盤戦 3
草原を車で壮快に駆けぬける二人――――
車で行くにはやはり早く、エルフの住む町はすぐ近くにまで来ていた。
「よし、じゃあまずは穴開けたところに突っ込むぞ・・・・!」
「あー・・・・相棒、それは無理そうだ」
そういうウィスが見ているのは、確かに弾丸を撃ち込んだはずの木の壁――――
しかし、開いていたはずの穴は、すでに半分ほど閉じかけている。
「・・・・仕組みがさっぱりわからねぇ、まるであそこの木だけが急成長してるみてぇだ」
「・・・・まあ、少しこいつの寿命が短くなっただけだ――――関係ねぇ」
そう言いながら、ラブはアクセルを思い切り踏み込む。
「ウィス――――予定通りに行くぞ、あの穴までの道を作れ」
「――――まあ、大方予想はついた・・・・じゃあ行くぞ」
ウィスは窓から顔と手を出す――――その手のひらには白いキューブが一つ・・・・
それは車の行く先に坂道を作り出す・・・・その道に沿うように、車は坂道を上っていく。
「――――――今だ!降りろ!」
ラブの合図で、二人は車から降りる。
二人の体はそのまま地面に叩きつけられ、坂道をしばらく転がると制止する。
しかし車は動き続け、そのまま壁へと一直線に進む。
そして、車が壁とぶつかるとほぼ同時――――
――――ドゴーーン!
と、爆発音が鳴り響く
「・・・・ったく、あんなもんをずっと積んでんだから、こっちはハラハラしてしょうがなかったぜ」
「結果オーライだ、おかげで――――道も開けた」
車を中心に爆発した壁は、人が二人通るには十分なほどの穴が出来上がっていた。
ボタンを押せば信号が伝わって爆発する爆弾だ。
元は、車を処理するために・・・・「異世界人」だとバレないようにするために持ってきた爆弾だが――――今回は、それが役に立った。
「さ、閉じないうちにさっさと入るぞ」
脱げたフードを被り直し、そう言って急ぎ気味に中へと入る。
案の定、木の壁は再生を始めて、開けた穴の半分がすでに閉じられている。
「さて――――思った以上に低い場所に入ったな」
「まあ計算的にこの場所が一番安定しては入れただろ、あまり上すぎてもオイラの建築が間に合わずに坂道が途切れちまう」
「ま、ちょうど階段に出たみたいだし――――ここからは足で行くか」
上を見上げ、さらに続く階段を確認する――――
今自分たちがいるのは丁度4階層あたり、一番上に行くにはあと5階層は上らなければいけなさそうだ。
「おっと、ゆっくりしている暇はなさそうだな・・・・」
下から続々と装甲をしたエルフたちが駆けあがってくるのが見え、ここが敵地だと再確認させられる。
「もう一回あの乗り物を作るのはダメなのか?」
「ダメだ、それは私的事情があってな・・・・」
もう一度車を作り上まで上ったとしても、それはこちらに来ている「異世界人」に見られれば、俺が「異世界人」だとバレることになる。
そうなれば俺はレギュレーション違反でゲームオーバー・・・・本末転倒だ。
「・・・・・・いや、待てよ・・・・その案、いいかもな」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ウィスへと内容を伝えると――――
「ケッ、考えることがえげつねぇ・・・・だが、悪くねぇ」
下から駆け上がってくるエルフたちに向かい、ウィスは手のひらにキューブを作り出す。
そのキューブは、さっき爆破した車と同じものを作り始める・・・・完成したところで、すぐさま乗り込むと――――
ラブは、車をバックさせた。
ラブはすぐさま車から降りると、車だけが階段を下っていく。
「動く壁――――これほど邪魔な障害物はないだろ」
下ってくる車に、エルフたちは声を上げながら階段を一斉に下り始める。
中には無理にでも車を超えようとするが、車に巻き込まれたり、階段から落ちる者もいた。
「異世界人」が車を見れば、当然自分以外の「異世界人」が来たと思うだろう――――
しかし、たとえ異世界の物があろうが、それを作ったのが、考えたのが誰かさえ分からなければ――――誰が「異世界人」なのかは分からないだろう。
それがウィスだと思われることもあるだろう・・・・しかし、俺さえ「異世界人」だと思われなければ、当然「レギュレーション違反」にはならない――――
「さ、行くぞ」
そう言って、ラブとウィスは階段を駆け上がる――――




