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異世界無双ハーレムを邪魔されるのは、どんな気分ですか?

木の板でできた床に、質のいいベッド、部屋の中に置いてある机の上に巻物型の紙を置き、そこにゆっくりと図面を書いていく。


「・・・わざわざ宿の部屋まで借りて・・・何やってるんですか?」


――――宿の一角部分にあたる部屋、隣の部屋には誰もいないということで、比較的に音が漏れない部屋を選んだはずだ。

この話は――――絶対に聞かれてはいけない。


「装備と資金、情報はある程度集まったしな・・・本格的に勇者討伐に向けて作戦をな」


「・・・ついにですか」


ラブは図面を書き終えると、フロワに見せる。


「・・・なんですかこれ?」


「この町の地図だ。誤差はあるかもしれないが、ほとんど合っているはずだ」


「!?」


何も見ずして軽々と地図を作ったラブに対し、フロワは驚きを隠せない。

そもそも――――この町には地図が売っていたりしないのだ。基本的に、地図は貴族の使うものとして扱われており、一般的な市民が持っているはずがない――――つまり、ラブはこの町の地図を自分で作った。としか言いようがないのだ


「ほら、昨日の夜から町を歩き回って情報聞いてたから大体覚えてるんだよ」


何故、どうやって作ったかを考えていると、それを察してラブが答える。

――――この地図がどれだけ合っているかはわからない。だが、それでも簡単に作れるものではないのだ。それも、少し歩き回った程度で――――


「まぁ、別に地図のことはいいだろ?とりあえず――――話を聞いてくれ」


フロワの思考を遮り、ラブは再び話し出す。

真剣な顔をしてこちらを見るラブに対し、フロワも真剣に聞こうと意識を集中させる。

それを確認すると、ラブは作戦を口に出す。本来の目的である『勇者討伐』の作戦を――――


「俺の作戦は――――」


***


奇妙な形をした生物に引っ張られる馬車の上で、その男は悠々とくつろいでいた。

ゴロリと寝相を変えて男は思う――――


――――本当にバカばっかりだ。こんな簡単に言うことを聞いてくれるなんて――――


「柊さん!」

「柊!」

「柊さ~ん♡」


色とりどりな髪色をした美少女たちが男の名前を呼び、上から顔を覗き込む。


「なんだい?僕は今魔物を退治した後だからね、疲れているんだよ」


「それはごめんなさ~い♡でも、もうすぐで町よ?」


起き上がり、馬車の窓から顔を出すと、確かに町が近づいてきていた。このまま町に戻れば、勇者様と町の住民たちは騒ぎ立てるだろう――――悪くない。

しかし、柊はそれを顔には出さずあくまでも『自分、また何かやっちゃいました』と、大したことはやっていないかのような素振りをする。それだけで周りはどよめき、勇者柊という存在を崇める。

――――まったくもって気分がいい、神様に与えられた能力だけで、努力もせずして全てが手に入るんだから――――


柊は自分が街に戻った後の光景を妄想し、気分を高揚とさせる。

しかし――――


「ゴォン!」という大きな音とともに、馬車は転倒し、体が外に放り出される。


「なんだ一体!?」


飛ばされた体が少し痛みながらも、ゆっくりと体を起こし原因を確認する。

目の前を見ると――――そこには緑色の髪をした男が立っていた。


「――――やあ勇者様、気分はどうだい?」


「お前は――――あのときの!」


その男は以前、柊が腕相撲大会で戦った相手――――ラブ・シャフマンと名乗った男だった。


「覚えてくれて光栄だよ、勇者柊」


「・・・お前がこんなことをしたのか?」


()()()()()――――確かに馬車のこともそうだが、それは些細な問題でしかない。本当に危険視されるのは、柊が今『氷型のドーム』に閉じ込められていることだ。

こんなものを一瞬にして、それもこれほどのサイズのドームを作られるほどの魔力を持っているということは――――かなりの強敵としか思えない。

周りを確認し、状況を把握する。どうやら閉じ込められたのは柊一人のようだ。


柊は目の前の男――――ラブ・シャフマンに問う。「お前がやったのか」と―――――


「あぁ、そうだ」


ラブは自分がやったと、毅然とした態度でそういうと柊の前に紙を出す。


――――あれは・・・術式!?


術式の書かれた紙の前で氷が生成され、容赦なく柊に向かって発射される。


「くっ!」


柊は腕を地に付け、自分の目の前に土で出来た壁を作り出す。

氷はその壁に激突し、粉々に砕け散る。


「へぇ、それが術式なしで発動できる魔法か」


「なんのつもりだ!」


「なんのつもりだなんて、言わなくても分かるだろ?」


ラブはそう言うと、再び術式を取り出して柊に向けて氷を飛ばす。


――――相手に話す余裕を与えるな。考えさせる時間を作るな。

頭でそう考えながら、次に使う術式の準備をする。


柊は飛ばされた氷に対し、手のひらから火の玉を出して応戦すると、氷でできた壁に向かってもう一つ火の玉を飛ばす。

飛ばされた火の玉は氷の壁にぶつかるも、白い煙を出すだけでビクともしない。


――――柊、お前のやりたいことは手に取るようにわかる――――


そもそも、柊が魔物を無償で退治したりする理由――――それは、自己を認めてもらうためだ。

自分を評価してほしい、自分を見てほしい、称賛してほしい、だからこそ世のため人のためと行動するのだ。ラブが腕相撲大会を開いたときに邪魔をしたのもそれが理由だろう。

自分以外のことで盛り上がるのが許せない。自分を抜きにして騒がれるのが気に食わない。

だから大会に乗り込み、ラブを見せしめにしたのだろう。


――――なら、今柊がやりたいことは明らかだ。

たとえ目の前にいる者を倒したところで、それを評価する者がいなければ意味がない。

自分を称賛する者がいなければ意味がない。だから壁を壊して外に出ようとしたのだろう。


「無駄だよ柊、お前はここで俺を倒さなければいけない」


「――――!」


まだ完全には状況を理解していない柊だったが、そのラブの言葉に自分が抜け出せないことは理解したようで――――

再び柊はこちらに意識を向け、明らかな敵対の顔を見せる。


――――さあ、ゲーム開始(スタート)と行こうか――――

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