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それぞれの思い 5

――――あの人・・・・あの「人」か・・・・。

 

 マリーの言葉を、何度も頭の中で復唱する。

 

 マリーの言う・・・・「あの人」という言葉に引っ掛かる。

 

 何故そこまでするのか・・・・自分の知らないところで恩があったのかもしれない――――しかし、それは肩を負傷し、自分の命が危うい場面でも返すような恩なのか。

 確かにマリーは人に対して優しい。

 恩があろうがなかろうが、マリーは人のためならば、誰と限らずほとんどのことを助けてくれるだろう。

 しかし――――自分の命を賭けてまで人を助けるようなバカではない。それは、幼馴染である俺が知っている。

 

 ・・・・これも、あいつの能力なのかもな。


 マリーが言う「あの人」、ウィスの言う「王」・・・・。

 だが、そいつの能力がどんな能力かは分からない・・・・。


「ぼーっとして、死んでもしりませんわ!」


 肩を負傷しながらも、マリーは無理に引き金を引く。


「うおっ!」

 

 弾丸は足元に・・・・しかし、それを間一髪で避ける――――にしても、肩が負傷しているにもかかわらず、狙いにずれがない・・・・「私が外すことはありえない」という言葉が、ただの自信から来るものではなく事実だという可能性も、あるのかもしれない。


「・・・・くっ!」


 マリーは、銃の反動に耐えきれずに手から銃を落とす。


「もうやめとけよ、これ以上やっても傷が広がるだけだ」


「まだ・・・・まだですわ・・・・!」


 しかし、諦めてたまるものかと、マリーは落ちた銃を拾って再び銃口をこちらへと向ける。


「・・・・やめておけよ」


 その忠告すら届かず、マリーは引き金を引く・・・・しかし、弾は一向に当たらない。


「ぐっ・・・・!」


 銃を持っているほうの腕を、反対の腕で支えながら、マリーは構える――――

 何故そこまでするのか・・・・皆目見当もつかない。


「まだ・・・・!まだやれますわ・・・・!」


 その声は、恩義を返すため・・・・それだけではないように感じられる。

 何か恨みを・・・・何か憎いことでもあるかのように。


「・・・・何かあったのかよ」


「あなたには、関係ありませんわ!」


 図星でもつかれたのか、マリーは冷静さを失い、引き金を連続して引く――――

 そして、カチッカチッ・・・・と、弾が出なくなる。


 ――――弾数の数え間違い、狙う位置の変化すらない・・・・それにすら気づいていないような表情だ、それほどまでに何か――――?


 どれも、冷静さを欠いたからこそ起こっているミス――――本来のマリーならば、少なくとも俺の知っているマリーならば、こんな初心者的ミスは絶体にしない。


「・・・・まあ、話は後でじっくり聞くから、今は大人しく――――ッ!?」


 すると突然、地面が揺れ始める――――いや、地面が()()()()()


「・・・・私たちエルフは、木を操ることができますの――――だから、この()()()()()()()も、操ることが出来ますわ!!」


「そんなのありか・・・・ッ!」


 あまりの揺れに立つことも困難で、地面に膝をついてしまう。


「・・・・これで、あなたの銃だって照準がずれますわ・・・・」


 してやったりと、そう言わんばかりに笑うマリーに・・・・「その程度か?」と、さらにあざ笑う。


「・・・・ッ!なんですの・・・・?!その顔は・・・・!」


「・・・・いや、別に照準なんていいんだよ・・・・お前は知っているはずだ、跳弾と呼ばれる――――この弾丸を!」


 そう言って、天井に向けて人差し指を向ける。


「・・・・ッ!?まさか、そんなことをしたらあなたにまで当たりますわ!それに・・・・私に当たるかも分からないのに――――」


「だったら、当たるまで撃つまでよ!!」


 天井に向けた指をそのままに、いくつか弾丸を発射する。

 音は3つ――――その見えない跳弾たちは、幾度も壁に当たりカン、コンと音を鳴らしたてる。


「・・・・クッ!植物たち、壁を開けますわ!」


 マリーのその言葉に反応し、この階にあった植物の壁が無くなり、柱だけがこの場所に残る。


「・・・・これで、跳弾は当たりませんわ・・・・」


 確かに、壁に反射していた音はなくなり、完全に外に放り出されたことが分かる。

 だが、それに集中しすぎて――――床の植物の操作がおろそかになった――――ッ!


「うおおおおおおおお!!!」


「!?」


 マリーに向かって一直線に走る。

 そのまま加速する体はマリーに当たり、開いた壁から外に放り出される。


「な、何をやってるんですの!?」


「どうせ死ぬなら一緒にと思ってな!!」


「グッ!」


 マリーは隠し持っていた木を取り出し、紐を作り出すと俺たちがさっきまでいた階層に向かって伸ばす。

 紐はその階層の地面と不思議につながり、ピンと一直線に伸びて一瞬だけマリーの体重を支える――――が、


「う、うわ」


 あまりの勢いと重さに耐えられず、マリーは紐を手放してそのまま地面に一直線に落ちていく。


「キャアアアアアアアアアアアアアアア!」


 ついに恐怖に耐えられなくなったのか、マリーは天に向かって声を上げる。

 そんなマリーを見ながら、俺は後ろからスタンガンを取り出し――――、


「マリー!」


「!!」


 俺の呼びかけに反応し、マリーは落ちながら横目でこちらを見る。

 俺はすかさずスタンガンをマリーに向け――――、


「あなた・・・・まさか、ショ――――」


 その台詞が終わらぬ間に――――スタンガンをマリーに当てた。

 マリーは「ぐっ」と微かに声を上げると、そのまま気絶してしまう。


 しかし地面はすぐそば、あと数秒でぶつかるというところでフワリとマリーと共に俺の体は浮き上がる。


 ――――そして、そのままユルリと着地した。


 ・・・・最初に落ちた時、一緒に落ちたはずのスマホは液晶も割れず当たり前のように起動した。

 つまり、俺と一緒に浮かび上がったことによって無事だったという事だ。

 ――――となると、話は簡単。【飛翔】という能力の効果は俺自身だけにかかるわけではなく、俺を中心に半径何メートルかで起動しているということだ。

 だから・・・・たとえ誰かと共に落ちたとしても、無事に着地できると・・・・。


「仮説だったが、無事でよかった・・・・それに、マリーが紐を作ってくれたおかげですぐにあの階層に戻れそうだな」


 ともに落ちたマリーは眠るように地面に横たわっていた。

 そのマリーの頭をそっと撫でて――――、


「・・・・・・さあ、戻るか」



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