それぞれの思い 2
「・・・・マリー」
「・・・・あなたたち、何をしているんですの?」
何故こいつがここに・・・・いや、それよりも事情を知らない?何も聞かされていないのか?
木の壁から突如として現れたマリーに、そんな疑問が浮かぶ。
「何をしているかと聞いていますわ!」
ずっと黙っていると、マリーがこちらに対して怒鳴る。
幼馴染ながらすごい迫力だ・・・・思えば、マリーがこれほど声を荒げるのを見るのは、昔に一度二度あったかなかったかぐらいだ。
「・・・・オイラたちは「王」を倒すためにここに来た!おめぇらの言う「主」とやらを倒しにな!」
ウィスがマリーに対し言う。
「「王」・・・・「主」・・・・なるほど、あなたたちはあの人を倒しに来たんですの・・・・」
「あぁ、だから邪魔するなら容赦は――――!」
「・・・・ウィス!」
ウィスの体に穴が空く・・・・。
痛みのあまり、ウィスはその場で倒れてしまう。
その傷からは、とめどなく血が溢れ出ている。
「ウィス!」
「・・・・戦場で話している余裕があったら、まずは自分の命の危険を考えるべきですわ――――ましてや、仲間を殺すと宣言しているならば警戒は常にするべきですわ」
マリーは、片手に持った拳銃をこちらに突きつけながらそういう。
銃・・・・あれも木から作り出したのか?!
「・・・・では、さようなら」
そんなことを思考する隙も与える気はないらしく、容赦なくマリーは引き金に指をかける。
――――まずい・・・・!
「麻里 沙理!後ろを向け!」
「・・・・!?」
その言葉を聞くと、マリーは後ろを向こうとして体の向きを変えようとする・・・・。
しかし、途中でハッと気づいたような表情をすると、再び元の方向を向いて銃を構える・・・・しかし、そこに標的であるはずの敵の姿は無く・・・・。
「今のはいったい・・・・?いや、それよりも何故私の本名を・・・・!?」
不可思議なことが連続で起こり、マリーは困惑の表情を浮かべる。
――――【洗脳】で標準をずらさせてもらった・・・・そして視界から外れた瞬間に階段へと逃げさせてもらったが・・・・あそこから隠れるにはここしかない、いずれバレるだろう。
――――とりあえず、今はそんなことより・・・・
「・・・・ウィス、大丈夫か?」
「・・・・ヘッ、オイラとしたことが・・・・まさか不意打ちをくらうなんてな」
ウィスにまだ意識があるかどうかを確認するため呼びかけると、ウィスはまるで余裕そうに笑いながら答えてくれる。
しかし、明らかに無理をしているのが目に見えて分かる。
「・・・・そういえば俺が矢を喰らったとき、傷は完璧に癒えていた・・・・魔法かなにかかもしれないが、傷を治す薬草のようなものがあるかもしれない、それがあれば・・・・!」
薬草を探すために下の階へと移動しようとすると、服を掴み止められる。
「いいよデカブツ・・・・オイラのことはオイラがよく分かってる・・・・これじゃあ間に合わねぇ、今はあいつを倒すか・・・・逃げることだけを考えろ」
「・・・・・・!」
「・・・・デカブツ、オイラは友達が欲しかった・・・・一緒に笑って、一緒に何かを達成するような友達がさ・・・・だから、オイラは無理だと分かっていてもおめぇに頼もうと思ってたのさ、「オイラの友達になってくれ」ってな」
ウィスは、まるで遺言のように、最後の言葉のように話し始める。
「でもさ・・・・分かってんだよ、おめぇがオイラとは友達になってくれないってな・・・・おめぇは人を区別しない、それはオイラも含んでる・・・・だから、友達になれたとしてもそれは形だけだ、所詮見た目だけのもんだ・・・・でも、それでもいいんだよ・・・・初めてオイラのことを平等に見てくれた、それだけでいいんだ・・・・」
「・・・・・・」
「けどさ、この話を聞いて、少しでもおめぇの・・・・オイラが相棒と呼んだ、おめぇの記憶に残ってれば・・・・悲しんでくれればいいなぁ・・・・」
・・・・それは、一種の神頼みのようなものだった。
まるで、最初から無理だと分かっているような・・・・そんな声だった。
――――少しでも悲しんでくれればいい・・・・か・・・・
「・・・・そんなの、できねぇよ」
「・・・・あぁ、分かってるよ――――だからさ、せめておめぇが死んだときに悲しんでくれるような仲間を作れよ?・・・・これは、おめぇの相棒からの、最後の頼みだからよ――――」
――――どうして、最後まで他人のことを思えるのだろうか。
まだ会って一日しか経っていないじゃないか・・・・何故そんなことを言うんだ・・・・
「・・・・なるほど、そこにいますわね」
「――――――!」
マリーの声だ・・・・。
どうやら、見つかってしまったようだ・・・・しかし何故?
床を見て、ハッと気づく――――
・・・・気を付けたつもりだったんだがな、少しこぼしていたか。
それは、ウィスの血の跡――――微かにだが落としてしまったそれが、どうやら見つかってしまったらしい。
「・・・・ケッ、まさか死に場所がクソ女どもの住処だとはなぁ」
「・・・・安心しろ、まだ殺されるわけにはいかねぇよ」
「・・・・そうだよな、おめぇは殺されるわけにはいかねぇ・・・・だから、オイラを置いてさっさと逃げろ!デカブツ!」
――――いや、まだだ・・・・まだ逃げるわけにはいかない。
・・・・どうしてかは分からない、たかが慈悲だけで自分の公平さを、信念を曲げるわけではない。
しかし、どうしてもウィスを置いていきたくはないと・・・・そう思ってしまっている。




