交渉と策略
カツカツカツと・・・・靴のならす音がする。
その音を聞きながらフロワは申し訳なさそうに俯き、そんなフロワをルリは慰めるように撫でていた。
「・・・・本当に申し訳ありません・・・・ラブさん」
「いや、別に・・・・ただ困ったな」
「はい・・・・すいません」
最初の失敗から数えて計5回、なんどもフロワに対し【創造】を使ったが、全てが失敗に終えていた。
架空の物や、物理的に作り出せないものは【創造】できない可能性、その可能性を考え、一番想像しやすいスタンガン・・・・俺の持っているものを想像させたが、それも失敗に終わった。
それは、フロワが俺のことを完全に敵だと認識しきれていないか・・・・それとも俺がそう認識できていないか・・・・。
それとも、相手というのは俺達の認識のことではなく、また別のことなのかもしれない。
いずれにしても、この問題を解決できないということは、ほぼ詰みに近かった。
「子供のエルフが・・・・ルリがあの天井を変形させることができればな・・・・」
「他に考えられる手段としては・・・・他のエルフ、大人のエルフに開けてもらうよう頼むとか?」
「・・・・でも、そのエルフはどうやって用意するんだよ」
「それはその・・・・この子に頼むとか?」
そう言って、フロワはルリの方を見る。
「・・・・子供がいけないようにしてるのに、子供のルリが頼んだところで開けてくれるのか?」
「うっ・・・・それは・・・・」
そこまで言うと、フロワは言葉に詰まる。
やはり難しいか・・・・。
「・・・・ルリを人質に――――ダメか」
ルリを使って交渉材料にしようと提案すると、こちらを凄い形相で睨みつけるフロワ・・・・しかし、能力が使えない以上、これ以外の策は思いつかないのだが――――
「・・・・待てよ?一人いたな・・・・言う事聞きそうなやつ」
「えっ?それって・・・・?」
ニヤリと笑い、頭の中で策を考えると・・・・フロワは不思議そうな顔で、ルリとともにこちらを見つめていた。
***
階段で下へ・・・・一階層との狭間まで行くと、まるで何もなかったかのようにエルフたちは賑わっていた。
しかし、階段の目の前・・・・その二人のエルフは、階段の前で立ち尽くしていた。
「いたいた・・・・」
「いたって・・・・あの二人ですか?協力してくれるエルフっていうのは」
そのエルフは、サラとハル・・・・姉妹のエルフで、リンとともに俺のことを管理していたエルフだ。
サラはともかく、ハルはまだ協力・・・・というよりかは、交渉に応じてくれるかもしれない。
ただし、その方法は十中八九R18・・・・少なくともR15展開だ、さらに言えばGの方ではない。確実にHの方だ。
「それに、サラをまず引き離さないとハルは本性を隠すだろうし・・・・結構高難易度だな」
「・・・・その、サラさんっていうのは?」
独り言を呟いていると、フロワがそれに反応して質問を投げかける。
「サラって言うのはあの右側にいるエルフだ、左にいるハルっていうエルフの姉で・・・・結構真面目だから俺達のような奴らには協力してくれないだろうな」
「なるほど・・・・」
フロワは納得した様子でそう言うと、前へ出て階段を下りようとする。
「お、おい」
「任せてくださいよ、とりあえず引き離せばいいんですよね?」
「確かにそうだが・・・・本当に大丈夫か?」
不安な声でそう問うと、フロワは振り向きニコッと笑って――――
「大丈夫ですよ!これでもエルフは一度倒してるんですから!」
自信満々に答えるフロワに、やはり若干の不安を覚えるが・・・・それでも何か作戦でもあるのだろうと感じとる。
「・・・・じゃあ、任せたぞ?」
「はい!」
そう言って、フロワは階段を走り下りていく。
――――――さて、問題は・・・・。
チラリと斜め後ろを見る・・・・陰に隠れて小さくそこに立っているのはルリだ。
置いていくのも何ともなぁ・・・・だが、修羅場になりそうな場所に連れていくのも・・・・。
「・・・・大丈夫だから」
「!」
「行っていいよ・・・・大丈夫だから」
「そ、そうか・・・・」
幼いながらにも気を使うルリに、どこか申し訳なさや己の情けなさを感じ、自然と声が小さくなってしまう。
「・・・・じゃあ、行ってくるから・・・・もう自由にしていていいぞ」
「・・・・うん」
頷くルリだが、動く様子もなく、その場でずっと佇むばかりだ。
――――力になれなかった己に不甲斐なさを感じている・・・・のか?まあいいか・・・・とりあえず、後はフロワを――――
下へ駆け下りていったフロワの行方を見ると、フロワはすでに階段を半分以上下りていた。
・・・・自分も急がなければな・・・・まあ、今はフロワがどう動くかだが――――
そう思い、フロワの様子を見ながら階段を下りていると、突然フロワがサラに飛び掛かっているのが見えた――――




