盤戦 4
ひたすら階段を上り、5階層へと着く。
車の壁が上手くいったようで、エルフたちが上ろうとして何度も失敗している。
これでは、当分の間はこちらへは来れなさそうだ。
「まったく、本当に面倒くさいことをしてくれたね」
「!?」
「本当に・・・・面倒くさい」
どこからか声が聞こえ、足を止める。
その不思議な声は壁から――――自分たちの目の前の木の壁から聞こえてくる。
すると――――壁から頭が、金色の髪が出てくる――――
「・・・・!おめぇ!」
「・・・・やあ、久しぶりだねウィスくん?私のこと・・・・覚えてくれてるかな?」
エルフ語でそう言う少女は、手から足の順で体を出すと、自分の顔を指さしながらウィスに問う。
・・・・!こいつ、あの時の!
――――その少女は、エルフにして日本語を話す少女。
最初にこの森に来た時、地下へ行く際・・・・作業場へ行く際に出会った少女だ。
そして――――俺の中では、「現最強」の可能性が最も高い少女だ。
結局、スマホが無い限りは確かめようがないわけだが・・・・
「ケッ・・・・おめぇのことは忘れたことねぇよ、なんせオイラを・・・・たった3年だが、育ててくれた唯一の存在であり、名付け親だからな」
「そうそう・・・・あれから二年か、早いものだね――――てっきり忘れられたと思っていたよ」
名付け親だと、育ててくれたと言うウィスだが、その声と顔は険悪なものだった。
しかし、そのあからさまな敵意が自分に対して向けられているにもかかわらず、その少女は落ち着いた声でそう言う。
なるほどな、ウィスは幼いころ「放り出された」と言っていたが、それは3歳の時だったってことか。
だから村まで歩くことが出来た・・・・それでも、たった3歳の子供があそこまで行くのは――――相当の体力を使ったことだろう。
少女は体を完全に出し切ると、手を上にし、体を伸ばしてこちらを見る。
「それで・・・・あの車を作ったのは、どっちかな?」
さっきまでの言葉とは違い、重みのある声で少女は問う。
こいつは・・・・あの乗り物が「車」だと知っている――――やはりこいつが「現最強」で間違いなさそうだな。
「ケッ・・・・あの乗り物を作ったのはオイラだ、王である――おめぇを倒すためにな!」
ウィスはさらに敵意を増し、その問いに答える――――
王・・・・つまり、こいつが本来の俺たちの倒すべき目標ってことか。
ちょうどいい、こいつが「現最強」でなくとも、「王」なら倒す理由がある・・・・
つまり、間違えて「現最強」でないやつを殺しても、「王」なら理由があるから正当化できる。
革命や反乱によって王が殺されるなんて――――歴史上、よくあることだ。
「へぇ・・・・私を倒す――――なるほど、あの人の言っていた通りだ」
何かを悟ったように言う少女に、ウィスは疑問符を浮かべる。
しかし、ウィスは何かを思いついたようで、ニヤリと笑って――――
「ま、そんなことは・・・・どうでもいいんだがな!」
ウィスは、その少女に向かって飛び掛かる――――
その手には、今まさにキューブから作ったのだろう短剣、それを少女の喉元を狙って突き刺す――――――――だが、
「な・・・・!」
「・・・・まったく、今は話の途中だよ?」
確かに喉元に刺さった短剣は、そのまま柄の部分まで刺さっていく。
そして、少女の背後に「カラン」という金属音を立てて落ちる。
そう――――貫通したのだ、貫通して・・・・少女の背後に落ちたのだ。
「まあいいや、『不老不死』である私を倒すのは不可能だからね」
「不老不死!?」
そう言って驚くのはラブ・・・・
「うん、不老不死だ・・・・さっき私が壁から出てきたのも、見てもいないのに車に乗っていたのを知っているのも、この不老不死のおかげさ――――高速再生する私の体は、どこかに私の一部があればそこに復活できる。つまり、指紋から目だけを再生・・・・体を再生することもできるのさ」
――――なるほど、つまり事前に壁に触れていたことによって、その指紋から体を再生・・・・まるで壁から出てくるように、体を再生させたわけだ。
「・・・・へえ、それは――――服すらも再生できるのか」
「!・・・・いいところに目がいくね・・・・」
壁から出たその少女は、服を着ている――――
指紋から体を再生させるのなら、再生させるのは体だけ、服は着ていないはずだ。
つまり、これがトリックの全てではない――――まだ、何かある。
「・・・・そうだね、せっかくだ――――私もそのゲームに乗っかるとしよう」
少女は顔を上げ、視線を上に移すと――――
「私の部下を・・・・倒せるものなら倒してきてよ、私が戦うのは――――面倒くさいんだ」
――――すると、突然木が動き出す・・・・
「これは・・・・!」
木が動いている。
それは、今自分たちがいる階段も例外ではない。
「ゲームのステージを作らせてもらった、ぜひ各ステージの中ボスを倒して、私のところまで来てよ」
そういうと、少女はどこかへ消えていく。
自分たちが乗っていた螺旋階段は床のようになり、まるで闘技場のような円状だ。
しかし、階段が無くなったというわけではない、場所が変わっただけだ――――しかし、それは随分と遠い場所にある。
「・・・・なるほどな、一階層ずつ敵を倒して頂上へ行けと――――そういうゲームなわけだ」
ラブは歯ぎしりをすると――――
「何が面倒くさいだ・・・・!面倒くさいことしやがって・・・・!」
その少女への恨み言を言うのだった。




