盤上の戦士 2
階段を上ろうとすると、その後ろからウィスとフロワが付いてくる。
倒れているエルフ、ロラに今更気づき、フロワが「うわ!」と声を上げるのが聞こえる。
「ちょ、ラブさん!この人大丈夫なんですか!?」
「死にはしない、その件についても進みながら説明するから、とりあえず行くぞ」
そう言うと、フロワは疑問を浮かべながら渋々付いてくる。
そんなフロワに、これまでの経緯を話しながら階段を上っていく。
どうやって檻から逃げたのか、どうやって穴を開けたのか、色々な質問を受け、それを全てわかりやすく、納得のいく形で説明をする。
「・・・・なるほど、とりあえず何故こんなことになっているのかは分かりましたが・・・・別に戦う必要はないんじゃないですか?」
「・・・・というと?」
「この森の壁を破壊して、外から上へ行けばいいじゃないですか!」
フロワは、まるで名案を思い付いたかのように、どや顔で言う。
「・・・・もう試した、俺の知っている限りでの壁の破壊をな・・・・ただ、どうしても壁の再生速度に追いつかない。破壊しても、何度も何度も再生するから・・・・諦めて上ることにしたんだ」
ドリルで削ったり火で燃やしたり・・・・最終手段として爆弾も使ったが、それも再生に追いつくことはなかった。
「この木はエルフたちが使うような木とは何かが違う・・・・これはただの勘だがな」
「勘・・・・ですか」
あくまで予想だと言うラブに、若干の不安を覚えながらフロワは階段を上る。
「おい・・・・そろそろ7階層目だぜ」
日本語で会話を続けるラブに、ウィスは7階層目が近づいていることを知らせる。
階段を上り顔を出すと、そこにいたのは、やはり鎧を付けて佇む金髪のエルフ・・・・
「・・・・話は主から聞いた、では行――――――」
――――――そのエルフが準備を整え、いざ戦おうとするとき・・・・そのエルフの体は、すでに地面に対して平行に倒れていた。
「ちょ、ちょっとラブさん!」
「・・・・ん?」
フロワがラブへと呼びかける――――
「な、どうして・・・・どうして不意打ちなんかしたんですか!?」
――――エルフが準備を整えている間・・・・ラブはその距離をすぐに縮め、スタンガンを喰らわせた。
しかし、それは正々堂々とは言い難い・・・・不意打ちという形だった。
「・・・・別に、戦法としては普通だろ」
「でも・・・・そんなの卑怯じゃないですか!」
「卑怯・・・・?」
その言葉を聞き、ラブは不思議そうな顔をする。
何を言ってるんだ?と――――
「卑怯なんておかしいだろ、あっちはこっちが階段から来ることを知ってるんだ、だったら対策だってできるし、あいつらのほうが有利・・・・卑怯なのはあっちだろ、そしてその準備をこっちが待つなんておかしい・・・・それに――――――――殺してはないんだから、いいだろ?」
「な――――!」
・・・・・・それは、フロワの願いだった。
「もう人が死ぬのを見たくない」という、最初の異世界で話した・・・・フロワの頼みだ。
しかしその頼みを今、ラブは逆手にとり、「殺してないからセーフだ」と「お前の頼みは守っているから」と・・・・そう謂う。
「・・・・デカブツ、オイラの発言を気にしてんのか?」
ウィスも不意打ちという行動に何か思うことがあったのか、自分のせいかと問う。
「・・・・いや、お前は悪くない――――そう思っておけばいい」
ラブはその問いに、否定をするように・・・・しかし濁すように、回答をあやふやにする。
「・・・・ラブさん、本当にそれでいいんですか?」
「それでいい?何が?」
「――――!」
分かっているはずだ、それが非人道的だと、その行為が褒められたことではない行為だと・・・・
しかし、それでもとぼけようとするラブに、フロワの苛立ちは増していく。
「ラブさん――――!あなた――――」
「あ、おねぇさん!」
「・・・・!」
感情的になり、ついに何かを言おうとしたフロワの言葉に重ねるように、エルフ語で、しかし幼い声で、「お姉さん」と呼ぶ声が聞こえる――――
「・・・・!ちょっと!どうしてここに?!」
「おねぇさん、ここは来ちゃいけないんだよー」
先ほどまでフロワとともに行動し、生活してきた幼エルフだ。
日本語で話すフロワの言葉は幼エルフに通じず、エルフ語で話す幼エルフの言葉はフロワに通じない。
そんな状況のやり取りを、両方の言語が分かるラブは無言で眺める。
「・・・・ウィス、行くぞ」
「・・・・いいのかよ」
そういうウィスの言葉にラブは反応せず・・・・
しかし、その沈黙を肯定と捉えて、ウィスは無言でラブに付いていく。
「あ、ちょ、待ってください!」
スタスタと、進んでいくラブたちにフロワは焦り気味に付いていく。
「あ、まってー!」
フロワがラブに付いていくと、幼エルフはフロワを追いかけて・・・・
ラブを筆頭に、合計4人・・・・うち1人はエルフという構成で、ラブたちは次の階層へと進む。




