ子供のようですねぇ、お気の毒ですぅ・・・・それにしても、エルフと人間の血が混ざったような匂いですねぇ」
「あぁ・・・・そいつが嫌がるかもしれないから深くは言えないが、まあ察してくれ」
大体ルリとおなじくらいの年ごろの男の子・・・・そんな子がポンチョで隠されているとはいえ、血まみれで死んでいるのだ。
ルリのように小さい女の子では精神的にキツイものがある・・・・だから、ルリをここには連れてくるのは避けることにした。
――――――たとえ連れてきても、それでパニックになって上手くいかなくても嫌だしな。
「・・・・さて、じゃあ早速次の通路を作ってほしいんだが――――」
「あぁ、そうでしたねぇ・・・・じゃあ少し待ってくださいねぇ」
ハルはそう言うと、「えーと」と言いながら部屋をうろうろと徘徊し始める。
一定の歩数歩いたところで、ピタリと止まると――――
「お、ここですねぇ・・・・」
そう言って、天井に向かって言葉をかけ始める。
倒れているエルフと人間に、天井に話しかけているハルと、それを眺めている自分――――
傍から見ればかなり奇妙なその状況で、しばらく時間が過ぎると――――
――――――
「・・・・?なんだ?」
突然、天井が歪み始める。
そう思ったと同時、瞬間的に階段がハルの目の前にと現れる。
「・・・・まったく、君はせっかちだね」
「・・・・!」
そして、その階段からゆっくりと・・・・まるでその空間だけ重力が違うかのように、重そうに足を上げるエルフの姿――――現最強と思われるエルフの姿だ。
「主様、お邪魔しております」
さっきまでの態度と打って変わり、ハルはちゃんとした言葉づかいで、その階段から現れた現最強にお辞儀する。
「いいよ、ハルちゃん・・・・君の性格も分かってるからさ、楽にして」
「・・・・はい!主様ぁ!お邪魔してますぅ!」
しかし、そんなハルも束の間――――「楽にして」という現最強の言葉に、まるで敬礼でもするかのようにニヘラァと笑っておでこに手を当てる。
「・・・・本当に、準備が終わればちゃんと道は用意するつもりだったのに・・・・まあいいや、とりあえず上っておいでよ、私の部屋に――――」
そう言って、その現最強はまた消えていく。
「・・・・おい、どういうことだ?」
「どういうことだと言われましてもぉ・・・・ここの道を開けるには主様に交渉しなければいけないんですよぉ・・・・だから、決まった位置で植物を伝って主様に連絡すればぁ、こうして開けてくれるってわけでぇ・・・・」
そう説明するハルの言葉と、現最強の言った「道は用意するつもりだった」という言葉に、ここまでハルを連れてきた意味はなんだったんだという若干のショックを受けながら――――
「・・・・まあ、いいか・・・・今は上に行こう」
そう言って、現れた階段を上ろうとすると・・・・
「あ、私もぉ連れていってくださいよぉ・・・・流石に何の説明もなしにここまで連れて放置じゃ困りますしぃ、それに報酬もぉ・・・・」
「分かったよ・・・・勝手にしてくれ」
そう言うハルの頼みに、特に拒否する意味もないので許可をすると、ハルはニッコリしながら後ろに付く。
――――――とりあえず、現最強をどう倒すかだけを今は考えよう・・・・不死身の最強・・・・あいつの能力は一体どんなものなのか・・・・そして、さっきから話している準備と言うのは――――?
様々な疑問が浮かびながらも、ゆっくりと階段を上り、倒すという決意だけを固めて――――




