地下の最強 6
笑いながらこちらを見て、「何でも話す」と言うウィス――――少しは心を開いてくれたらしい。
本当に「何でも話す」のなら、やはりここは地下にいる理由を聞きたい――――が、それ以上に気になることがある。
「・・・・どうやってこの地下を作った?」
「・・・・・・」
その質問をすると、ウィスはこちらを見て黙ってしまう。
しばらくすると、ウィスは口を開き答えてくれる。
「さっきも言ったろ・・・・「体質」なんだよ、作ろうと思えば作れてしまう」
「作るための材料とかは?」
「さあな、頭の中で想像した物は「作ろう」と意識すれば勝手に目の前に作られる・・・・例えば、こんな風にな――――」
そういうと、ウィスの手の中心から白いキューブのようなものが出てくる。
そのキューブは何度も形を変えると、円形型の皿へと変化する。
それを掴み、ウィスは机の上に置いてある板の上へとさらに置く。
「・・・・な?材料なんていらねぇんだ、作ろうと思うだけ――――それだけなんだよ」
「・・・・つまり、お前の言うところの、あの「鏡」や「目」というのもお前が想像して作ったのか?」
「あぁ、そうだよ」
――――だとしたら、こいつは天才だ。
確かに「こんなものがあれば便利」といって考えるのは簡単だ。
そして、こいつの能力を使えばそれも実現できる・・・・だが、ここまで現代の機械と近しいものを作れるのは、機械がどういう原理になっているか、どう動けばいいのか、それを理解していないといけない――――
・・・・そこまで考えていたとしても、考えていなかったとしても――――こんなものを「作ろう」と思ったのは、天才以外の何ものでもない。
「・・・・尚更ここにいる理由が分からない、それだけの能力を持っているなら、誰もお前のことを手放そうとはしないだろ・・・・」
――――いや、むしろ「手放そうとしないからこそ」なのか?
手放そうとしないからこそ誰からも狙われ、姿を隠すことにした――――特に、あのエルフたちには。
それなら地下にいる理由も納得だ、姿を地下へと隠すことによって、誰からも狙われずにすむ・・・・だから「楽園」か――――
「いいや、むしろ逆だ」
「!?」
「みんながオイラのことを手放そうとしたんだよ、誰からも必要とされず、誰からも愛されない――――だからオイラはここにいるんだ」
「必要とされない・・・・?何故――――」
「・・・・オイラ、あの女どもと地上の人間との子供なんだよ」
吐き捨てるように、ウィスはそう言う。
「そんなオイラを最初に捨てたのはあの女どもだ、忌み子だと言われ、外へと放り出された・・・・まだ幼かったオイラは、なんとか歩き続けてこの場所へと辿り着いた、あそこに行けば助かるかもしれないと――――そりゃあ必死だったよ」
ウィスは続けて言う。
「だが――――ここの奴らもダメだったな、オイラを必要とするどころか・・・・あいつら、他人のことすら考えちゃいねぇ」
「・・・・確かに、ここの人間は異様に他人を避けている気がする。何故なんだ?」
いくら余所者だからといって夜に外で放置する村人――――
同じ村に住んでいるというのに会話をする様子するもない村人――――
・・・・どれも、他人を嫌っているかのような行動だ。
「・・・・生贄だよ」
「・・・・?」
「たまにあの女どもが来るんだよ・・・・今日みたいにな」
「あぁ・・・・」
視察といって民家を回っていったエルフたちを思い出す。
そしてその中に・・・・マリーがいたことも。
「今日は何もせずに帰ったようだが・・・・いつもなら違う、一人男を差し出せと・・・・そう言ってくるんだ」
「男を・・・・?何故?」
「さあな、それに関してはおめぇが一番知ってんじゃねえか?あの森から逃げてきたんだろ?」
「・・・・・・」
あの森にいた時のことを思い出す・・・・ひたすらにやらされた仕事、自分のやっていた仕事はオスとメスの仕分けだったが・・・・一体何の意味があるのだろう。
「まあよ、その生贄を差し出す制度のせいであいつらの仲は最悪だ、次は誰を差し出すか、誰を犠牲にするか――――あいつらの頭はそれで一杯、だから疑心暗鬼になってんのさ・・・・」
――――なるほど、それで檻に閉じ込められていた奴らも話をしようとしなかったのか。
自分を犠牲にしたやつら、自分をはめたやつら・・・・そんな奴と同じ空間だなんて、当然空気も最悪だわな
「おめぇ、空き家を貸してもらったろ?あの家、実は牢屋みたいなもんでな、次の生贄はあそこに閉じ込められるんだよ」
「な――――!」
「いやあ、運が良かったな」
そう言ってウィスはゲラゲラと笑いだす。
まさかあの家がそんな恐ろしいものだったとは・・・・
それにしても、檻を出たらまた閉じ込められるって・・・・どれだけ運がないんだよ。
「・・・・だから、オイラはこの地下に逃げたのさ・・・・あんなところにいたら、次に生贄にされるのはオイラだ・・・・いや、生贄にされるのはいい、ただ――――それでも必要とされないのは、オイラは嫌なんだ」
そういうウィスは、やはり悲しげに・・・・
「・・・・泣けよ」
「泣かねぇよ、ガキじゃねえんだ」
「ガキとか関係あるか?泣きたい時に泣け、わざわざ感情を抑えて我慢するなんてのは「大人」とは言わねえんだよ、それを全て受け止めるからこそ「大人」なんだ、それに――――お前はまだ10いくつかだろ、まだまだ全然ガキだよ、甘えろ」
「あぁ!?てめぇこそガキだろうが!」
「おいおい、俺がガキなんて冗談だろ」
「・・・・!じゃあもう一回勝負しろよ、それでどっちがガキか決めようじゃねえか」
「そんなゲームでどっちがガキかを決めるなんて・・・・発想がガキだな、だが――――いいぜ、勝負しよう」
「んじゃやるぞ!ほら、早く箱並べろ」
「はいはい」
お互いの了承を得たところで、皿をどかして板の上にコマを並べていく――――
その後、何度も理由を付けてゲームを繰り返したのは言うまでもなく・・・・結局、夜が明けるまで二人はゲームを楽しんだ。




